魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士Ep4魔鋼騎士Act8 戦場
絶体絶命のマチハの前に一両の車両が接近してくる。
リーンがレンズ越しに、ラミルが見つけた敵を探す。
背の低いその車両を確認するが、
ー 味方の方から来るなんて。
此方を視認しているのに攻撃してこようとしないのか。
それに真っ直ぐ此方に向ってくるなんて・・・まさか?
リーン少尉はキューポラの天蓋を開けて、半身を乗り出し双眼鏡で此方に向って来る車体を観測する。
「あれは!?」
低い車体の荷台で手を振り続けている男。
「マクドナード軍曹!」
リーンの声が車内にも聞こえた。
みんなの顔色がぱっと明るくなる。
「整備班が来てくれたのか。助かった!」
ラミルが心底ほっとした表情で言う。
「これで帰れるぞ。よかったな、おい!」
キャミーがミリアに、親指を立てて喜ぶ。
「はいっ!軍曹の野戦修理術は完璧ですから」
ミリアも整備班に居たから、軍曹の事を信じている。
「ミハル、どう気分は?」
リーンが砲手席のミハルに聞くと砲手席から立ち上がった。
ミハルはゆっくり側面ハッチから出て、
キューポラに半身を出しているリーンを見上げる。
眩しそうに瞳を細めて笑いかけてくると。
「少尉、生き残れましたね。・・・なんとか」
「そうね、この隊での初戦。なんとか・・・ね」
2人はお互いを見て、ほっと息を吐く。
マクドナードが率いてきた野戦力作車がマチハの前に着いた。
「ようっ!皆無事か?怪我はしていないか?」
「あっ、はい。マクドナード軍曹、皆無事です!」
ミハルが空元気に返事したのを聞いて頷くと。
「どうだ、皆と共に生き残れた感想は?」
マクドナードがミハルに悪戯っぽく訊ねてくる。
「はいっ、生き返ったみたいです。・・・いえ、嬉しくて!」
ミハルは、少し照れて笑った。
そうこう話をしている間に整備兵達が損傷箇所を見ていたが、難しい顔でこう言った。
「軍曹、こいつは此処では直せませんぜ。牽引して行きましょう」
整備兵の一人が、軍曹に伝える。
「そうか。
・・・じゃあ車長。
オレ達が引っ張って行きますから、力作車に乗ってください」
マクドナードが、リーンに移乗を勧めたが、
「いいえ、軍曹。
私はこのままマチハに残ります。ここが私の居場所ですから」
リーンは微笑みながら申し出を断った。
それが車長の務めだと言わんばかりに。
「車長が残るなら、砲手の私も残ります」
ミハルが軍曹とリーンを交互に見てそう告げた。
「そうですか。別にいいですよ。
その他の乗員は力作車へ移して下さい。
少しでも軽い方がイイですからね」
マクドナードは、からかい半分そう言って力作車に戻り指揮を始めた。
「ミハル、ありがとう。もし貴女が居なかったら、私達は多分死んでいたと思うの」
「少尉、それは違います。
私が居たからじゃなくて、少尉以下皆の力があったからこそ・・・
私達は生き残れたのです。
私の方こそお礼を言わせて下さい。ありがとうございます!」
「あはは、ミハルはオトナね。・・・ほらっ!」
リーンは右手をミハルに差し出す。
その手をそっと握り返してミハルも笑った。
力作車に牽引されて、後方の味方陣地へ向うマチハ。
その砲塔に腰を掛けて、ミハルは激しかった戦場へ目を向ける。
黒煙がそこらじゅうから上がり、油の燃える匂いが鼻をついた。
遠く離れた所に、敵味方の斯座車両が煙を上げている。
ー 一つ間違っていたら、私達も同じ運命を辿っていたかもしれない・・・
リーンはミハルと同じ様に戦場を見渡し、
「凄い・・光景ね」
一言、ポツリと呟いた。
「ええ。全く・・・」
ミハルも一言だけ返した。
「ああはなりたくは無いわね。まだ・・・」
リーンは見ていられなくなって、目を背けた。
「・・・これからですよ少尉。
私達は、まだまだ闘わなくてはいけないのですから・・・」
ミハルはリーンを見て微笑んだ。
「そうよね。まだまだこれからだよねミハル」
リーンはそんなミハルに頷き返す。
そしてミハルの手が、震えている事に気付いた。
ー 私だけじゃないんだ。
ミハルだって恐かったに違いない。
恐ろしかったに違いない。
自分の手で敵とはいえ、人が乗っている戦車を撃つ事が。
その結果、どうなると言う事を知っているから。
命の大切さを知っているから・・・
リーンは遠く離れていく戦場を振り返って、
もう一度、黒煙を上げて燃える戦車達を見てそう思った。
漸く死地を抜け出せたリーン達。
戦場は遠ざかり、安息を迎えた。
リーンとミハルは師団本部で次なる任務を命じられる。
そして、そこで出会ったのは・・・
次回 Ep4魔鋼騎士Act9 騎士の勲章
君は誰を信じられる?





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