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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act32遠のく希望Part4

連れ去られたリン。

策謀する闇の者、クワイガン。

追い求める者達は彼の地を想うのだった。

「どうして・・・どうして停められなかったの!?」


涙を零すマジカが何度目かの言葉を吐いた。


「すみません、マジカさん・・・。」


頭を垂れて、リーンが謝った。



「それにしても・・・リーンの言った通りなら。」


ユーリがマジカの肩に手を置いて、


「あの娘は・・・クワイガンの手によって・・・。」


リーンの報告を確かめる。


「闇へ堕とされてしまったというのか。」


カスターが机に手を置いてうな垂れた。


「ああ・・・なんて事なのミサトさん。あなたが付いていながら。」


マジカが一層泣きじゃくる。


「・・・闇の力を侮ってはいけません。」


机の上に手を置いたミハルが教える。


「どれだけ強い魔法力を備えている者だとしても、

 闇の世界へ引き摺り込まれてしまったら。

 堕とされてしまいます。それが天使であろうとも。」


机の上に目を落としたまま、ミハルが言った。


「天使でも?」


マジカがミハルを見て訊いた。


「そう・・・喩え天の使徒であろうと。

 でもその闇の世界に魔法使いを引き込める者は、相当に高位の悪魔だけ。」


ミハルが目を落とす机の上には、大きな地図が載っていた。

そこへピョンとグランが乗りかかって、


「そう、ミハルの言った通り。

 魂を闇の世界へ連れ込めるのは高位の魔族。

 オレみたいな魔獣なんかじゃない。」


グランはミハルを見上げて頷いた。


「闇の世界の王・・・魔王だけなの。」


顔を挙げたミハルが皆に告げる。

リンは魔王によっておとしめられたのだと。



________


ーくっくっくっ。面白い・・・何と面白い事か。

 人間にしておくのは実に惜しい。-


暗闇の中で何者かが蠢く。


ー北の魔王ベルゼブブが消滅した今、余の復活を目論む者が人間だとはなぁ。

 この人間界を闇で覆わんと欲する者が・・・人間如きだとはなぁ。

    実に面白い話だ。-


闇の中で蠢く者が嘲笑する。


あと・・・何日待てば良い?

 後・・・何千の命を余に与えてくれる?

 待ちどうしいぞ・・・人間クワイガン・・・いや、最早人ではなかったか。

  魔人クワイガン・・・はーっはっはっはっ。-


闇で蠢く者は嘲り笑い、時を待っていた・・・。




______________




フェアリアから南方に2000キロ。


そこは熱砂の広がる広大なる砂漠地帯。

その砂漠の中にポツンと緑の林があった。


人の言う<オアシス>と、言った所か。


そこには人が住み、町が出来ていた。

緑に囲まれたこの街は、砂漠の中で生きる者に、

水と食料を与えてくれる恵みの地となっていた・・・。


その筈であった。

だが。


「早く逃げよう。

 この街にもきっと奴等は襲い掛かってくるぞ!」

「そうだ。

 隣町のオアシスも、襲われたんだ。きっとこの街にも来るに違いない。」


街の中から人々は逃げ出そうと、喧騒けんそう坩堝るつぼと化していた。

恐怖に駆られた人々は恐慌状態に陥り、荷物を持って街からの脱出を計っている。


「隣のオアシスが襲われ、街の者は皆殺しにあったそうだ。」

「どんな悪漢共なんだ。街の者って言っても、数百人は居ただろうに。」


街の人々はデマも真実もゴッチャになって話している。


「隣町が襲われて3日経つ。

 来るとしたら今日辺りが危ないぞ!」

「急げ!急げ!逃げ出すんだ!」


人々は荷物を馬車に載せ、街から出て行く。


   <ドドドドッドドドッドッド>


遠雷の様な響きが砂漠に流れる。


   <ドッグワーンッ>


砲撃音が轟く。


   <ガガァンッ>


着弾音と炎。

そして爆煙が靡く。


街の内外は一瞬の内に、阿鼻叫喚の中へ突き落とされる。

悲鳴を挙げる者、苦痛に呻く者。

そのどれもが命を奪われていく。


・・・虐殺。

この世で最も忌み嫌われる言葉が相応しい地獄絵巻。

人々は、その行為に恐怖した。


街から早々に逃げ出した者達は、その光景を固唾を呑んで見守るしかなかった。


「ああ・・・街が・・・残された者達が焼き尽くされていく。」

「おいっ、アレを見ろっ!」


誰かが言った。

街の中へ数十両の車両が入っていくのが伺える。

それは・・・。


「タンクだ。

 噂に聞く、戦車という物か・・・それにあれは。あの旗は?」


一人が指し示す指先が震える。


生き残った者達が見たその旗は。

紫の旗。

そこに描かれてあるのは。


「あれは・・・二人の少女・・・いや、悪魔の女。

   <邪双じゃそうの魔女>の紋章だ!」


オスマンに古から伝わる魔女の伝承。

その伝説に出てくる紋章が、描かれてあったのだ。


挿絵(By みてみん)



__________



「ロッソアの新政府?」


リーンがフォークを止めて聞き返した。


「そう・・・昨日、初めて連絡があったのリーン。」


ユーリが伏せ目がちに教える。


「そっか・・・サハテ中尉達の願いは果されたって訳ね。」


リーンが最期に出会ったロッソアの戦車兵を思い出す。


「で・・・その新政府から何を知らせて来たの?

 まさか終戦を破棄するとか。」


思い出を振り返りながら、懸念を吐く。


「まさか・・・違うわよ。

 条約の締結を打診してきたの・・・不戦条約の・・・ね。」


ユーリが首を振ってリーンの考えを否定した。


「ほう・・・それはそれは。

 目出度いじゃないですか。

 その政府が信用出来るのならば・・・ね。」


ロッソアとの不戦条約を何度も破られているフェアリアの人間には、

その条約は価値のあるものとは思えなかった。

それはリーンとて同じ。


「で?

 ユーリ姉様が俯いてる事とは、そんな話ではないでしょ。」


伏せ目がちに話すユーリに、リーンが痛い処をついた。


「リーンには隠したって無駄ね。

 そう・・・私はあなたと、あなたの愛する者に言わなくてはいけない。

  ・・・・ロッソアからの解答を・・・。」


「・・・。

 それはミハルのご両親のことでしょう、ユーリ姉様。」


再びナイフとフォークを執り食事を摂ると、

何事も無かったかの様に話した。


「えっ?リーン・・・あなた、知っていたの?」


ビックリした様にユーリが顔をあげる。


大方おおかた、そんな事だと思っていたから。

 邪な者がリンを捕えて連れ去った時に解っていたから。」


リーンがナプキンで口元を拭ってから、


「ミハルは行くって言うでしょうね。

  

     <約束の地>


     と、やらへ・・・ね。」


平然と言ってのけた。


挿絵(By みてみん)


表情を変えないリーンに、ユーリは目を丸く見開いて絶句した。

彼の地へと向う派遣部隊が編成された。


その部隊の分隊長に任命されたミハルが見上げていた。

フェアリアの山並みを・・・。

まるで見納めの様に。


次回 さよならは言わない・・・また逢う日まで Part1

君は旅立つのか、愛する人に別れを告げずに・・・。

次Act33をもちまして「フェアリア」の最終話となります。



2019年12月17日

次回は追加ストーリーです

ミハルとマモル。

2人に面会者が?!

「魔鋼猟兵 ルビナス」とのコラボ・・・

彼らが齎すものとは?

3話追加します!

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