魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act31闇の存在Part5
<カツン カツン>
石の廊下を靴音が響き渡る。
「誰の気配も感じられない。」
リーンが小声で呟いた。
「この先に居るのかしら。」
「しっ、静かに。・・・リーン。」
後を振り返ったミハルが指を唇に当てて注意を促す。
「あの扉の中に何かが潜んでいる。人ではない何かが。」
振り返ったミハルの瞳は紅く輝いていた。
聖教会・・・それはフェアリアを護る者達の秘密結社を示している筈だった。
だが今、その主人たる司教の元へ2人は訪れた。
司教であり聖教会の主人。
そして闇の者クワイガンの元へと。
教会の地下深く降りた先にある扉の前で、2人は気配を窺った。
ー良く来たフェアリアの魔法使いよ。さあ、入るがいい。-
扉の中から何者かの声が招いた。
「知られていたのか。・・・どうするミハル?」
リーンが先に立つミハルに相談する。
「いい、リーン。絶対に私の後から離れないで。」
意を決したミハルがリーンを護る様に手で制した。
「うん・・・ミハル。相当ヤバイ相手なの?」
ミハルはリーンに首を振って、
「解らない。けど、油断は出来ないから。」
右手の魔法石が紅から蒼へと変わるミハルに、
「うん・・・そうね。」
リーンも首に着けていた魔法石を手に持ち替えて構える。
魔法剣に変える為に。
「じゃあ、行くよリーン。」
「うん。行こうミハル。」
2人は扉の中へと入る。
だが。そこに待ち受けていた者は・・・。
ー来たな、聖巫女と魔女よ。
我が契約主の命により、お前達を滅ぼしてやろう。-
壁に掛かった逆十字架から、声が流れ出た。
「誰なの・・・名を名乗りなさいよ。」
ミハルの後から魔法石を手にしたリーンが訊く。
ー我の名を聴いてなんとする?
滅びる者に名乗る必要などあるまい。-
「・・・クワイガン司教は何処に居るの?」
俯くミハルが訊く。
ー契約主は此処には居ない。此処に居るのはそなた等と私だけだ。-
逆十字架に宿る者が教える。
「・・・司教は・・・聖教会の主、クワイガンは何処へ行った。」
俯いたまま、ミハルが尋問する。
ーそれを聴いて何とする・・・どうせこれから滅びるというのに。-
逆十字架から闇のオーラが吹き出す。
「ミハル・・・奴がアンネの言っていた悪魔のようね。」
リーンが魔法石に力を加える。
「聖剣よ、出でよ!」
魔法石が輝きを放ち、伝説の聖剣へと変わる。
古の王女リインの剣に。
ーほほう。古の聖剣を手にする者か。少しは出来る様だな。-
十字架に宿る悪魔がリーンに言った。
「クワイガンは今何処に向っているの?教えなさい・・・闇の者よ。」
ミハルが右手を握り締める。
ー何故契約主を求めるのだ、巫女よ。
お前は何を目的としているのだ。-
闇の者は徐々に吹き出すオーラを形作っていく。
まるで鞭の様に、槍の様に。
「闇の者に訊く。お前の契約主たる司教、クワイガンに用がある。
私の目的はクワイガンを捕えて私の両親の居場所を尋ねる事。
さあ!クワイガンは何処に居るのっ、教えなさい!」
垂れた前髪の間から、金色の瞳が闇を睨んだ。
_______________
「リン!?どうしたの?」
マジカが突然走り出したリンを停める。
「マジカ!邪な気が逃げていく・・・いや。
離れていくんだ・・・追わなきゃ!」
教会を取り囲んだ見物人の中へ駆け込むリンに、
「ちょっとリンっ、りんってば!」
そう呼び止めるが、リンは人ごみの中にかき消されてしまった。
「どうしよう・・・ユーリに知らせなきゃ。
黙って出て来てしまった事を怒られるけど・・・そんな事気にしてはいられないわ。」
マジカは近くに居る親衛隊兵士に駆け寄った。
___________
<バシュッ>
逆十字架から放たれた黒い霧がミハルの前でかき消された。
ーほう、闇の力を防げるのか、巫女よ。-
闇の者がかき消された黒い霧を再び作る。
「闇の者に訊く。クワイガンは何処へ向かった?」
ゆっくりと右手を翳してゆくミハルの口から闇の者へ問い掛けられる。
ーどうしても知りたければ私を倒してみる事だな。
契約主が何処に向ったのか知りたければ、
この逆十字架に示された文字を読むがいい。
私を倒せばその場所が解るだろう。-
逆十字架から闇の者が言い放った。
「そう・・・じゃあ、倒してやるわ!」
リーンが剣を構えて言い返す。
「是非も無し・・・か。」
右手を掲げたミハルが呟く。
ーさあ、かかって来るがよい<双璧の魔女>よ。
此処がお前達の死に場所だ!-
闇の者が叫ぶと共に、黒い霧を放つ。
「言いたい事はそれだけ?
では、教えて貰うから・・・あなたの名とクワイガンが向った場所を!」
ミハルの足元から、金色の粒が舞い上がる。
ーなっ!?何だと?-
それは光の粒。
天の使徒が持つ力の現れ。
<ブ ワ ァ ッ>
その粒が、ミハルを取り囲む様に舞い狂う。
「闇の者よ、これが今の私。
<光と闇を抱く者>となった真の巫女。
真聖巫女ミハルの姿だ!」
ミハルが翳した手で力を求める。
「光を抱け!シャイン トゥ エンバランス!」
握った手を開けて術を発動させた。
光が舞う、その金色の光の中でミハルの姿は変わってゆく。
金色の瞳を輝かせた蒼髪の魔法少女は、天の使徒の姿へと、
真聖巫女の姿へと変わった。
<シュオオオオォッ>
闇の前に現れたのは、金色の天使。
ー貴様が・・・天使だと?聖巫女より高位の神の使徒だというのか!?-
闇の者は眩い光に驚き、慄く。
「だとしたらどうなの?邪なる闇の者。ミハルの前に平伏たら?」
勝ち誇るリーンが剣を突きつける。
ーあーっはっはっはっ、成程な。
契約主が私を此処に残した理由が解った。-
闇の者がミハルを睨んで言い放ち、
ー天使を喰えるとは思いもよらなかったぞ。
さあ!かかって来るがいい真聖巫女・・・いや、神の使徒ミハルよ!-
闇の者が誘う。
だが・・・。
「リーン・・・。少し退がっていてくれる?この悪魔を倒すから。」
金色の瞳をリーンに向けてお願いするミハルの顔は、微笑を浮かべていた。
「ミハル・・・判ったわ。」
リーンが数歩退がったのを見たミハルが、
<シュンッ>
右手を一閃し、結界を張った。
「! ミハルっ!?」
驚くリーンが、呼び止めようとした時。
「少し待っててね、リーン。」
金色の瞳に優しさと力強さを感じたリーンは、只頷くしかなかった。
さば・改「どーも重い話だな。気分が滅入るわ・・・おい、ミハルたん出番だ!」
ミハル 「はいはーいっ!」
さば・改「うむ。これでよし。」
地下の部屋で待ち受けていたのは、闇の者。
実体を逆十字架から現したのは?
闘えミハル!<光と闇を抱く娘>よ!
次回 闇の存在 Part6
君は姿を現した闇の姿に驚愕する。唯一人立ち向かう友を目にして・・・。





夏休みのオトモ企画 検索ページ