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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act29狂騒の都 Part7

挿絵(By みてみん)


ミハルは服を整えて立ち上がる。

やっと<ペットなミハル>から、解放されて・・・。

「あはは・・・・。突然だったから驚いちゃったよリーン。」


ペットなミハルから解放されたミハルが、上着の袖を通しながら話す。

その顔はリーンを見詰めて微笑んでいた。


「う・・・うん、ごめんねミハル。心配を掛けてたみたいで。」


リーンがベットに腰を掛けたまま答えた。


「そうだよリーン、ずっと何か考え込んでいるみたいで、何も話してくれないんだから。

 でも、皇王様がこんな事になっていたなんて知らなかった・・・ね。」


リーンの横に座って、そっと手を握ったミハルが、


「ねぇリーン。さっき、ある人から聞いたんだけど。

 皇王様に邪な者が術を掛けた惧れがあると言ってたの。

 私に調べさせて欲しいんだ、皇王様の身に何があるのか・・・あったのかを。」


リーンに添えた手に光るブレスレットを見せて教える。

自分の力で調べたいと。


「そう・・・ね。ミハルを巻き込みたくはなかったけど。

 もう、ミハルの力に縋る他、ないのかも知れない。」


リーンの瞳がミハル・・・真聖巫女の力を求めた。


「そうだよリーン。

 私はリーンの為なら・・・この国の為なら何でもするって、誓ったんだよ。

 どんな事だってするって言ったでしょ。」


にこりと笑いかけるミハル。


「ありがとうミハル。

 初めからミハルに相談しておけば良かった・・・ごめんね。」


謝るリーンに首を振って、


「リーンが私を想ってくれているのは解っていたよ。

 でも、話して欲しかっただけだから。

 もう内緒は無しで・・・ね。」

「う、うん。解ったわミハル。」


添えられた手を握り返したリーンが、大きく頷いた。


「じゃあ早速、皇王様の元へ。」


ミハルが立ち上がる・・・が。


「あ・・・あれ?」


足元が定まらず、ふらっと立眩みがしたミハルをリーンがさっと抱き止めて、


「どうしたのミハル?体の調子でも悪いの?」


慌ててミハルの身を案じると。


「あ・・・いやぁ。あの・・・その・・・。」


<グゥゥッ>


「・・・な る ほ ど・・・。」


<  赤  >


真っ赤に顔を染めてミハルがうずくまり、


「お は ず か し い・・・です。」


リーンにお腹が減り過ぎて立眩みを起こしてしまった事を詫びた。



____________________



「うん。

 良く似合ってるわよ、ミハル。」


リーンが頷く。


「で・・・・何故?」


ミハルが上目使いに、リーンに訊く。


侍女達に下る様に手で合図を送ってからリーンが、ミハルをマジマジと見る。


「うん。これなら何処に出しても貴族の娘に見える。

   ・・・陸軍少尉とは見えないわ。」


うんうんと頷くリーンに、


「で。 どうして?」


ドレスに着替えさせられたミハルが訳を尋ねる。


「それはねミハル。

 いちいち衛兵に誰何すいかされない為と・・・

 皇王様の傍に昇るのに少尉が近寄るなんて・・・

 誰かが口を滑らせたら大問題になってしまうでしょ。」


リーンがミハルの姿をデレながら見詰める。


「それに・・・私が見たかったから・・・。」


ミハルに聴かれない程の小声で呟いた。


「えっ?聞えなかったよリーン。今、なんて?」

「い、いいえ何も。 あははははっ・・・。」


笑って誤魔化すリーンを見て、


「はああ。どうしてドレスって動きにくいの。

 これでは咄嗟の時に、動けないよぉ。」


ブツブツ文句を言うミハルに。


「あはは、ドレスだからね。動き回る様には出来ていないもの。」


長い裾を気にしているミハルに、笑って宥めてから。


「じゃあミハル。

 お皇王とう様の元へ行きましょうか。

 ユーリ姉様も待っていてくれているから。」

「うん・・・いえ。はい、皇女様。」


軍服のまま肩章を付けたリーンに手を曳かれたミハルが、二人で皇王の寝室へ向う。


二人が廊下を歩いていると、宮殿の外から声が聞えてきた。


「何だろう?」


二人が遠く宮殿の外を見るとそこには。


「あ・・・あんなに多くの人々が?」

「何を叫んでいるのだろう?」


群がる人々が口々に叫んでいる。

その叫びが、うねりの様に聞えてくる。


吾等われらに勝利を!停戦反対!>


群衆が叫んでいるのは、徹底抗戦を求める叫び。

終戦に反対している継戦派の人々の声だった。


「何を言っているの、あの人達は。

 戦争を続けて、何が得られるというの?」


驚くミハルが、信じられないと呟いた。


「ああ云う者達が居るのは解っていたけど・・・

 あれ程の人達が継戦を求めてくるとは想ってもいなかったわ。」


リーンもミハルと同様に、驚きを隠せなかった。


「実際に戦った事がない人達は、ヘスラー達が行っていたプロパガンダに毒されているの。

 ・・・・そう、想いたい。

 真実の戦場を知らない人達が叫んでいるのだと考えたい・・・そうだよね、ミハル。」


リーンが暗い表情でミハルに答えた。


「うん。あの人達は戦争の悲劇を、何も解っていない。

 大切な人が死んでいく恐怖を知らないんだ。

 だから戦争を続けろ・・・なんて馬鹿な事を言うんだよ。」


二人が耳に入って来る継戦を求める叫びに眉をしかめた。


二人の魔法少女は、群がる人々に心をいためる。

漸く勝ち取った和平の道に反対を唱え、まだ闘いを欲している人々が居ると知って。


そして判ったのだ。

戦争を始めるのも難しいが、終えるのはもっと難しいという事を。


戦争の闇は、まだ力を持っているというのか。

一度囚われた者を、そう容易く手放さないというのか。


二人の闘いは、未だ終わりを告げてはいないと言うのか・・・。

影が蠢く。

その闇の者は教える、自らの願望を。

自らが仕える者の存在を。


次回 狂騒の都 Part8

君は妖しげな影に向かい合う。その邪なる者の影と・・・。

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