魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士Ep4魔鋼騎士Act10 騎士の勲章
「え?師団長閣下が両親とそんな親交が有ったなんて知りませんでした。
・・・許すも何も・・・中将閣下の申されるままに」
ミハルは、恐縮してお辞儀した。
「そうかね?それは有難い。
ずっと心の奥にしこりとなっていたからね。
シマダ君、君の弟君にも許してもらったのでな。
これでやっと胸の痞えが取れたよ」
「え?マモルが・・・マモルとお会いになられたのですか?」
ミハルが弟の事を聞くと、
「ああ。この作戦が始まる前に学校に寄ってな。
元気な子だね。
ミハル君もあれ位元気だったら、友達も沢山出来ただろうに」
「元気・・・だったんですね。良かった・・・」
ミハルは少し涙ぐんで喜んだ。
「ああ。元気過ぎて困る位だったよ。
クラスの中でも、かなり人気者みたいだったからな」
「へえぇ。そうでしたか」
ミハルは嬉しそうに、懐かしそうな顔をしていた。
「ところで、シマダ君。
君には相当な能力が秘められている様だね。
その能力を使ってリーン姫を護ってはくれないだろうか。
この老いぼれの願いだと思って」
「はいっ。当然です。
私は小隊長を、車長を護りたいのです。小隊を護りたいのです」
答えたミハルにファブリットは頷く。
「そうか。では宜しく頼みますよ。魔鋼騎士殿!」
「え?あっ、はいっ!」
ファブリットに称号で呼ばれて、一瞬戸惑ったがミハルは力一杯それに答えた。
その時勲章を携えて、副官参謀が胸章を持って現れた。
「閣下、どうぞ」
副官が差し出した箱には、銀に輝く勲章が二つ。
それを掴んだ中将自らが勲章を授けてくれた。
「陸戦騎独立第97小隊、隊長魔鋼騎士リーン・マーガネット少尉。
同じく魔鋼騎士ミハル・シマダ一等兵。
君達の武勲を賞して、この騎士章を授ける。
今より君達は栄えある皇国陸戦騎エース、魔鋼騎士となったのだ。
この栄誉の為、更なる活躍を期待している。受け取りなさい」
リーンとミハルに一つずつ騎士章が胸元に付けられて、
「ありがとうございます!」
2人はファブリット中将に敬礼した。
微笑んだファブリット中将は、2人の敬礼に答えて。
「それでは2人供、武運長久を祈る!」
そう言って師団長は参謀たちを伴って、指揮所の方へ歩いて行った。
2人はその後姿に、敬礼を続けながら見送った。
「教頭先生、いえ師団長閣下も苦労されていたんですね。
中央軍司令部は、一体何を考えているんですか。
こんな馬鹿な作戦指導をするなんて」
ミハルが愚痴ると、
「ミハル。先程ファブリット師団長が仰られた事なんだけど。
私達の小隊がこの作戦に加えられたのは多分、
その中央軍司令部の、とある人物の策略だと思う。・・・私を殺す為に」
「え?少尉を・・・ですか?」
ミハルが驚いて聞き返す。
「うん。
皇族の中で邪魔者扱いされ続けてきたって言った事があったわよね。
皇族の中で一人だけ魔法力を持つ人間だから。
皇王様が上のお姉様達より私を、第4皇女の私を跡目継ぎと呼んでしまってから・・・」
「ええっ!少尉は皇太子様なのですか?」
ミハルは驚きのあまり腰が引ける。
「あははっ、皇族内だけの話だけどね。
皇王様が古来の伝承を信じられてしまって、
魔法力を持った私を<<救国の皇女>>だ、何て呼ぶから上のお姉様達が怒ってしまって。
私の事を遠ざけるようになってしまったの。
それに私は上のお姉様達と違って正妻の娘じゃないから・・・」
リーン少尉は寂しそうに、目を伏せてミハルに言った。
「そう・・・だったのですか」
ミハルは搾り出す様に口を開く。
「それでね、私の事を気遣ってくれた人達が・・・
一般の人達の中へ入れば皇位継承問題から逃げられると思って幼年学校へ入れてくれたんだけど。
やっぱり許してくれなかったみたい。
どうしても私を亡き者にしたいみたいね。
中央軍司令部に姉様達を皇位に付けたがっている人物が居るのは解っていたけど。
・・・こんな酷い事をするなんて考えてもいなかった。
私の為に師団長を始め、皆に迷惑を掛けてしまった。
私、どうやって謝ればいいのか・・・」
リーンは歯を食い縛り、涙を堪える。
「少尉!私、私は許せません。
自分の欲の為に誰かを犠牲にするそんなやり方。
絶対許せません!
人の命を何だと思っているのですか!
この無茶な作戦指導の為に死んで逝った者の命を誰が償えると思っているのですか!
何の為に死んでいったと思っているのですか!
みんな大切な人を想い、故郷を想って闘ったのに。
・・・悔しいです!」
ミハルは拳を握り締め声を震わせてリーンに叫んだ。
「私、少尉と共に闘います。
そんな人達の為に死んで堪るもんですか。
きっとこの戦争を生き抜いて、弟と共に故郷へ帰ります。
それが死んでいった人達への慰めだと思いますから!」
ミハルの瞳から涙が零れ落ちる。
「ミハル・・・そうね。
私達が生き残れれば、それが皆への罪滅ぼしになる。
・・そう考える事にするわ、私も」
リーンは頭上の星空を見上げて、
ミハルと同じ様に強くなろうと、強く生きようと思った。
「ふう。少尉。怒ったら、お腹減りました・・・ね?」
ミハルが怒りを抑えてお腹を押さえて少し笑い掛けて来るのに、リーンは救われた気になる。
「ふっふっふっ、ほんとね。
小隊に戻って食事を摂りましょうか。
こんな時は味気ないレーションじゃなくて、温かい物が食べたいわよね?」
「ほほう!
その言い方は誰かにお料理を作って欲しいと言われているようですな!
おっほん!では、私めが御作りしましょうではないですか!」
ミハルはリーンに向って胸を張って言った。
「ええっ!?ミハル・・・料理・・・出来るの?」
リーンがジト目で見詰める。
「むう。少尉、私が料理出来ないとでも?」
「え?いや。ミハルが料理してる所なんて見た事無いから・・・」
「むっふっふっふっ。まあ、任せて下さいよ<<腕におぼえあり>>です!」
「うっ。なぜか・・・身の危険を感じるわ(汗)」
リーンが冷や汗を垂らして、ミハルを見詰た・・・
リーンとミハルは魔鋼騎士となった。
2人とその仲間達は硬く誓い合う。
その手を高く掲げて・・・
次回!第1章 魔鋼騎士 最終回
君は仲間と共に何を目指すのか・・・・





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