魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act30復活 Part3
「っくしょんっ。」
黒髪が靡く。
「あら。風邪でもひいたのかな、ミハル。」
ユーリがくしゃみをしたミハルに声をかける。
「い、いいえぇ。とんでもないです。」
どぎまぎしてミハルが微笑むユーリに答えると、
「良く似合ってるわよミハル。」
微笑んだままウィンクされたミハルが、顔を紅くして。
「そ・・・そうでしょうか。分不相応って想うのですが。」
照れたミハルが、自分の姿を見直す。
その姿をくすっと笑って見詰めるユーリに、
「あの・・・やはり変ですよね。」
剣帯を持ちながらミハルが聴き直す。
首を振って<そんな事無いわ>よ意思表示したユーリに、侍女が寄って伝えた。
「次皇女殿下、昇殿されます。」
近衛兵を両脇に控えさせ、カーペットの上をリーンが侍女を伴ってやって来る。
<おおおっ>
誰彼とも無く、口から出る感嘆の呟き。
純白のドレスを着て、現れたのはリーン。
長い金髪を束ねてティアラを着け、光を浴びて進む姿は麗しく美しい。
ーそう、まるで女神の様・・・。-
近寄るリーンを観る者は、一様に想っただろう。
ミハルの瞳にはその姿がどこか懐かしく、前に感じた事があるのを想い出した。
ーそう光る髪、涼しげな碧い瞳。
私が初めてリーンに会った時と同じ印象。
あの時リーンに逢って想ったのは・・・。-
「女神様なのかな・・・リーンって。」
思わず思い出し、同じ言葉を呟いてしまうミハルの前までリーンが歩を進めて来た時。
「騎士様。あなたの称号は?
何と呼ばれているのです。」
リーンがミハルに向き声をかけた。
「え? えっと?」
突然の事で、動揺してしまったミハルは、
言葉に困り玉座に座っているユーリに救いを求める。
そのユーリはリーンを見てから。
「次皇女リーン姫の下問です。
そなたはどう呼ばれているのですか。
何の力を持つ魔鋼騎士なのですか。」
重々しい質問とは裏腹に、リーンとミハルに軽くウィンクして合図を送った。
<すうっ>
軽く息を吸ったミハルの瞳が見開かれて。
「次皇女リーン姫。
私は<光と闇を抱く娘>、そして<光を継ぎし者>。
魔法使いにして天の使徒。
リーン姫を護り、このフェアリアを護る魔鋼騎士。
人は私の事をこう呼んでいます<双璧の魔女>と。」
言い放つと共に、右手を天に翳し力を込める。
<スウッ>
瞳は蒼に、髪は碧く風も無いのに靡く。
<おおおおお おっ>
リーンを眼にし驚きの声をあげた者達が、今度はミハルに驚嘆の声をあげる。
周りに居る者は、ミハルの言葉と姿に驚き呟き合う。
「<双璧の魔女>。あの娘が?」
「噂に聞く、魔鋼騎士ミハル。いや、魔女ミハル。」
<ザワザワ>
人々は呟き合い、皇女と魔鋼騎士を見詰める。
人々がざわめく中・・・リーンがミハルに近寄り、
誰にも判らない様にミハルにウィンクして合図を送った。
ーあ・・・。そっか。-
何かを思い出した様に、ミハルはリーンに片膝を着いて畏まった。
<スッ>
リーンの左手がミハルに伸びる。
純白の絹に包まれた手がミハルへと差し出されて、
「そなた<双璧の魔女>の称号を名乗る者よ。
このリーンに忠義を尽くす魔法使いよ。
その名を明かし、私とこの国を護り続ける事を証なさい。」
澱みなく命じる、リーンを見てミハルは想った。
ー巧いなぁリーンって。私も巧く言わないと台無しになっちゃうな。-
片膝を着いて畏まっているミハルが差し出された手を取って。
「我が名は魔鋼騎士、いいえ。<双璧の魔女>ミハル。
私の力はリーン皇女の為、この国を護る為ににあります。」
<おおおおおおおおおっ>
並み居る高官達の反応を耳にして、ミハルは差し出された手に、そっと唇を着ける。
「私の為、この国の為に尽くすと言う<双璧の魔女>ミハル。
