表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
340/632

魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act25双璧の魔女 Part3

天界の鈴の音が鳴る。

ミハルは邪なる者の魂と対峙した。

<シャンッ>


天界の鈴の音が一鳴りした。


「闇よ、いにしえより来たりし闇よ。

 還りなさい、あなたの世界へと。

 ここはあなたが来るべき世界ではない。」


ミハルが<無>へと言い放った。


ーぐわあああぁっ!-


バローニアの姿が闇へと溶け込み邪なる魂のまま、煉獄れんごくの世界へ引き擦り込まれていく。


ー助けてくれっ、嫌だ、やめろぉぉっ!-


黒き魂と成り果てたバローニアの魂に闇から無数の手が伸び、地獄へと引き込んでいく。


<シャンッ>


鈴の音が鳴った。


<シャンッ>


その音が闇の中へ引きずり込まれようとしている黒い魂の元へ近付いて来る。


<シャンッ>


地獄から伸びた手が、天界の鈴に怯えて黒き魂を手放す。


「邪な者よ。

 罪を認め改めようと思いませんか。

 己が罪を認め助けを求めませんか。」


優しき光が黒き魂を諭す。


ーああ・・・助けて・・・助けてくれ・・・怖ろしい、恐い・・・

 地獄へなんて行きたくはない。-


「恐れ怯えるのであれば、心から罪を認めて悔い改めなさい。

 神の御慈悲に縋りなさい。」


ミハルが差し伸ばす手に、黒き魂が縋りつく。


ーああ・・・悔い改めます・・・この手を離さないで・・・。-


邪な魂がミハルの手を握り締めて笑い掛けた。


ーああ・・・一人で地獄へ行くのなんて嫌だ。

 悔い改める・・・そう、改めて・・・お前も一緒に引き摺り込んでやるっ!-


バローニアが道連れにしようと強くミハルの手を握った。


「あなたは罪を認めてはいませんね。

 悔い改めようとはしないのですね・・・悲しいです。

 何とか助けてあげたかったのに。」


金色の瞳でバローニアの汚れた魂を見詰めて、ミハルが悲しんだ。


ー何とでも言え。お前さえ邪魔しなければ<無>が完成したと云うのに。

 お前だけは私と共に地獄の底へ来て貰おう。-


この後に及んで、バローニアは罪を重ねようと試みた。


「そう・・・あなたはもう2度と助けて貰えない地獄の中で、

 永劫に苦しみを与えられる道を選んでしまった。

 さようなら、バローニア将軍。もう会う事もないでしょう。」


バローニアに決別の挨拶を送ったミハルが、黒き魂に握られた手にちからを加える。


<ボワアッ>


ーなんだとぉっ!その力は・・・聖なる力ではないっ。-


ミハルの手から闇の波動が炎となって噴出し、黒い魂を焼き払う。


挿絵(By みてみん)


