魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act25双璧の魔女 Part4
ミハルの魂はあるべき処に戻った。
それは未だ闘いの渦中にある戦車の中。
気付いたミハルは命令を下す。
< ガ ンッ >
派手な音をたてて、ミハルの額が照準器にぶつかった。
「いったたたたっ!」
堪らず額を押えて周りを見ると、
「うん?どうしたのみんな?」
ミハルに見とれる様に、皆の視線が集まっている。
しかし、照準器に写る火炎に気付いたミハルが命じた。
「タルト、全速離脱<ギガンティス>から離れて!
奴の弾庫が誘爆したら巻き込まれる惧れがあるからっ!」
「はっ、はいっ!」
ミハルの命令で我に返ったタルトがアクセルを踏み込んだ。
「全員、衝撃に注意!来るわよっ!」
照準器で<ギガンティス>を注視していたミハルの瞳に、
主砲弾庫に火が廻り、砲塔が噴き上げられて、木っ端微塵に消し飛ぶ姿が写った。
<グワアアアンンッ>
轟音と共に体の芯から震えさせる衝撃波が、MMT-9を襲った。
「くぅ!」
照準器に頭をぶつけない様に手で突っ張り、その波動に耐える。
「ふうっ・・・何とか倒せたみたい・・・。」
そう呟いて、突っ張った手に視線を巡らすと。
「えっ!?うそっ・・・ぎゃああっ!」
袖口に今迄着ていなかったピンクの袖が見えて叫んでしまった。
「車長ー?何なんですか、その服は?」
「いつの間に着替えたのです?」
「・・・エロいな、ミハル。」
「にゅふふ・・・ミハルセンパーイ。エロかっこいいではにゃいでしゅかぁー。」
4人に口々に揶揄されて・・・。
ミハルは涙目で言った。
「ミハエルさんの・・・馬鹿ぁ。」
______________
<ギガンティス>の誘爆から逃れたMMT-9の中で、
ミハルは放心状態のまま、暫く照準器に写る黒煙を眺めていた。
ー終ったんだ・・・闇との闘いが・・・そしてロッソアとの戦闘も。-
フェアリアとロッソアの戦車隊が撃ちあう事もなく、
周りに集まっている姿を見て、心を安らげていて思い出した。
「はっ!そうだっ、タルト!
全速力で救護班の元へ向って。
キャミーとルーンの傷の手当を受けなきゃいけないんだからっ!」
巫女服のままで、命令を下すミハルに、
「おいおい、ミハル。気付かないのかよ。」
「そうですよ、車長!今更何を言っているのですか?」
キャミーとルーンが呆れた様に、ミハルに声を掛ける。
「えっ?何を言ってるの・・・2人共重傷を・・・。」
そこまで言ってから、漸く気付く。
キャミーが立ち上がって血の付いた腹部を見せている事に。
「ああ・・・そんなに血が・・・って。あれ?」
確かに腹部の破れた処に血が付いているのに傷が見当たらない。
「あの・・・キャミー?傷はどこに行ったの?」
不思議そうにキャみーを見詰めるミハルの前で、キャミーが笑う。
「あははっ、傷?さあ・・・どこかの誰かさんが治してくれたみたいだな。
と、言うか・・・無かった事にでもしてくれたんじゃないのか、ミハル。」
「はあ?」
笑うキャミーに戸惑うミハル。
「ミハル・・・お前が私達全ての魂を救ってくれたんだろ。
何が何だか解らない真っ黒な闇の中から。
そして目覚めたら・・・身体の傷が無くなっていたんだよ。
もう、死んだと思っていた身体が元へ戻っていたんだ。」
「はぁ・・・?」
更に戸惑うミハルが、眼を点にして小首を傾げる。
「金色の光が私達を解き放ってくれた。
その時聴いたんだ、全てを還すと。
全てを元に戻すって・・・さ。
そして気が付いたら身体の傷が無くなっていた。
もう、ウォーリアの処へ行くものだと思っていたのに。
ミハルが<ギガンティス>を倒せるまでは命を保っていられた肉体が、
あの瞬間、最期を迎えた筈なのに。」
ミハルはキャミーの顔を見て驚く。
「キャミー・・・まさかあの時・・・私がバローニアを倒して闇を打ち破らなかったら・・・
死んでいたの?あのまま何も起きなかったら・・・今頃は?」
「まあ、そうだろうな。多分・・・。」
苦笑いを浮かべ鼻を搔くキャミーにミハルは思わず叫んでしまう。
「良かった!善かったねキャミー。神様のおかげだね。」
「まあ・・・奇跡はあるものなんだな。こんな戦争の中でも・・・さ。」
「うん・・・うん。良かった・・・善かったね。」
思わず叫び、思わず涙するミハルに、
「まあな・・・ついでにミハルの全裸も見れたし。」
「は?」
涙が止まり、思いっ切り口を開けて聴き返す。
「いや、なに。金色の光に包まれたミハルが見えた気がしてな。
その・・・全裸のミハルが・・・さ。」
「あ・・・あの・・・キャミー。それって?」
「おっ○い・・・ぷるんぷるん。」
・・・・・・。
「ぎゃあっ!何てコトなのおぉぉぉっ!!」
思わずキャミーに吼えるミハルを、
「まあまあ、先輩。麗しかったから善いではないですか。」
ミリアが後から止めに、いや抱き付いてニヘラと笑う。
「ひいいっ、ミリアまで・・・と、言う事は。
あの闇に囚われていた人達の魂全員に、見られていたって事なの?」
「まあ・・・そうなりますか。」
「ですよね。」
ルーンもタルトも、頷く。
「ひっ・・・・うっ、ううーんんっ・・・。」
ミハルは石と化し・・・卒倒した。
想わぬ展開に卒倒したミハル。
無事に還って来たものの、巫女姿のまま気絶したのが運の尽き。
次回 双璧の魔女 Part5
君はいつの間にか元の姿に戻っていた・・・と、言う事は?





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