魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act30復活Part11
「では、ミハル・・・いいわね。」
ユーリが促す。
「はい、判りました・・・離れていて下さい。」
ミハルが蒼髪を靡かせ右手を掲げる。
「では・・・やりますよ、マジカさん。」
目の前で眠るマジカを見て、ミハルが伝える。
「強く念じていて下さい。決して諦めてはいけませんよ。
その瞬間を捉えて下さい。
きっと成功出来ると信じて下さい。」
ブレスレットが紅く輝く。
「私に出来たのですから。
きっとマジカさんも出来ますよ。・・・いいですね。」
ミハルが眠るマジカの肉体へ向けて教えてから。
「それではマジカさん。
瞬間、苦痛を伴いますが・・・絶対戻ると念じて下さい。」
6輪装甲車へ向って声をかけた。
「うん・・・絶対諦めないよ、ミハル。」
決意を込めたマジカの声が返ってきた。
「はい・・・ではユーリ様、皆さん。
危険ですから退避していて下さい。
これから放つのは闇の魔王が持つ力。
私の中に在る闇の力を解放します。」
翳した手を6輪装甲車に向けてミハルが言った。
固唾を呑んで見守るユーリ達が離れると、
「それじゃあ、爆破まで・・・5・4・3・・・。」
ミハルがカウントダウンを開始した。
6輪装甲車のエンジン部に爆薬を仕掛け、その爆破スイッチを持つリンの指に力が篭もる。
「2・1・・・・ゼロ!」
リンの指がスイッチを押す。
願いと共に・・・。
<パ ア ッ>
紅い輝きがミハルの手から放たれる。
<バッガアアンッ>
装甲車のエンジンカバーが捲れあがり、炎が吹き上がる。
・・・。
誰もがその光景を黙って見詰め続ける。
「マジカ・・・。」
ユーリが呟く。
大切な友の名を、自分を護って命を失いかけた恩人の名を。
ー闇の中・・・。そう、この暗闇を覚えている・・・。-
一人の少女が呟く。
いや、呟くというより魂の思い出に想いを馳せている。
ーユーリを守る為に飛び出し、剣で斬られたんだ。
その後の事は判らない。只、この暗闇の中で私は彷徨った・・・そして。-
目覚めた時に最初に出会った人が。
ーそう・・・。リンが私を目覚めさせてくれた。
6輪装甲車に魂を同化させられた私に気付かせてくれたんだ。-
<「不思議だね、私もこの身体の中に居るんだよ。
この身体本来の魂とは違うリンカーベル・・・そして古来の魔女が。
この肉体には3人共通のもの・・・ランネが言っていたリンと私。
そして魔女の魂が一緒になっているんだって。
どうやって元に戻れるかは解らない・・・それを調べたいんだ。」>
ーリンが言った。私達は同じ様な者だと。
自らの意では無い出来事の訳を知り、元へ戻る方法を調べたいと・・・。-
そして・・・今。
「マジカさん、此方です。
ここがあなたの居るべき処。
あなたが本来居なければならない場所なのですよ。」
優しい声が聴こえた。
ー居るべき場所?それはどこに在るの?-
その声に訊く。
その優しい声は招く。
ーあ・・・その光は?-
声の招く先には、小さな光が輝いている。
「さあ!還るのです。
戒めから解き放たれて戻るのです。あなたの居るべき処へと。」
マジカは声に誘われるがまま光へ向う。
ーあ・・・温かい。温かさが解る。人の温もりが身体に伝わってくる。-
マジカは小さな光と同化する。
光の元へと還りつく。
「ミハル!?」
リーンが倒れたミハルに駆け寄った。
「おいっミハル!?しっかりしろ。」
「姉さん!?」
口々に気を失ったミハルに声をかける。
「ん・・・あ?リーン・・・マモル・・・。」
薄く開けた瞳には涙が浮かんでいた。
その瞳で周りを見渡すミハルに、
「大丈夫?ミハル・・・。」
リーンが抱き起こすと、
「みんな・・・マジカさんは?」
ミハルは心配そうにリーンを見上げて訊いた。
その答えにリーンは微笑んですすり泣く声の方へ顔を向けて教えた。
