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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士Ep4魔鋼騎士Act9 騎士の勲章

挿絵(By みてみん)


戦いが済んで、リーンとミハルは指揮所に報告へ出向いた。

そこで出会う事になった人とは。



「全く。無茶しすぎなんだよ。よく戦闘中に、ぶっ壊れなかったな」


「すっ、すみませんっ軍曹」


ラミルが整備中の軍曹に謝る。


「まあいい。今夜中に修理は終えておく。

 それまで、お前達は休んでおけ。明日も作戦は続くだろうからな」


「はあ。では、お言葉に甘えさせてもらいます」


ラミルはキャミーを伴い、野戦テントに戻る。


「ミリアまで引っ張り出さないと人手不足な位、酷くやられてたって事ですかね?」


キャミーがラミルに訊くと、


「そうみたいだ。

 もし、私達が魔鋼騎じゃなかったら命は無かったかもな」


「うへっ!そんなに・・・ですか?」


キャミーが驚いて、目を大きく見開く。


「そりゃあ、重戦車の砲弾を喰らってもこの程度で済んだんだからな。

 リーン少尉とミハル様サマ・・だよ」


「そうですね。ミハルの奴、この事を知ったら威張るかな?」


「はっはっはっ。そんな奴じゃないの、知ってるだろ」


「ですね・・・」


キャミーも、ラミルに笑い返した。


「それにしても車長とミハル。遅いな・・・」


「そうですねぇ。

 戦果報告と明日からの行動指令を受けるだけにしては、時間が掛かり過ぎてますね」


「何か悪い事に成ってなけりゃ、いいがなぁ・・・」


ラミルは師団司令部の方を見て、腕を組んだ。







「はあ?私達の小隊を本来の姿に・・・ですか?」


リーン少尉が参謀に訊く。


メガネを掛けた神経質そうな顔の中佐参謀が答えた。


「そうだ。

 貴様達の戦功は、素晴しい。

 一両で7両も喰ったのだからな。

 陸戦騎エースとなったのは、我軍でも数両しかいない誉れだ。

 よって、その力量を認めて師団直属小隊の任を解く。

 今後は適時各方面軍からの要請で行動する様に!」


「では、今作戦には今後?」


「・・・今次作戦は終了した。作戦の継続は、補給され次第に決定されるだろう」


参謀の答えにリーンはミハルと顔を見合わせて、


「作戦終了・・って事は、撤退するのですか?」


その言葉に顔をヒクつかせて参謀が怒鳴る。


「撤退ではない、転進と言え。

 我々は戦線を縮小、エンカウンター南東40キロまで退くのだ。そこで補給を待つ」


参謀の一方的な答えにミハルは唇を噛み締める。


ー  これだから、負けてしまうんだ。

   こんな参謀が居るから味方に被害が多く出るんだ!


ミハルは手を握り締め、奥歯を噛み締める。

怒りがこみ上げて来るのを我慢して立っていた。


「解りました。第97小隊は修理完了次第、後方に進出。

 次期命令を待つ事にします!」


そう言ってリーン少尉は話を打ち切った。


2人は参謀に敬礼をして退出する。



「ミハル、我慢して。あんな奴でも、上官は上官だから」


「はい。でも悔しいです。

 今日の闘いで散って行った人達の事を想うと・・・」


「私も・・・こんな酷い状況だったなんて。

 此処の師団長は、よくあんな男を参謀に使っているわね」


2人は司令部テントから出て、愚痴を言い合い自隊の方へ向おうとした。

  

「誰だ、お前達は!」


急に横から声を掛けられて振り向くと、続けて問われた。


「何処の隊だ、お前達は?」


2人が振り向いた先に、数人の高級士官がこちらを見ていた。


ー  わっ!金ベタの襟章。佐官以上だ!


