魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士 最終回
「おいっ、ミハル。何やってんだよ?
・・・って、少尉!少尉!!ミハルが毒物を作ってますっ!」
キャミーが料理を作っているミハルを見て騒ぐ。
「キャミー・・・失礼な。これの何処が毒物なのよ?!」
ミハルは口を尖らせて咎める。
「んっ?ミハルが何か作ってるって?何だよこれ?」
ラミルも寄って来て様子を見ているが。
「ふーん、変わった匂いですね。何ですこれ?」
ミリアまで不思議そうに、匂いを嗅いで不審がる。
「もう!料理に決まってるでしょ。
もう直ぐ出来ますから、皆さん食べてみて下さいね」
そう言って大きなお鍋から、一掬い食器に盛って味見してから。
「うん、よし、出来た。さあ、どうぞ食べてみて下さい」
ミハルがキャミーに食器を渡すと、
「え?何だこれ?シチューじゃねえよな。何だこれ?」
「まあ、シチューの様な物ですけど。
私の故郷では冬に良く食べる物でして。鍋って言います」
「な、鍋って・・・そのまんまじゃねえか。
・・・うっ、じゃ、じゃあちょっとだけ・・・」
((ずずっ))
「・・・どう・・・です?」
ミハルが少し固まったキャミーの様子を伺って見詰ると・・・
「おおっ!東洋のマジックか?美味いっ!!」
((ぱああっ))にこりん!
「へへー。そうでしょ、そうでしょ。さあ、食べて下さいよ」
ミハルはほっとして胸をなでおろす。
「キャミー、ほんとに美味いのか?」
ラミルの問いにキャミーは答えず、料理に夢中になって食べ続けている。
「ほんとかよ?」
ラミルも一口啜って、
「!!妙な味だが、これはいけるっ!」
2人はよほど気に入ったのか、黙々と食べ始めた。
「どう。ミハルの料理は?」
リーン少尉が、みんなの輪に入ってくると、
「はい、少尉もどうぞ!」
ミハルが料理を盛った器を手渡すと、
「あ、ありがと。うわっ、変わった臭いね。スープ?」
「いえ。東洋のマジック、鍋って言うそうです」
ミリアが笑ってリーンにフォークを手渡す。
「ラミル、キャミー。一心不乱で食べてるけど・・・そんなに美味しいのかしら?」
そう言って恐る恐る口にすると、表情が変わった。
「ミ、ミハル!何なのです?このお料理。
どうやって作ったの?あなた本当に魔法使いだったの?」
リーンの口にも合ったみたいで、大袈裟に驚く。
「いや、あの。少尉・・・
この味付けは粉末しょうゆって言いまして、ヤポンでは普通に使われていまして。
お口に合いました様で・・・良かったです(にこりんこ)」
「そっか。あなたの故郷の味ね。
いいなあ、こんな美味しい料理が普通だなんて。行ってみたくなったなあ、ヤポンに」
「あはは、それはどうも。是非・・・」
ミハル達は料理を囲んで笑い合った。
「ねえ、みんな。明日の朝、古城の基地へ戻るわよ」
食事中の皆に、リーンが告げる。
「えっ!?帰るのですか。作戦は?」
「まだ、中止命令も出ていないのに・・・どうしてですか?」
ラミルもキャミーも突然の事でビックリしている。
「どうも、私達はこの作戦には必要ないみたいね。
師団長命令でね、私達は何処の部隊にも属さない・・・正に独立部隊って事らしいね」
リーンはそっけなく言って、
「まあ、それだけの戦果を挙げたって事」
そう言って銀色に輝く、<<魔鋼騎士勲章>>をみんなに見せた。
「うおっ!本物の騎士章なんて始めて見た!」
キャミーが驚いて、リーンに近付く。
ラミルは食器を片手に、
「やはり、陸戦騎乗りとなって、車長が騎士章を持つのは誇りですなあ」
うんうん頷きながら、胸を張った。
ミリアはリーンの騎士章を見ながらミハルを見て少し残念そうに言う。
「良かったですね、ミハル先輩。
これで名実共にマチハは魔鋼騎、我々もまた魔鋼騎乗りって名乗れますものね。
先輩も貰ってもおかしくないですけど・・・ちょっと残念です」
ミリアの言葉に、ミハルはリーンを見た。
「ふふっ、ほんとよね。ミリア」
リーン少尉は悪戯っぽくミハルを見る。
ー 勲章、着けてなくて良かった・・・って事かな?
