魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act23ラストバトル<ギガンティス>戦Part2
「撃ち方始めっ!」
ミハルが攻撃を命じる。
「先ず副砲を破壊する。敵の左舷に攻撃を絞るから!」
「了解!」
タルトとルーンが復唱する。
「敵、発砲!」
キャミーが警告を発する。
「回避!」
空かさずミハルが指示を下す。
<ダダン ダダーン>
片舷斉射が車体周りに着弾する。
「くっ!被害報告っ!」
「各部異常なしっ!」
ミハルがキューポラのハンドルを握って衝撃に耐え続ける。
<バガン バガン バガンッ!>
敵の砲火は、途絶える事無く着弾を続ける。
ー逃げ回ってばかりでは相手にダメージを与える事なんて出来ない。
どこか・・・奴の弱点はないの?-
レンズ越しに見える敵の車体を隈なく見渡して更に悪い事に気付いた。
ーあっ・・・敵の主砲がこちらに向いてくる。-
ゆっくりとだが巨大な砲塔が俯角を執り、
こちらへ目掛けて旋回を続けている事に気付いた。
「いけないっ、奴は主砲を撃つつもりだ。
副砲の射撃で私達を主砲の軸線に載せるつもりなんだ。」
タルトが副砲の射撃に追われて回避している事に気付いたミハルが悟る。
ー副砲で私達を追い立て主砲の一撃でトドメを差すつもりなんだ・・・そうはさせるものか!-
「タルト!一発位喰らうつもりで奴の懐へ入り込もう。
敵の俯角の下へ潜り込んで、下から攻撃を掛けよう!」
車体が大きい為、敵の副砲も距離を詰めさえすれば、
射角から逃れられると考えたミハルが指示を下す。
「えっ!?でも、そこまで近寄るには距離が有り過ぎます。
副砲といえども、85ミリ弾を喰らってしまえば貫通されかねませんっ!」
躊躇うタルトが忠告する。
「解っているわ。けど、このまま逃げ回っていてもいつかは直撃を喰らってしまう。
それよりも一か八か、敵の死角に入り込む方が勝機があるの。」
ミハルが闘い方を知らせる。
「そうだタルト。このままずっと逃げ切れるとは限らない。
それよりミハルの言った通り、副砲の死角である俯角の効かない処まで近寄った方がいい。
そうすればチャンスもあるだろう。」
キャミーが横の操縦席でハンドルを握るタルトに言った。
「は・・・はいっ!」
頷くタルトに、
「出来る限りの力で正面装甲を守るから。頼んだよタルト。」
魔鋼の力を全て防御に振る事で守り抜こうとするミハルに対して、
「ミハル先輩、それよりも走行力を。
スピードを上げる事は可能ですか?」
ミリアが速力に振る事を進言する。
「そうです車長!
どうせ直撃を受けてしまえば少なからずダメージを受けてしまう事になります。
車重を増やして防御するより、速力を増して逸早く敵に近付く方が得策だと思います。」
ルーンもミリアと同じ様に考える。
「なるほど・・・それもそうね。ありがとう2人共、気付かせてくれて。」
ニッコリと微笑んだミハルが2人に答えて、
「それじゃあ、タルト。
あなたに全てを託したわよ。敵弾を交わしつつ全速で近寄って。
副砲の死角まで潜り込んで!」
ミハルが手を後部エンジンルームに翳して指示を下した。
「はいっ!やってみます。やりますっ!」
タルトがハンドルを握り直して、アクセルを一杯まで踏み込んだ。
______________
「隊長っ!無線が繋がりましたっ!」
ルマが振り返ってリーンに知らせる。
「よしっ、直ちに軍団長に連絡してっ!