ミハルは慌てて姿勢を正し、敬礼する。

リーン少尉は少しも慌てず申告した。


「陸戦騎の独立第97小隊、リーン・マーガネット少尉です」


「おっ、同じくミハル・シマダ一等兵です」


カチコチになって、ミハルも申告した。


「こんな所で何をしているんだ。用事が済んだのならさっさと原隊へ戻れ!」


参謀肩章を吊った中佐参謀がリーンに向って怒鳴る。

それを奥の年配の男が止めた。


「リーン?リーン姫ではないですか?

 暫くお会いしない間に大きくなられましたな」


男が前に出て来て、懐かしそうに話し掛けてきた。


「えっ?あなたは・・・」


リーンの前に現れた白髪混じりの髪をした男の襟章は・・・


「師団長閣下。お知り合いで?・・姫?」


中佐参謀は、師団長とリーンを交互に見て話す。


「ああ。このお方は我国の第4皇女リーン・フェアリアル様だ。私の教え子でもあるがね」


「は?ファブリット中将の教え子・・・え?皇女様ですって?」


中佐参謀は、漸く理解したのか逆に姿勢を正して敬礼する。


「ファブリット教頭先生お久しぶりです。お変わり無くお元気そうで何よりです」


ペコリとリーンは師団長にお辞儀をして、


「中佐殿。下級者に敬礼はよして下さい。軍紀が乱れますから」


リーンが微笑んで参謀に言った。


ミハルはリーンが微笑み返した相手を知っていた。


ー  ひええぇっ!私も知っている。

   あの”白髪の狼”教頭先生が師団長閣下だったなんて。ホントびっくりしたぁ・・・


ミハルは心臓がドキドキしてるのを押えるのがやっとで、敬礼したまま立ち尽くしている。


「ほう、誰かと思えばあのシマダ教授の娘か。

 元気でやっとるみたいだな。噂は聞いたぞ」


ファブリット師団長が、ミハルに目を向けて答礼してくれた。


「ひゃ、ひゃいっ。元気でありますぅ。教頭先生!」


声が裏返って、変な返答をしてしまうミハルであった。


「はははっ、変わらんなシマダ君。

 もう生徒と教師の間柄では無くなったのだから、先生と言うのは無しにしてくれんかね?」


優しく労わる様な瞳で、師団長はミハルを見て微笑んだ。


ー  変わったのは教頭先生の方ですね。

   あんなに厳しかったのに、それがこんな優しい目を。

   同じ砲術科学校出だからかな?

   それとも師団長として戦場へ赴いた軍人としてなのかな?


ミハルは元教頭先生でもある師団長を見てそう思った。


「それはそうとして、リーン姫様。

 訳を話してもらえませんか。どうして一下級仕官として戦場へ出られたのです。

 姉姫様の様に、司令部付きとして軍中央へ行かれるものと思っておりましたのに」


ファブリット中将は、リーンに向って疑問を訊く。


「それは・・・今は言えません。

 あえて言うなら、そうしたかっただけです。

 そうしなければいけなかっただけです」


リーンの瞳が曇ってしまった。

それに気付いたファブリット中将は直ぐに感づいた。


「はっはっはっ、そうですか。

 またの機会にでもお話下さい。

 それはそうと、今日は司令部へ何の用ですかな?」


リーンとミハルを交互に見て用件を聞こうとする師団長が訊ねる。


「あ、いえ。戦果報告と明日からの作戦予定を伺いに・・・」


リーンがファブリットに訪れた訳を話そうとすると、


「ほほう・・・戦果報告ですか。

 輝かしい戦果を収められたようですな。副官、報告書を見せて貰いなさい」


中佐参謀が、リーンの手から報告書を受け取り、報告内容を調べた。


「むう。軽戦車1両と、中戦車5両。

 ・・・なに!?重戦車1両も、か?

