魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act22闇との死闘 Part3
ミハルは動き出した1号車を見詰めて息を吐く。
その車体が進む方向を見て。
「そっか。リーン・・・退いてくれるんだね。良かった・・・。」
離れていく1号車を目にして、ほっと一安心したミハルが、
ーこれが見納めになるかも知れない・・・。-
リーンの姿を瞬きもせず見詰め続ける。
ーリーン、マモル・・・。どうか、無事で。
私に構わず生き延びて。それが私の願いだから。-
ミハルはリーンの姿を飽きもせずに見ていたが、最後に大きく叫んだ。
「リーン!愛しているよ!じゃあねっ!」
決別の言葉を吐き、車内に命じる。
「行こう!戦車前へ!」
タルトに1号車の前へ回り込み、敵との間に割って入るように命じる。
「魔鋼機械発動っ!魔鋼弾装填っ!ミリア、ルーンっ狙いは触手じゃないよ。
あの黒い霧に隠れている本体を撃つんだよ!」
キューポラのレンズ越しに黒い霧の中に居る巨大な車体に照準を合わせる様に命じ、
「攻撃始めっ!魔鋼弾射撃準備、目標っ霧の中に居る車体の副砲塔!」
此方を向いているであろう副砲の各個撃破を目差したミハルが指示する。
「了解!装填よしっ、魔鋼機械始動!」
ミリアが復唱する。
「目標捕捉出来ませんっ!霧に隠れてしまっていますっ!特眼レンズが利きませんっ!」
ルーンが特殊レンズでも車体を識別出来ずに照準が絞れない事をミハルに知らせる。
「そうか!じゃあルーンっ、一発適当に撃ち込んでみて、様子を見よう。」
無駄弾と知りつつもミハルが、射撃を許可した。
「解りました、霧の中心を狙って撃ち込んでみますっ!」
ルーンの指がトリガーに掛かる。
「よしっ、撃てぇっ!」
ミハルの射撃命令でルーンの指がトリガーを引く。
<グオオオンッ>
10センチ魔鋼弾が霧目掛けて放たれた。
ー弾が・・・魔鋼弾が霧の中へ撃ち込まれれば、きっと奴も気付くだろう。
私が魔法使いだと。
そうすれば奴の狙いは私に変わる筈。
リーンやマモルよりも先に私を狙ってくるだろうから。-
リーンとマモルを守る為に、無駄弾と知りつつ放った魔鋼弾が霧の中に着弾する。
<ブワッ>
着弾した所の霧に穴が開く。
ーなるほど・・・弾き返されるにしても霧に穴は開けられるんだ。
だとしたら車体にもダメージが与える事も可能なんだ。
だったら闘える。
それなら破壊する事も出来るんだ。-
ミハルが一縷の希望を持った。
「命中した所が見えました。
ミハル車長!あの霧は単なるスモークみたいな物なのかも知れませんね。
これなら奴にダメージを与えてやる事も出来ますよね!」
ルーンが照準器を睨んだまま呼び掛ける。
「ええ、ルーン。霧の中が見える程、近寄ることが出来れば・・・。
あの副砲さえ壊せれば敵の弱点目掛けて撃ち込める。」
ミハルが闘い方を教える。
「そうですね、ミハル先輩!先ずは副砲を破壊して近寄れるだけ近寄って、
あのキャタピラを壊してやりましょう。
それから重砲の支援を受けて完全に破壊してやるんです!」
ミリアもミハルと同じ考え方を示す。
「そうだねミリア!全ての戦力を使ってでもアイツを倒す。
そして、この戦いを終らせてやるんだ!」
ミリアに答えて、ミハルが頷き、
「さあ!闘いはこれからだよっ!」
ミハルが戦闘の継続を命じる。
その瞳に力を湛えて。
「ミハル少尉!あの黒い触手が此方へ向って伸びて来ますっ!」
タルトが異変に気付いて叫び注意を促す。
「何っ!?」
キャミーがペリスコープを回して、その様子を確認し、
「タルト全力回避しろっ!ミハルっあの触手に捕まるんじゃないぞ!」
後を振り向き、ミハルに警告する。
キューポラのレンズから、その触手を睨んだミハルが交わしきる事が出来ないと思い、
「ルシちゃん・・・どうしようかな・・・私。」
毛玉に自分が魂を奪われた後の事を訊く。
「ミハルよ。
余がそんな事を許すとでも想っているのか?
ミハルの魂は何者に足り共奪わせたりはしない。
もし奪われると言うのなら、余も共に行こう。
余は常にミハルと共に居ると決めたのだから。」
毛玉が現れてミハルに宣言する。
ルシファーの名に賭けて、守るべき者を必ず護ると。
絶対にミハルを守り抜くと。
「うん・・・頼んだよルシ・・・ちゃん。」
ミハルと毛玉が話すのを聴いていたミリアが呼び止める。
「ミハル先輩っ!危険過ぎますっ。
あの触手に捕らえられてしまっては。
<双璧の魔女>でさえ、為す総べなく囚われてしまったというのに。
ここは、逃げましょう。」
ミリアが血相を変えて退却する事を勧める。
「ミハルっ!いくらお前でも相手が悪魔なら話しが違うぞ。
魂を奪われる前に逃げるんだ。」
キャミーも大声でこのまま敵に向うのを止めさせようとするが、
「いいえ、ミリア、キャミー。
このまま立ちはだかって闘うの。
魔鋼弾であの霧に隠されている車両にダメージを与え続けて。私に構わずに。」
ミハルが毛玉と共に2人に話す。
「いいか友よ。
この余がミハルと共にある限り、決して奪わせたりはしない。
必ず護り切ってみせよう。譬え刺し違えたとしても・・・な。」
毛玉が不敵に笑い、二人に知らせる。
ミハルを守る為なら、自らを消滅させる事となっても構わないと。
毛玉はその覚悟を示した。
ミハルを何があっても護り抜くと。
闇が近付く・・・。
次回 闇との死闘 Part4
君は遂に闇の中へ連れ込まれる。友と共に・・・。





夏休みのオトモ企画 検索ページ