敵の巨大戦車が現れて主砲で狙っていると。」
リーンがルマに命じる。
「そして、出来る限りの増援を求めるの。全ての力で奴を倒す為に!」
「はいっ!」
ルマが無線に取り付き命令を伝える。
ーミハル・・・もう少し。今少し待って、必ず助けに行くから。必ず戻るから。-
遥か遠方に見える砲火の閃きを見て、リーンは唇を噛む。
「リーン隊長っ!ドートル軍団長が直接話したいと仰っています!」
ルマがマイクロフォンを指差し、無線に出てくれと合図を送ってきた。
ードートル叔父さんが?-
「ええ、ルマ。解ったわ!」
リーンはヘッドフォンを片手で押えて、マイクロフォンを押した。
ーマーガネット、聴こえているか?
敵はロッソア西方軍司令、バローニア少将が直接乗っている<ギガンティス>級陸上戦艦だ。-
「ドートル叔父さん・・・どうしてそれを?」
無線で答えるリーンに、軍団長が話す。
ー今、ロッソア軍の中から連絡を受けた。
バローニア将軍に反旗を掲げた魔鋼騎士達からな。-
ドートルの返事にリーンが驚く。
「えっ!?ロッソアの魔鋼騎士達が反乱を起こしたの?」
ーそうらしい。
<ギガンティス>を破壊するまで協同戦線を組みたいと連絡してきたのだ。-
リーンの瞳が輝き出す。
「ロッソアの魔鋼騎が一緒に闘ってくれるの?」
ーそうだマーガネット。
<ギガンティス>に乗っているのは狂人バローニア将軍唯一人。
どうやったかは解らないが、あの戦艦に魂を同化させている様だ。
ロッソアの魔鋼騎士達が言っている。-
ドートルの言葉にリーンが眼を見開き、
「魂を同化させた?闇の力だ・・・闇の者となったロッソアの将軍があの中に居るんだ。」
リーンが呟くとドートルが教える。
ーマーガネット・・・ロッソアの魔鋼騎士達が味方に付いた理由・・・。
それは自分達の魂を救ってくれたのが、フェアリアの少女だったからと言っているんだ。
・・・そう、シマダ・ミハル少尉が救ってくれたと言っている。-
「ミハルが!?ロッソアの魔鋼騎士達の魂を救ったですって?」
ーそうらしい。2人の聖魔女が教えてくれたと、言っている。
<双璧の魔女>が救った者の名を教えたと言っているんだ。」
「ミハルっ!ミハルがみんなの魂を救ったのね!」
リーンが喜ぶ。
ミハルが、ミハルの魂が闇を打ち負かした事に。
ーそしてロッソアの魔鋼騎士達が教えてくれた事がある。
<ギガンティス>の主砲弾には、秘密兵器が搭載されていると言う事を。
あの弾は闇を撒き散らす悪魔の弾というのだ。
我が国が発射した不発弾と同じ・・・極大魔鋼弾の性能を有している。-
「なっ!何ですって!?」
リーンが冷や汗を垂らして驚いた。
ロッソアにある訳が無い筈の兵器が、既に装備されていると言う事に。
「そんな弾をどうしてロッソアが?」
ーマーガネット、今はその詮索は後回しだ。
<ギガンティス>を倒さねばならん。
あの主砲弾を撃たせてはならんのだ。
一刻も早くバローニア将軍を倒さなければ、犠牲者は計り知れない程となってしまうぞ。-
ドートルの言う通りだった。
「解ったわドートル叔父さん。
それでは奴を倒す為に戻ります。増援をお願いします。」
リーンの求めに、
「解っておる。
ロッソアと一時休戦してでも、全力でそちらへ向わせる。
何としてでも<ギガンティス>を倒すのだ!
頼むぞリーン・フェアリアル・マーガネット!」
最後はリーンのフルネームを呼んだ。
王女としての聖なる名を。
砲火を交わす2両。
だが、一方的にダメージを喰らうのはMMT-9の方だった。
ミハル達は戦う方法を考える。
それは、キャミーの一言から始まった。
次回 ラストバトル<ギガンティス>戦 Part3
君はたった一両で巨大な敵に歯向かう・・・勝つと信じて。





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