 間違いではないのか?たった1会戦で、7両も撃破したと言うのか!」


「はい。確実撃破のみ、報告しております」


リーン少尉が参謀を睨んで返答した。


「ふ、ふんっ。そうか、解った」


リーンの態度で、不味いと思ったのか中佐参謀は引き下がる。


「ほう、さすが姫とシマダ君だ。

 生き残る事ですら難しい戦で・・・善くやって下さいました。

 私からも感謝します。おいっ、参謀!」


ファブリット師団長はもう一人の参謀を呼んで、


「独立第97小隊に感状を授けてあげなさい。

 それと、車長と砲手にエースの称号を、魔鋼騎士の勲章を与えてあげなさい」


ー  え?魔鋼騎士の勲章ですって?

   砲手ってことは・・・一等兵の私に?


ミハルはドキリとして、ファブリット中将を見た。

参謀が一人の通信下士官に何かを取りに行かせる。


「師団長。それは一兵卒に与えられる勲章ではありません。前例が有りません」


中佐参謀が文句を言うのを、


「前例が無いと言うなら、私が作りましょうかね。

 それで宜しいのではないかね、中佐?」


ファブリット中将は、にこやかに言ってからミハルを見る。


「リーン少尉、シマダ君。こっちへ来たまえ」


中将が2人を近付くように手招きする。


参謀達と少し離れた所へ招くと小声で話し始める。


「すまないな、2人供。こんな無謀な作戦につき合わせて。

 軍中央から直接作戦指揮参謀が来て、命令を悉く邪魔するのだよ。

 硬直した作戦の為に何人もの若者が無為に死んでしまった。申し訳ない」


「師団長・・・やはり師団長の命令ではなかったのですね。

 お会いした時、何故教頭先生があんな命令を下したのか疑問に思っていました。

 そうですか、軍中央の作戦であんな事に・・・

 まるで、この作戦で誰かを殺そうとしているかの様でした。

 部隊の全滅と共に・・・敵対する者をも・・・」


リーンが師団長を見詰て、手を強く握る。


ー  リーン少尉?誰かって・・・誰の事ですか?


ミハルは、先の戦いで自分独りが生き残ってしまった事を思い出す。


「リーン姫。お気を付けて下さい。

 戦いの中で、敵弾で死ぬ事は名誉な事かもしれませんが、

 味方に狙われて同士討ちで殺される事も戦場では少なからず有る物です。

 私は命令を出しました。

 姫の隊を我が師団直轄部隊から外すようにと。

 これで97小隊は、少なくとも味方討ちからは免れる事となるでしょう」


「ファブリット・・教頭先生!ありがとうございます。

 そこまでお考えくださっていたとは思って居ませんでした。

 疑ってごめんなさい、先生ごめんなさい!」


リーンは自分の身を案じてくれている慈父の様なこの師団長の指揮が、

軍の中央に居る人物によって邪魔されている事を心から詫びた。

そして、その人物によって抹殺されるべき者が、

自分である事をも師団長は解っている事が心苦しくて悲しくてしょうがなかった。


「謝る事など無いのですよ、姫。

 姫様の事を見てきた私共は、信じておりますから。

 必ず皇王様の御心が、姫様のお力でお救いされますのを。

 この戦争を御止めになられる決断を下されるのを」


「はい。私も皇王おとう様が御心を開かれる事を信じています」


ファブリット師団長は優しくリーンを見て励ましてくれた。

そして、返す目でミハルに言った。


「シマダ君、君のご両親とはよく話をしたものだよ。

 覚えているかな?

 幼年学校で君はクラスで浮いた存在になってしまっていたね。

 御両親が心配されて、砲術科学校で教頭をしていた私の元へ来られてね、相談したものだよ。

 教授とは武官時代からの友人でね。

 良くヤポンの話をしたものだったよ。

 そんなシマダ夫妻を護れなかった私達を許してくれないか?」


元恩師であり教頭先生でもあった現師団長は、ミハルを見詰て謝罪するのだった。


恩師でもある師団長に、リーンとミハルは魔鋼騎士としての勲章を授かる。

そして、リーンはミハルに自分が狙われている事を話した。

次回Act10 騎士の勲章

君は誰と闘い抜く事が出来る?

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