古からの力を継ぐのならば、このフェアリアに臣下の誓いを示しなさい。」
リーンから手を離したミハルが立ち上がり、中央のカーペットまで進み出る。
「さあ、巧くやってよ、ミハル。」
リーンは辺りに聞えない様な小声でミハルに呟く。
中央カーペットに進み出たミハルがユーリとリーンにそっと頷くと、剣帯に手を伸ばす。
「我が称号は皇女の為に。
我が忠誠はフェアリアの為に!」
剣の柄を握った右手のブレスレットが、碧き輝きを放つ。
「抜かれよ騎士。誓えよ古の魔法使い。」
ユーリがミハルを促した。
「誓いましょう皇女様。我が称号と共に!」
<サーッ>
剣を抜き放ち、胸の前で構え、最敬礼をする。
<おおおおおっ!>
辺りから歓声が起きる。
辺りの反応を確かめたユーリがゆっくりと立ち上がり、
「<双璧の魔女>よ、そなたの誓いを確かめたい。
我等フェアリアの為に尽くすと言う、その力を・・・今、此処で。」
ユーリが手を指し伸ばす。
ーはあ。ここまでは何とか失敗せずに済んだのかな。-
緊張のあまり、冷や汗を掻くミハルがチラッとリーンを見ると、
その瞳が言っている様な気がした。
ーこれで最後だから、決めてよミハル・・・ファイト。-
きらきらした瞳でリーンが応援してくれているみたいに見えた。
ーうん・・ここでビシッと決めなくちゃ。
よーしっ、最後の大役だ。ガンバルぞぉ。-
「我が称号<双璧の魔女>の名に賭けて誓いましょう。
この力をフェアリアの為に使う事を!」
右手に力を込めて剣を天に掲げて、術を放つ。
ブレスレットが碧く輝き、光を放った。
< ビ シャ ア ッ >
碧き光が剣先から放たれ・・・。
< ガ ゴ オ オ ォォ ン ッ >
「あ・・・。」
< バラ バラ バラ >
「・・・チカラ・・・加減・・・間違えた。」
<どよ どよ どよ>
「・・・。ど、ど、どうしよぉ。」
天井に穴を開けて固まったミハルが剣を天に掲げたまま、ユーリとリーンをチラと見る。
ーひぃっ!リーンの眼が怒ってる。これは完全にオシオキされるぅ。-
涙目になって困ったミハルに救いの手が。
「流石、古の力を継ぐ者。
その力は天に届く程なのですね。
その力を我がフェアリアの為に使うのならば闘うより平和を齎す為に使いなさい。
戦いを終える為に使うのです。」
ユーリが咄嗟に機転を利かして命じ、差し出した手を下へ向けた。
ーありがとーうユーリ様、助かりましたぁ。
って、下に手をされている・・・なるほど。-
気付いたミハルが剣を後に廻して片膝を着いて畏まり、
「御意。皇女の命のままに。」
何事も無かったかの様に、臣下の礼を終えた。
ーリーン・・・怒らないでよぉ。失敗したのは悪かったけどぉ。-
チラッとリーンを見たら、ため息を吐く姿が見えた。
「皆の者に告げる。皇王の名において、皇女ユーリとリーンが命じます。
<双璧の魔女>と共に鉾を収めるのです。
ロッソアとの戦争を終える事を、此処に宣言します。」
ユーリが並み居る者全てに聴こえる様に声を張り上げて宣旨を下す。
「皇女リーンの命を伝える。
我が民よ、戦を止め平和を取り戻す為に尽くすのです。
これは我が国の勤め、我が民の責務と心得なさい。」
リーンが皇女の宣旨を命じる。
ーここだったな・・・。-
ミハルが剣を振り翳し、二人の皇女に捧げる。
「フェアリアの為に。
平和を求める我が主君の為に!」
ブレスレットから碧き輝きを放ち、奉訓を捧げる。
<おおおおおっ>
どよめく歓声、平伏す諸侯。
居並ぶ者は、二人の下に終戦の命に従った。
終戦を告げた皇女の声は、遍くフェアリア全土に中継される。
音声はラジオを通じて、無線を通じて流される
号外は写真付で、これを報じた。
漸く戦いが本当の終わりを迎える・・・だろうか?





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