魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act22闇との死闘 Part5
闇が支配する世界。
それは邪悪なる意志の集合体でもあった。
光を持つ者を闇へと貶める為に邪なる者が屯する場。
ーまた・・・この空間へ来たんだ。-
ミハルが周りを見回して思った。
ーこの空間で私は闇へ堕ちた。堕とされてしまった・・・抗いきれずに。
もし闇の中にルシファーが居てくれなかったら、今の私は存在しない。
そして<無>となり多くの人の魂を道連れにしていていただろう。-
ミハルの瞳に映るのは、無惨な姿と成り果てた魔法使いの魂達。
「酷い・・・。」
ポツリと言ったミハルに邪なる者達が近寄る。
「これはこれは・・・。
何と素晴しい魂だ。まるで大天使の様に輝いている。
堕とし甲斐があるぞ。」
その中から一つの黒い魂が言い放った。
「誰?あなたは?」
その黒い魂を睨んで、ミハルが訊く。
「我が名か?
それを知ってどうすると言うのだ娘よ。
お前はもう私の物だ。私がお前の主となったのだ。
さあ、平伏すがいい。苦痛を味わいたくなければな。」
黒い魂は高飛車に告げる。
抗う事を諦めろと。
「なるほど・・・ルシちゃんの言ってた通り、小五月蝿いんだ。」
ミハルが納得した様に頷き、
「私はあなたに屈する気はないから。
闘う為に此処へ来たんだから。
あなたこそこの世界から還ってしまいなさいっ!」
その黒い魂に指を突きつけて言い放った。
途端に、その黒い魂が笑い出す。
「何を言うかと思えば、この私と闘うだと?
この闇の中で抗う事など無意味。
我が闇の中では私に逆らうなど出来はせぬ。」
黒い魂が小馬鹿にしてミハルに言った。
「ならば抗うがいい。たっぷりと痛めつけてその魂を穢してやろう。
その輝きが何時まで持つか見物だ。」
黒い魂から霧の様な触手が飛び出し、ミハルに迫る。
「ぐはははっ、さあ味合わせて貰おうか。
お前の魂を。苦痛に歪むその顔を!」
黒い霧が四方八方からミハルに伸びる。
「言いたい事は、それだけ?」
ミハルの瞳が紅く染まった。
そして。
<バシュッ>
ミハルが手を振り払うと、伸びて来た霧が正に霧散した。
「なっ!何だとぉっ!」
驚いたのは黒い魂だけでは無かった。
「あらら。凄い力だね、ルシちゃん。」
振り払った当の本人、ミハルもびっくりする。
ミハルは自分の手を見ながら、別の者と会話する。
「なっ、何を呟いておるのだ?
お前は一体何者なのだ?」
黒い魂がミハルを睨んだ。
「ふーん、そうなんだルシちゃん。
悪魔って自分の名を呼ばれると相手に対して力が弱まるんだ・・・へぇー。」
ミハルは胸に手を当ててニヤリと笑う。
「おっお前になど、我が名を言い当てる事は無理・・・。」
「ベルゼブブ・・・。」
ミハルが指を差して一言名を呼んだ。
「ぐああっ、なっなぜお前がぁ?」
ベルゼブブを包んでいた霧が薄らぐ。
「なぜって・・・知ってるもん・・・あなたの名はベルゼブブ。
北の魔王と呼ばれているんでしょ。」
ミハルにその名を完全に呼ばれた北の魔王ベルゼブブは、
「なぜだぁっ!こんな小娘ごときに呼び捨てにされねばならんのだっ!」
そう叫んだ時には、もう完全に姿を現していた。
「うわっ、ルシちゃんの言ってた通りだ。小五月蝿そうな・・・ハエ男だ。」
ミハルの眼には、その魔王がハエの面を被った変な男にしか見えなかった。
「これが魔王なの?ルシちゃん・・・やっぱりハエ男だよ・・・どう見ても。」
ミハルがベルゼブブを見て、感想を呟いた。
「ええいっ、そっちこそ小五月蝿い小娘だろうが!
よくも我が名を言い当てたな。
許しがたいっ、お前には永遠の苦しみを与え続けてやる。
<無>になど、させるものか!」
怒り狂う魔王に、
「嫌よ。誰がハエ男の言い成りになんかなるものですか!」
ミハルは身構えて戦闘態勢を執る。
「くっはははっ、小娘!私を侮辱した罪は、その魂で支払って貰うぞっ!」
ベルゼブブが闇の力を行使する。
<ブワアアッ>
闇の中から無数のハエが現れ、ミハルへ襲い掛かる。
「ハエ・・・なの?
だったら手で落とさなくても。」
ミハルも同じく闇の力で何かを取り出す。
「それっ!」
掛け声と共に・・・
<ブシュウウウゥッ>
強力な殺虫剤を噴き付けた。
<ポテ・・・ポテポテッ>
「あ・・・そんなご無体な。」
ベルゼブブの前で全滅したハエが転がる。
「あーはっはっはっ。闇の力はあなただけの物ではないわよ。」
ミハルが指差し、ベルゼブブを蔑む。
「きぃぃぃっ!許さぬぞ小娘っ!」
更に怒り狂うハエ男が、
「ならばもう容赦はせぬ。魂ごと消去ってやる。」
ハエ男が闇の力を発動させる。
「何よ、さっきは永遠に苦しめるとか何とか言っておいて。
今度は一撃で消去るつもりに変更した訳?」
ミハルがハエ男に煽り立てる。
「五月蝿い、五月蝿いっ。もうお前の力なんぞ欲しくはないわっ。
少々復活が遅れるだけの話だからな。
これでも喰らって消し飛んでしまえっ!」
ベルゼブブが大きく振り翳した手の先に、巨大な闇が現れる。
ールシちゃん・・・これはちょっとヤバそう・・・。-
胸の中で満を持している毛玉に呟く。
ーそうか?では真打登場と、行くか。-
毛玉がミハルに告げて、胸から飛び出した。
「えっ!?」
「おっ、お前はっ!?」
ミハルもベルゼブブも驚く。
ミハルの胸から飛び出たのは・・・・。
ミハルの胸の中から現れたのは・・・。
優しき闇の者の姿!
ルシファー登場!!
次回 闇との死闘 Part6
君はその姿に心を震わせる、しかし・・・。





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