ミハルは料理を作る前に勲章を自分の用具袋に締まって置いたのを思い出してリーン少尉の顔を見る。
そんなミハルにリーンは微笑んで、
「戦果はミハルが挙げたのにね。ミハルにも貰えるといいのにね?」
リーン少尉はニヤニヤ笑いながらみんなにそ知らぬ顔で言った。
「ほんと、ミハル先輩だって能力を持っているのに」
ミリアがそう言うのをキャミーが呟く。
「あたし達は兵だからな。
下士官だったとしたら、貰えたのかもしれないな」
キャミーが階級のことで文句を言った。
「確かに一兵卒が貰った前例はないからなぁ」
ラミルがキャミーの言葉を引き継ぎ、諦め顔で言った。
「そっか。みんなミハルも貰えたらって思ってるんだ」
リーン少尉が、皆に念を押す。
「そりゃあミハルがあんなに闘ってくれたから。
こうして飯を食えるし、無事でいられるんですから」
キャミーさえ、ミハルの奮闘を認めてくれている。
「一両に2人の魔鋼騎士が乗っているって前例は無いにせよ、私達には誇りですから」
ラミルも、ミハルが魔鋼騎士になれることを願った。
「ミハル先輩が一等兵だからって7両撃破の砲手にエースの称号を与えないなんて、
我軍のお偉方は、頭カチカチみたいですねぇ」
ー そうでもないわよ。少なくても、ここの師団長閣下は・・・
ミハルはそんな3人に微笑みかける。
「でも私はそんな勲章よりも、
みんながそう思ってくれている事のほうが嬉しいから。ありがとう、みんな」
そう言うミハルに、リーンが笑いながら、
「そうよね、ミハル。
それがあなたの本当の勲章だよね。
私もそっちの勲章が欲しいな。
私も貴女に負けない位頑張って、みんなに誇りに思って貰える車長になるからね」
リーン少尉が親指を立てて皆に宣言すると、
「車長だって良い指揮してくれたじゃないですか。ミハルに負けてませんよ」
「そうそう。だからこうしてミハルの料理食べられているんだから」
「そうですよ。私、装填手になれた事、今一番の誇りなんですから。
皆さんと一緒に闘える事が誇りなんですから!」
ラミルとキャミー、そしてミリアが口々にリーンの指揮を認めている事を伝える。
「うん。ありがとうみんな。
私も、もっと頑張って皇国一の車長って呼ばれるようになるから」
「ほう、そうだったら、あたしは皇国一の無線手」
「私も、皇国一のドライバーだな」
「私も、皇国一装填の早い装填手ですね!」
ミリアが先走って言ったのを揚げ足を取ってキャミーが混ぜ返す。
「皇国一とちり早い、装填手な!」
「うっ、キャミーさん。酷いですぅ!」
ミリアが涙目で訴える。
「あははっ、すまんすまん」
キャミーが笑って誤魔化すと、皆が笑った。
「さて、明日からまた私達の新しい闘いが始まるわよ。
皆で強くなって、勝ち残りましょう。生きる為に!」
リーンが立ち上がり、手を突き出す。
「はい!どんな所へも連れて行ってください。
道無き道だとしても操縦してみせますからっ!」
ラミルがその手に自分の手を合わす。
「敵の無線だろうと、どんな暗号だって聞き逃しません。任せて下さい!」
キャミーも、その手に合わせてミリアを見る。
「装填も車内の修理だって、こなしてみせますから。私も一緒に闘います」
ミリアがキャミーの手に続く。
そしてミハルが続けた。
「敵が如何なる強敵だとしても、必ず破ってみせますから。
必ず倒してみせますから。
みんなと一緒に生き続ける為に!」
ミハルの手が4人と重なる。
5人は伸ばした手を、天に向け掲げて誓う。
「私達の未来を護る為に。私達が目指す未来の為に!」
リーンの言葉に4人が口を揃えて応える。
「魔鋼騎士と共に有らん事を!」
「魔鋼騎戦記 フェアリア」 第1章 魔鋼騎士 終章
どーもっ!さば・です。
「第1章マギカナイト魔鋼騎士」をお贈りしました。
如何でしたでしょうか?
この物語は、約一世紀前に巨大隕石が大西洋に落下。
これにより特殊な電解層が出現し、飛行機が発展せずにいる世界・・・
そして何より我々の世界と違うのは、<魔法>が存在しているという事です。
我々の世界では有り得ない事ですがその訳は、
これからの物語展開の中で語っていこうと考えています。
魔法がどうして存在するのか。
その力が何故必要となっているのか。
主人公達以外にも魔力を持つ者が存在している事は、
第1章にも描いたつもりなのですけど・・・
時代設定は我々の世界で言う、第2次大戦以前の設定です。
よって、各国が未だに王族貴族が牛耳った帝国主義が、王道を行っている設定です。
これが、「フェアリア」の世界に大きく関与しております。
更に出現戦車ですが、マチハ。
旧日本陸軍97式中戦車ではありません。
確かに呼称は<チハ>に近いですけど(笑)・・・
モデルとなっているのはミハル達が言っている通り、
ドイツ3号戦車J型を基礎に置いて、
砲だけがチェコの47ミリ対戦車砲に換装されています。
よって、外観的には砲の上下にスイタイ機がもっこりと付いています。
後はJ型とほぼ同じと思って頂いてよろしいかと。
また、敵側に出て来るM2軽戦車は、アメリカ陸軍のM2ライト軽戦車。
M3中戦車は限定旋回砲、37ミリ砲を搭載したM3グラント中戦車です。
そして、敵の魔鋼騎が操っていたKG-1。
・・・こちらは戦車好きにはもうお解かりとは思いますが、KV-1ソ連重戦車です。
マチハが全力になった変形後の姿は。
ドイツ戦車の中で作者が大好きなパンツァー中戦車の原型とも言われる、Vk30-02M。
長砲身75ミリ砲を備えた戦車になります。
この辺の事は、ウエキに寄ってみてください。なかなか面白い事を書かれてありますよ。
この後にも続々と新式の戦車が出てくる予定なので、
戦車好きの方には「オレの好きな戦車がこんな脆くねえ!」って、
怒られそうなんですがそこは目を瞑って・・・。お願いぷりーず?!