そこには起き上がったマジカを抱締めて泣くユーリの姿と、
二人を見詰めて涙を零すリンの姿があった。
「やったねミハル。
これはミハルにしか出来ない奇跡・・・いいえ。
<光と闇を抱く娘>にしか出来ない術なんだね。」
リーンと共に3人を見詰めるミハルが嬉しそうに頷いた。
「ミハル・・・ありがとう。」
ユーリに支えられたマジカが笑う。
「いいえ。良く耐えられましたねマジカさん。」
「うん・・・でもさあ。知っているなら教えてくれても良かったんじゃない?」
笑いながら、訴えてくるマジカの姿は・・・。
「うっ!?・・・つ、つい。忘れてました、完全に。」
マジカの姿は魂の帰還と共に成長し、ユーリと同い年の姿になっていた。
「あっと。直ぐに服を持ってくるから・・・ね。」
慰める様にユーリがマジカに言った。
「これでマジカの願いは果されたんだね。」
少し寂しそうなリンは、マジカを祝ったが、
「とうとう私だけになっちゃったか。」
呟いて下を向いてしまった。
「リン・・・。」
ユーリがそんな魔法少女に声をかける。
「なーに、落ち込んでいるんだよリン。
片方の願いが叶ったら、もう片方の願いも叶えないと不公平でしょ。」
ユーリに支えられたマジカが言い切った。
「えっ?でもマジカはもう・・・。」
リンが魔法力を失ったマジカに断わりを入れるが・・・。
「そう、確かに私はもう魔法戦車では無くなったわ。
けど、あなたの友を辞めたなんて言ってないわよ。」
マジカが笑ってリンに教える。
友はどんなに姿は変わろうが、友だと。
「マジカ・・・。」
友の名を呼んだリンにユーリが言う。
「そうね、マジカは元へ戻ったけど。
あなたはまだ元へ戻っていない。
その方法を見つける事を求め続けると言うのなら・・・。」
そこまで言ったユーリが、リーンとミハルに視線を向ける。
「えっ!?何?姉様っ、その眼は?」
「えっ!?ま・・・まさか。リンちゃんを我々に?」
リーンが驚く。ミハルが戸惑う。
「あらっ?まだ何も言ってませんけど。リーン・・・お願いね。」
・・・・・・・・・・。
「えええっ!?リンを私の隊にって?
もう戦争も終わったんだから隊も糸瓜もないんだから。」
思いっきり、リーンが断わった。
「あれ?リーン。誰が隊に入れろって言ったのよ。
私が言いたいのは、リーンの部下としてリンの面倒を見て欲しいって事なのよ。」
「えっ!?部下にって・・・同じじゃないの!ユーリ姉様っ!」
どん引きするリーンにユーリが命じる。
「まあ、リーン。
私の言う事を聴いてくれないの。
折角平和になるというのに、こんな危ない娘を野放しにしていたら、
魔法で平和が崩れてしまうかもしれないのに。
お目付け役をお願いしただけなのに・・・シクシク。」
思いっきり嘘泣きするユーリに、リーンが肩を窄めて。
「はいはい解りましたよ。監視役ですね・・・ユーリ姉様には敵わないわ。」
リンを部下として迎える事を承知してしまった。
「そう言う事でリン。
これからは次皇女リーンの直轄の部下として動く事を命じます。宜しいですね。」
ユーリがリーンに断わりも無くリンに命じた。
「はい。リーン殿下、以降ヨロシクです。」
リンは早速リーンに挨拶すると、
「と、言う事らしいので。ミハルもヨロシク!」
・・・・・。
<ダラ ダラ ダラ>
吹き出す冷や汗。
「あああっ、リーン。なっ何とかしてっ!」
腕を掴まれたミハルが更にリーンに縋り付く。
「ミハル・・・やっぱりあなたって・・・損な娘ね。」
「・・・。いーやーだぁーっ!!」
どうやらミハルはその事実に気付いた。
マジカを転移させられた事に喜ぶユーリに尋ねるのだった・・・。
次回 闇の存在
君は両親の術が何を意味しているのかを解ってしまった・・・





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