ー神の巫女の力ではないっ、それは闇の・・・。-


紅蓮の炎が黒い魂を焼き、握られていたミハルの手から崩れ落ち焼き爛れる。

ミハルが黒き魂に教えた。


「私は<光と闇を抱く娘>、光と闇の力を併せ持つ巫女。<双璧の巫女>・・・。」


<ズザザザザッ>


無数の手が再び闇の底から現れ、黒い魂を絡め捕った。


ーぎゃあああああっ!-


地獄の底へ引き擦り込まれていくバローニアの魂を、

悲しそうな瞳で見ていたミハルの袖が一振り祓われて、


<シャンッ>


天界の鈴が闇を祓った。


<ボウッ>


バローニアの魂を地獄へ引き擦り込んだ穴が、掻き消される。


「さあ!<無>よ、諦めなさい。

 最早<無>の寄り代は地獄へ消えた。

 この世界で拡がる事は出来ないのだから。」


<オオオオオオオオオオォッ>


何者かの叫びが響き渡る。


<ポゥッポウッポウッ>


<無>に囚われていた魂達が光を取り戻し、肉体へと帰っていく。


「そう・・・私もあんな風に帰ったっけ。リンカーベルに救われて。」


ミハルが思い出したかの様に呟き、もう一人の自分に語り掛ける。


「これで終ったんだね、ミハエルさん。

 私の務めは果たせたんだよね。」


きっとどこかに居る筈の生れ変る前の魂に告げて、


「ルシファー、私・・・勝ったよ。

 あなたとの約束・・・守れたよ。」


大切な想いを胸に抱き、果せた約束に涙が湧いてくる。


ーミハル・・・ミハル・・・-


闇が消えた金色の空間で、誰かが呼んでいる。


「あ・・・みんな・・・来てくれたんだね。」


金色の光を放つ魂達が、ミハルの周りを囲んでいた。


「ミハル・・・あなたはとうとう目覚めたのね。」


タームが笑う。


「まさかとは思ってたけど・・・本当だったんだ。」


アルミーアも笑う。


「初めて会った時から、並みの魔法使いではないと思ってたけど・・・やっぱりなあ。」


バスクッチが苦笑いを浮かべる。


「あははっ、それはそうよ。だって私なんだもん。

 私が生れ変って人になった姿なんだから。」


緑色の瞳で笑うミハエルの姿もあった。


「みんな・・・私を支えてくれていたんだね。」


温かい魂達にミハルが感謝を込めて訊く。


「いやいや。大した者だよミハルは。

 大天使の力を秘めているなんて、これっポッチも思わせなかったもの。」


アルミーアが笑って手を振る。


「でもさ、ミハル。前から気付いて欲しかったな。

 ミハルを想って現れた私を見て不思議だったと感じてなかったの?

 普通は在り得ないでしょ。死んだ者が現れて闇の心を浄化するなんて・・・。」


タームがアラカンの村でミハルが闇へ堕ち掛けた時に現れ、ミハルを救った事を話す。


「あー、あれは・・・あの時は自然な感じがして。

 タームだったから・・・不思議とは想ったけど。・・・そうなの?」


ミハルが呆けっ娘を発揮する。


「ありゃりゃ・・・天使ミハエル。こんなだったのですか、元々?」


アルミーアがミハエルに惚けた。


「うう・・・・ひ・・・否定出来ない・・・。」


<ガクッ>


ミハエルの一言に、全員がずっこけた。


「何はともあれ。ロッソアの将軍も倒せたんだから・・・もう少しで戦争も終えられるよ、ミハル。」


アルミーアがミハルに微笑む。


「うん。そう願いたいね。」


タームも頷く。


「あと一息だぞ。頑張れ巫女。」


バスクッチがミハルの姿を見てそう言った。


「あ・・・この衣装・・・どうやって元へ戻れるの?」


バスクッチに言われ、元の軍服へ戻る方法を訊くミハルに、


「ああ・・・そうそう。ミハルに言うの忘れてたわ。

 その服になるとある一定時間はその姿のままだから。

 現実世界でも同じだから注意してね。」

「は?」


眼が点になったミハルが訊き返す。


「と・・・言う事は、この姿のままで戦車の中へ戻れって事ですか?

 戦車の中に居る自分の肉体へ戻ったら元へ戻るのではないのですか?

  ・・・・有り得なーいっ!」


慌てて騒ぎ出すミハルを制して、


「大丈夫よミハル。あなたの友はそんな事で驚かないわよ。」


ミハエルが無責任な事を言う。


「なっ、何言ってるんですか!

 驚くに決まってますよっ!イキナリ軍服がピンク色の巫女服になったらっ!」

「じゃあ・・・試してみようか。 ホ レ っ !」


< ゲ シッ >


「あっ! れぇ~っ!!」


行き成りミハエルに背中を蹴られて、ミハルは吹っ飛んだ。


「わああぁっ!何てことするのよおぉぉぉぉっ・・・・。」


金色の空間から吹き飛ばされたミハルが叫ぶ。


「あははっ、じゃあまたね、ミハルっ!」

「今度逢う時には、もっと成長していろよ!」

「ミハルっ、大きくなって強くなってね。いろんな意味で・・・ね!」


タームもバスクッチもアルミーアも、笑って別れを告げた。

ミハルは戻る・・・肉体へと。

そこでは、皆が見詰めていた。


次回 双璧の魔女 Part4

君は戻ってきた、魂の戻るべき処へと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