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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act26戦闘終結 Part4.5

ミハルが気絶してしまった間に悲劇は起こった。


キャミーは大切な人に駆け寄ろうと飛び出してしまった。

それが、どんな結末を呼ぶというのか知りもせず。


この部分は2018年3月7日に追加されたものです。

抜け落ちていたキャミーの最期を綴ったお話です。

「ミハルッ!」


突然の砲弾だった。

キャミーの瞳に写る飛翔煙は、真っ直ぐに2号車へ飛ぶ。


「駄目だっ!隠れろっミハル!」


絶叫は爆発音に掻き消された。


    <バッガアアァンッ>


白煙が砲塔側面に揚がった。


「ミハル!ミハルぅ!」


友の名を叫び続けてキャミーは只、我武者羅に駆け出す。

大切な者の窮地に、体が自然と走り出していたのだ。


それは無意識の行為だったのか。


それは自らを危険に晒す行為だと知っていたのか。


「キャミー!やめろっ!お前まで撃たれるぞ!」


飛び出した力作車の陰からマクドナード少尉の呼び止める声が聴こえた。


「少尉は皆と伴に隠れて!」


構わず駆け出すキャミーは、白煙を上げる2号車へと急ぐ。


「馬鹿っ!やめるんだ!」


無鉄砲なキャミーをそのまま見過ごす訳も無く、マクドナードも後を追い立ち上がる。


「あっ!」


その視界の隅に。


「伏せろっ!キャミーっ!!」


言葉が思考より先に出た。

マクドナードの叫びが、キャミーに届いた時。


  <ダ  ダダッ ダダダダッ>


機銃の連射音が・・・


「あ・・・」


キャミーの腹に鉄火箸を突き立てられた様な激痛が・・・


「キャミーッ!!」


マクドナードの悲痛な呼び声が響いた。





「あ・・・。ウォーリア?」


キャミーの前に見詰めている男の姿が。

気がつけば、そこはどこかも解らない世界。


だが、キャミーにはそこが何処なのかが直ぐに理解できた。


「また・・・きちゃった。

 また・・・ここへ来たんだ・・・ね。ウォーリア・・・」


白い雲の世界。

何処からか金色の光が差し込む雲の中。


キャミーは愛しい人の前に居た。


「死んだのね・・・私は。

 あなたの前に居るって事は・・・ウォーリア」


少し悲しげに頷くバスクッチに、歩み寄ると、


「あの時・・・ミハルの弟君・・・マモル君に撃たれた時にも・・・

 来たもんね・・・ここに」


そう言ったキャミーが、微笑んだ。


「そうだな・・・キャミー。

 あの時は・・・まだ、生き続けられると。

 生きて欲しいと願っていた・・・生き続けられると想っていたんだ」


バスクッチがキャミーの手を握った。


「そうだったね・・・ウォーリアが引き止めたんだもん。

 ミハルの傍に居てやってくれって。

 ミハルを護って欲しいと。

 ・・・そうだったよね・・・」


微笑むキャミーがバスクッチに抱き寄る。


「ああ・・・だけど。

 だけど・・・今度ばかりは。

 もう、休んでいいんだよ、キャミー。

 キャミーは善くやってくれた。

 俺の分まで頑張ってくれた・・・ありがとう」


キャミーの髪を撫でて讃えるバスクッチが、感謝の意を顕す。


「うん・・・もう・・・もう、良いのかな?

 ウォーリアの傍に来ても?」


見上げる瞳には、哀願する涙が浮んでいた。


「心残りは・・・?

 キャミーの心の中には、何か思い残す事はないのかい?」


バスクッチが、優しく問う。


「うん・・・そうね。

 思い残す事と言えば・・・ウォーリアのお母様の事かな?」


心配顔になったキャミーの耳に声が聴こえた。


「あら、キャミーさん。私の事を心配してくださるの?」


「えっ!?お母様っ!?」


いつの間にか現れたバスクッチの母。


「どうしてっ!?お母様がここに!?」


キャミーを見詰めて微笑む母に、思わず聴き返すと。


「私にはあの人とこの子を失って生きていく事は出来なかったの。

 たった一人で・・・生き続ける事は悲し過ぎたの。

 キャミーさんが訪れてくれた後・・・考えたの。

 その結果・・・2人の元へ往く事に決めたの」


微笑む母は、幸せそうだった。


「どうしてなのですか?

