魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act23ラストバトル<ギガンティス>戦 Part3
<ガガンッ バガァンッ>
砲撃の中をMMT-9は、突っ走る。
「撃てぇっ!」
反撃の砲火を交えながら。
<ガギュンッ>
砲塔側面を削り取る85ミリ砲弾。
「今のは危なかった。ルーン射撃を継続して!」
ミハルがレンズから目を離さず命じる。
「は・・・い。」
飛んで来る敵副砲弾を交わしながら、全速力で突入する車体の周りに次々と着弾する。
貫通こそ免れていたが既に数発の弾を受け、少なからずダメージを受け続けていた。
「ミハルっ敵の主砲が、味方陣地へ向けられているぞ!」
キャミーの報告に、その巨大な砲身を見上げる。
「あの主砲を打ち込まれたら・・・味方に甚大な被害が出てしまう。」
そうは考えても今の自分達にはどうする事も出来なかった。
「・・・今は主砲の事よりも、何とかして奴の動きを停めないと。」
ミハルがそう呟く様に言うと、
「それもだが、何とか敵の妨害電波を止めさせられないか?
無電が使えれば味方重砲に支援を求められるし、来援を請う事だって出来るんだからな。」
ーそうだ!私は自分達だけで闘っている訳ではないんだ。
リーンにだって話しがしたいし、一緒に闘って欲しい。-
「すっかり忘れてたよキャミー。
そうだね、何とかしてジャミングしている電波を停めさせる方法を考えないと。」
キャミーに教えられた重要な事に気付いたミハルが考える。
ー無線を使える様にする為にはどうすればいいんだろう。
何かあの中に居る人がしゃべりかけてくる様な方法はないかな。-
「あの中に居る人が思わず話してくる様な事はないのかな?」
「うーん、そうだな。
奴は砲撃を停めないのだから、こっちをずっと観ている訳だから・・・。
そうだ、危険だがミハル・・・こうしたらどうだ?」
キャミーがミハルに提案した。
____________
ーくっはっはっ、どうだフェアリアの小娘共。手も足も出まい。-
<ギガンティス>の中でバローニアが喚く。
逃げ回りながらも近寄る中戦車を睨みつけ副砲を放ち続けるが、
元々戦車兵でも砲手でもないバローニアには、副砲の数だけが頼りであった。
<数撃ちゃ、当る>
まさにその一言。
何斉射したか解らないが、直撃は数える程しか当っていない。
しかも貫通したのは一発としてない。
だが、戦闘については素人と言っていいロッソアの元将軍は、
<ギガンティス>の能力でフェアリアの中戦車に圧倒していた。
ーしかし、ちょこまかと動きよる。
このまま近寄られると副砲の俯角限界に入り込まれるやも知れん。-
バローニアがちょうどそう考えていた時。
ーむむっ?あの小娘・・・何をしておるのだ?-
バローニアの眼にキューポラから半身を出して何かを身振り手振りで伝えてくる碧い髪の少女が見えた。
ーあの娘・・・何か手信号を送って来ているようだが・・・んんっ!-
その娘が指を唇に当てたかと思うと、その指を眼に当てて・・・
ーぬなっ!-
あかんべーを送ってきた。
ーぬおおっ、嘗めおって!何をぬかしたのだっ!?何が言いたいのだっ!?-
バローニアは怒りに狂い、思わず言い返す。
「小娘!何を言ったのだ。少々魔法が使える位でいい気になるんじゃないっ!」
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「・・・だ、そうだ。・・・ミハル。」
キャミーが無電のキィを叩きながら、呆れた様に知らせた。
「んっふふっ。大体無分別な敵だから引っ掛かるとは思ったけど・・・
こうもあっさり引っ掛かってくると拍子抜けしちゃうなあ。」
苦笑いを浮かべてミハルが頬をかく。
「キャミー、ついでだから無線で相手と話せないかな。言いたい事があるから。」
ミハルがバローニアと話をして再び妨害電波を出されるのを邪魔しようとする。
「オッケ。繋いでみる。」
キャミーが無電を打ちながら回線を繋ぐ。
「いいぞ、ミハル。」
キャミーが相手の無線周波数に合わせて回線を開く。
「うん・・・。こちらフェアリアのMMT-9.