さて、第1章では漸く一回闘っただけでしたが、第2章では戦争の持つ悲壮な展開が待ち受けています。
もちろん、主人公達にも、その非現実的な醜さや、不条理が襲い掛かってきてしまいます。
彼女達がどう戦っていくのか、生き残る事が出来るのか?
戦車戦だけでなく、肉弾戦をも経験していく事になるでしょう。
もし、我々がそんな非現実な世界に放り込まれたらどうでしょう。
今現実の世界の中東・シリア・南アフリカ世界中でキナ臭い戦争の嵐が吹き荒れています。
そんな中へ入ってしまったら多分あっと云う間に屍になってしまうでしょう・・・
我々の考えでは想像も出来ないその現実・・・それが戦争、紛争と言う物ではなかろうかと思います。
話が脱線しました。
第1章で、なんとか生き残った彼女達は、
今後は独立戦隊として用心棒的な作戦に借り出されていくのですが、
その後には第1章で闘った戦車戦以上の大戦車戦が待ち構えています。
そして主人公ミハルについて。
魔砲使いと銘打つ事になる<<魔鋼騎士>>についてです。
第1章で与えられたエース称号ですが、
戦車兵の中で魔法を使えて敵撃破数の多い者に授けられている勲章に由来しています。
日の本と名乗っているこの世界の日本から、
両親と弟と共に渡来、フェアリア国籍も所得しています。
両親が謎の爆発事件の後行方不明、生存の可能性も滲ませていますが。
第1章ではまだ語られてはいないのです。
後に響く為、ここでは記さない方がいいかと・・・
魔法力のある、しかも強力な力の持ち主には変身する事が出来るようです。
闘いの最後にミハルが蒼き魔法衣へと変身しましたね。
それがどのような意味をもつのか・・・
第2章で語っていこうと思ってます。
さてそれでは、今回はこの辺で。
それでは、お待ちかね?の、次回予告です。
「魔鋼騎戦記フェアリア」第2章 エレニア大戦車戦
Ep1 街道上の悪魔
第97小隊は、中央軍司令部が発動させる予定の、エレニアへの偵察を命じられる。
単騎で軍が侵攻する予定のエレニア東部、アラカン村へと向うが、
途中で帝国軍の軽戦車部隊と遭遇し、交戦する。
3両とも撃破するが、目的の偵察は果たせなかった。
アラカン村へ私服で偵察に赴くミハル達は、村が帝国軍に支配されている事を知る。
帝国軍の規模を確認したミハル達は敵の駐屯部隊から村を開放する為援軍を求める。
リーン達マチハ乗員が来援を信じて攻撃を開始した時、絶望的な無線連絡が舞い込む。
彼女達の闘いは一体何の為に、一体誰の為になると言うのか・・・
・・・と、言う風な感じで続いていく訳ですが、この後。
Ep2伝説の魔女と皇女
Ep3エレニア平原
Ep4闘う意味
と、続いて。
第3章 双璧の魔女
Ep1闇の魔鋼騎
Ep2姉弟
Ep3破談
Ep4革命
と、続くのです。
そこで第1編<<魔鋼騎戦記フェアリア>>を終える事になります。
その後に第2編<<神託の御子と審判の女神>>が始まる事になっております。
ミハルは食事の後片付けの為に水を汲みに来ました。
そこには先客らしき二人の影があったのです。
ー うん?あまり馴染みのない制服だなぁ。フェアリア軍には違いないだろうけど・・・
2人は男女だったのです。
金髪の少女と茶髪の男子。
その2人はミハルを見ると身構えたのでした。
まるで魔法使いに遭遇したかのように・・・
作者注)この件は「魔鋼猟兵ルビナス」に書かれてあります。ご参照ください。
「魔鋼騎戦記フェアリア」第1章魔鋼騎士
如何でしたでしょうか?
彼女達の戦いは戦争の激化と共に、いよいよ激しさを増していきます。
それと共にリーンやミハルに黒い影が迫って来ます。
政府内に暗躍する者達によって小隊は危機を迎えます。
その危機を如何にして乗り切るのか。
そしてミハルは弟マモルの元へ還る事が出来るでしょうか?
それは、この後の章で・・・
次回 第2章 エレニア大戦車戦
君は生き残る事が出来るか!?





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