 闘って死ぬのなら解りますけど・・・自殺だなんて・・・」


キャミーは母が後追い自殺を企てたと思い込んだ。


「違うのよ、キャミー。

 私は巻き込まれたの・・・砲撃に。

 ウォーリアの墓所へ向かう途中で・・・エレニアへ向かう途中。

 ミハルさん達が必死に闘っていたあの場所の近くで・・・

 流れ弾に当ってしまったの・・・」


母の言葉にキャミーは愕然とする。


「な・・・なぜ・・・そんな事に?」


呆然とバスクッチ親子を観て、悲しむキャミーに。


「俺も母も、只・・・死んだとしても傍に居てやりたかった。

 キャミーを護る為に・・・だけど。

 全てを・・・運命を換えれる訳ではないんだ。

 そう・・・俺も母も・・・キャミーも」


「そうよ、キャミー。

 地上の悲しみに負けた訳ではないもの。

 生き続ける事を諦めた訳ではないのだから。

 この世界の理不尽さに負けた訳ではないのですから」


親子はキャミーに教える。

生き続けて、生き抜いた結果。

護るべき人と共に苦しみから解放された結末だったと。


「幸せはここにあるのですか?

 生きて・・・生き続けてこその幸せではないのですか?」


キャミーは2人に問う。


「それはここへ来る人が生きていた時に、どれだけ頑張れたのかで決まるんじゃないかな」


バスクッチが答えた。


「じゃあ、私も・・・頑張れたのかな?」


母が笑う。


「そうね。頑張ったと思うわ」


2人の笑顔でキャミーの魂もここへ来れた事に感謝の念が湧く。


「そうだぜ!俺達も頑張ったんだからな!」


3人の後ろからマクドナードの声が掛けられた。


「やあ、遅かったじゃないか。マク!」


バスクッチが招く。


「ゆっくりで良いと言ってたじゃないか、少尉。いや、大尉か」


懐かしそうにマクドナードが笑いかける。


「少尉・・・あなたまで?」


キャミーがすまなそうに訊く。


「気にするなよキャミー。俺も・・・ミハルに何度も命を助けられててな」


そう言ったマクドナードが地上を振り返り、


「キャミーのおかげで、ミハルの奴。助かったみたいだぞ。

 良かったな・・・なぁ、みんな」


キャミーの周りに、沢山の魂達が現れた。


その誰もが皆、微笑んでキャミー達を迎えてくれている。


  <天国>


そう。

生き抜いた者だけが往ける天界。

微笑みと大切な人と共に住める神の御許。


「あの・・・少しだけ。

 あと・・・ホンの少しだけ・・・いいかな?」


キャミーが皆に待ってくれるように頼む。


「ミハル・・・かい?」


バスクッチが頷いて訊いた。


「うん・・・悲しまないように。

 せめて・・・その心に残したいから・・・」


ターム、アルミーア・・・みんなが頷いて促した。


「ありがとう・・・」


微笑んだキャミーは、瞳を開ける。




「キャミーさんっ!しっかりしてくださいっ!」


ミリアが叫んでいる。


「アイツは?ミハルは?」


心に残る心配を尋ねる。


「大丈夫です!気を失われていますが。外傷もありませんし・・・

 死んだって、死にませんからっミハルセンパイは!」


ー聴けてよかった・・・そう。ミハルだけは、死なせたりしない・・・-


「・・・ミハルに・・・大好きだって・・・伝えるなよ・・・」


ーああ・・・もう。何も思い残す事はない・・・-


キャミーの魂は身体の束縛から解き放たれる。


「キャっ、キャミーさんっ!!」


ミリアの絶叫が後ろから聞こえた様な気がしたが。


ーああ・・・自分の顔が見える。

 そう、それで良いんだ。微笑んだまま・・・逝けたからー



皆が待つ天国の門に駆け上っていくキャミーの魂は、

後ろを振り返らず・・・光の中へと消えて行った・・・・





キャミー達は死後の世界へと旅立っていきました。

そこには、本当の安らぎがあるというのでしょうか?

今は、彼女達の魂に幸せが訪れている事と信じましょう・・・


闘いは常に非情だった。

遂に中隊からも戦死者が出てしまう。

しかもそれがミハルにとっては掛け替えも無い大切な友だった者達だと知ったのは、

その遺体と対面した時だった。


次回 戦闘終結 Part5

君は求める、どうすれば償えるのかと。神にも縋る気持ちで・・・

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