魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act29狂騒の都 Part5
リーンが戻って来てくれるのを待つミハルの前に妖しげな気配が。
「リーン・・・遅いなぁ。」
階段下でポツンと待っているミハルが、手持ちぶたさで立ち尽くしている。
「でも、しょうがないな。
少尉の私が呼ばれもしないのに階上へ・・・殿上へ昇る訳にもいかないし。
・・・・お腹・・・減った・・・なぁ。」
エンカウンターからバイクで走り詰めに走って来た為。
食事も摂っていなかった事を思い出して、
急に喉が渇き、お腹が減っているのに気付いたミハルが、
ヘタリと階段に座り込んでしまった。
「途中で魔法力を使っちゃったから・・・。
余計にお腹が減っちゃったのかな。倒れてしまいそう・・・。」
そう呟いたミハルが、膝の上に頭を着けて座り込み、リーンが来てくれるのを待っていると。
<フッ>
何かの気配に気付いた。
ーん?
今、確かに魔法力を感じたんだけど・・・おかしいな。誰も居ない・・・。-
頭を伏せたまま横目で気配を探るミハルの目には、誰も居ない階段が見えるだけだった。
ー気の所為・・・じゃない。
確かに誰かが横切った・・・でも、目に写らない。
邪な気でもないし・・・魔法使いに違わない筈だけど。-
右手のブレスレットが危険を知らせていない為に、
それ程の警戒はしなくても善いみたいだが、
その者が何を仕出かすのかが解らないので一応確かめてみようと、ミハルは思った。
頭を伏せたまま、相手の出方を伺う為に、
「あなたは誰なの?」
妖しい気配を持つ魔法使いに、声を掛ける。
「えっ!?」
周りにミハルだけしか居ない階段から驚いた声が返って来る。
「姿を隠して殿上に昇るのは、いけない事とは思わないの?」
まだ頭を伏せたまま、ミハルが咎める。
気配は立ち止まったようだった。
「姿を見せたらどうなの・・・魔法使いさん。」
立ち止まっている気配に向けて警告する。
「あなたも魔法使いなの・・・そう。
気付くなんて、並みの力を持つ者ではないな。名を名乗りなさい。」
気配の中から声がする。
ーやはり姿を隠しているのか。
姿を消せるなんて並みの魔法使いには出来ない・・・
闇の力を持っているのかな・・・-
警戒するミハルはゆっくりと立ち上がって気配の方に向って顔を上げる。
「えっ!?まさか・・・ひぃっ!」
気配の方から恐怖に怯えた声が、ミハルに向けて発せられる。
ー? 私を知っているの?-
恐怖に彩られた声色を感じられた。
「あなたは私を知っているのね。姿を見せたらどうなの。で・・・ないと。」
すっと声のする方に右手を差し出すミハルに、
「あわわっ、待って!待ってください、ミコト様。」
大慌ての声と共に、空間の狭間から姿を現したのは・・・。
「あら・・・ま。アンネさんじゃないの。」
ミハルの前に姿を現したのは。
「はっ、はいいいっ。アンネです。
聖教会の下僕の、アンネですぅ。お許し下さいミコト様。」
完全に怯えて震え上がったアンネが許しを乞う。
「何をそんなに怯えているのよ。訳を話してくれれば考えなくも無いけど。」
右手を差し出したまま、アンネに向かって訊いてみた。
「はいい。言います、言いますから右手をお下げ下さい。お願いします、ぷりーずぅ。」
最早怯え畏れきったアンネが、涙目で許しを乞う。
「それはあなた次第ね。 さあ、訳を話しなさい。」
恫喝するミハル。
涙目で話し出すアンネ。
「わ、私は教祖・・・司教クワイガンの命で、皇王の容態を見に来たのです。
そっ、それだけなのです。」
泡を食って話すアンネに、
「・・・本当の事を言わないと。」
更に右手をアンネに向けて突き出す。
「ひいぃっ。ほっ、本当でしゅう。
容態次第では、次の行動を執ると、仰られていましたからぁ、信じてくだしゃいっ。」
怯えて泣くアンネに、ミハルは右手を降ろした。
「どうやら、本当の様ね。解ったわ・・・。
見てくるだけなら行ってもいいけど。
何か仕出かす様なら、容赦はしないよ。」
警告を与えて、アンネを解放した。
ー本当にアンネから邪な気は発散されてはいない。
皇父様に危害を加えるつもりなら、取り押さえるつもりだったけど。-
右手のブレスレットは、何の危険も知らせてこなかったからミハルはアンネを信じた。
「あ・・・ありがとうございます聖巫女様。
で・・・でわっ!早速・・・。」
逃げ出す様にアンネは姿を消し、階段を登って行く。
「あ・・・そうそう。3分以内でここへ戻って来ないと、オシオキ・・・しちゃうからね。」
<ビックッウッ>
ミハルの脅し文句に、姿を消したアンネが飛び上がって恐れる。
にまぁっと、階段を見上げているミハルに、アンネがびくついて駆け出した。
ーあれだけびくついていたら、ちゃんと戻ってくるだろう・・・な。-
我ながら悪役みたいだと思いつつも、一安心するミハル。
ーそれにしても。
此処へ来た時に感じた闇の気配は、何だったのだろう。アンネではないし・・・。-
「はあっはあっはあっ。戻りました、ミコト様。」
あっと言う間にアンネが戻ってきた。
階段を駆け下りてくるアンネに訊く。
「どうだったの皇王様の容態は?」
「あ・・・はい。おもわしくない様ですね。
ユーリ様もリイン女王も、難しい顔をされておられます。」
答えるアンネも難しい顔でミハルに教えた。
「そっか・・・それでリーンはなかなか戻ってきてくれないのか。」
リーンが戻って来てくれない訳が解ると同時に、一抹の不安が心を過ぎる。
「それでアンネ。あなたはその司教様に様子を教えた後、どうするの?」
「え?どうするって・・・。それはクワイガン様がお考えになる事で。
・・・私には解りません。」
ミハルがアンネに今後の話を訊くが、確かな返事は返してはこない。
「そう。それなら此処へは近付かない方が良いわよ。
闇の者が何かを企んでいる気配がしたの。
何か悪い事を仕出かそうと企んでいるのか・・・しているのか。
それを調べなくてはいけないと、思っているから。」
ミハルの言葉にアンネが驚く。
「それは本当なのですか、聖巫女ミコト様。
私には何も感じられませんでしたが。」
周りを見回してアンネが尋ねる。
「うん・・・私もさっき来た処で、まだ情報が足りないけど。
確かに何者かの力を感じたの。
邪な者の力を・・・ね。」
ミハルが階段上の大広間に、視線を向けて教える。
聖教会の使徒アンネ。
その役目は皇王の容態を探るだけではなかった。
ミハルは今の自分の能力をアンネに知らせるのだった。
次回 狂騒の都 Part6
君の力を知った者は恐れ戦く。そう・・・<光を継ぐ者>の姿に。





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