其処に居るロッソアの将軍に話があるの。
聞こえていたら返事して。」
成るべくゆっくりとミハルが呼びかける。
そしてタルトと、キャミーに目配せを送り、タルトには話してる間に近寄れと。
キャミーには早く無電で味方に知らせてくれと合図する。
2人はミハルに頷き返し、任務をこなす。
「フェアリアの中戦車に居る魔法使いよ。
よくも私を馬鹿にしたな。思い知らせてやる。」
一方的に宣告するバローニアに対し、
「ああ、さっきのあかんべぇーね。
あれはあなたと話しがしたかったから。
こうでもしないと話が出来ないと思ったからよ。」
ミハルがゆっくりとバローニアと話す。
なるべく長く話を引き伸ばし、相手の注意を削ぐ為に。
「話だと?何の話しがあると言うのだ?」
バローニアが乗ってくる。
しめしめとほくそ笑んだミハルが尋ねる。
「どうして、その巨大戦車に同化したの?
そんな事をすれば、もう人に戻れはしないのに。
なぜ真総統とか言う人に服しているの?」
「何を言い出すのかと思えば・・・目的を果たす為に決まっておろうが。
そもそも<双璧の魔女>を倒し、フェアリアを手にする筈だったのに。
あの魔法使いマリーベルを使ってな。
それが失敗に終った為に私自身の手で葬ってやったのだ!」
バローニアが自慢げに話す。
ーミコトさんとリインさんを倒した・・・魂を消し去ったと言うの?
ルシファーが魔王を倒したと言うのに?-
ミハルの瞳が<ギガンティス>を睨む。
「それであなたは2人の魔女を倒してから何をする気なの?
このままフェアリアまで攻め込むつもり?それとも引き上げるの?」
「笑止!そもそも私が、この車体と同化した真の理由とは。
闇の者に魂を集めさせるが為。
魔法力の一番強い者の魂を弾に込めるが為だ。
その目的は遂げられたのだ・・・<無>を撒き散らす為の力を得たのだ。」
バローニアの言葉にミハルは耳を疑う。
ー魔法使いの中で一番強い魂?ミコトさんとリインさんの事?
その魂を弾に込めたの?って、それは!?-
「まっまさか・・・その弾って!?」
ミハルの声が震える。
ミハルは嘗て自分がなりかけた<無>への恐怖。
そして、その威力は未だ計り知る事が出来ない悪魔の業。
「そんな事・・・極大魔鋼弾をどうしてロッソアが?」
ミハルの叫びに4人が振り返る。
バローニアは勝ち誇った様に言った。
「どこかの国が不発の弾をゲルドルバに撃ってきてなぁ。
早速コピーさせて貰ったよ。我が国の技術者が・・・シマダがな。」
その名を聞きたくはなかった。
その名を持つ者が闇の者に協力しているとは考えたくもなかった。
「嘘・・・嘘・・・よ。」
ミハルは耳を覆うヘッドフォンを押えて俯いてしまう。
「ああ、そうだ・・・フェアリアの魔法使いの中にもそんな名の娘が居たな。
闇へ堕ちそこなった未熟者の娘が・・・な。」
バローニアがミハルを小馬鹿にして笑う。
ー奴の話になんて載るものか。
私はルシファーに救って貰えたのだから。
こんな闇の者になんて馬鹿にされる謂れはないんだから。-
バローニアの誘いに乗らず、冷静さを保ってミハルが言った。
「その弾を放つのなら阻止するまで。
あなたを倒すまでよ!」
ミハルがキューポラから<ギガンティス>へ指を差した。
近寄って来たMMT-9に向けて放たれる副砲。
その弾幕を受けてしまったミハル達の運命は?
次回 ラストバトル<ギガンティス>戦 Part4
君は生き残る事が出来るのか!?





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