魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act21近付く巨悪Part3
ミハルの前に姿を現したその敵の正体は・・・
悪魔だった。
ルシファーに教えられるままミハルはその敵に恐怖を覚える。
「そ・・・そんな事。ここは闇の中ではないのに。
現実の世界だというのに・・・。」
ミハルが毛玉に聞き直す。
「確かに現実世界で魂を直接奪う事など出来ぬ筈だ。
そんな事が出来るのならば悪魔は当の昔に復活している。
そして、この世界は当の昔に<無>と化している筈だ。」
毛玉が黒い霧を見詰めて言った。
「じゃあ・・・どうして魂を直接奪う事が出来ている訳?」
ミハルも毛玉と同じ様に黒い霧を、触手の様な物を見詰めて問い掛ける。
「解らぬ。
だが、現に奴はあの車両に居る魔法使いの魂を今、奪ったぞ。」
毛玉が狙われたM4から黒い霧が抜け出し、
その先端部分に淡く光る物を咥えているのを確認して、ミハルに教えた。
「ああっ!何て事をっ!」
ミハルにも、その淡く光る物が何なのかが解った。
「魔法使いの魂が!人の魂が奪われてゆく!
本当に奴は悪魔なんだ!
この世界に居てはならない者なんだ!」
大きく目を見開いてミハルが叫ぶ。
そのミハルを前にして毛玉が言った。
「ミハルよ。魂を直接喰らう事が出来るのは、高位の悪魔・・・。
余を除いて4鬼の魔王。
その何れかは解らぬが、あの中に居るのは間違いなく魔王クラスの悪魔だ。」
「えっ!?魔王・・・クラスの・・・悪魔?」
毛玉を見るミハルの瞳が恐怖の色に染まる。
「そうだミハル。どうしてなのか解らぬが・・・。
あの中に居るのは間違いなく魔王級の悪魔。
そんな奴と闘う事が出来るのか?
ここは悪い事は言わん。退くのだ、奴に捕まる前に。」
毛玉がミハルに闘うべきでは無いと告げる。
「そ・・・そんな・・・。」
戸惑うミハルに毛玉が更に教える。
「それに見ろ。
捕まらずとも奴は手当たり次第に、
味方の魔法使いを喰らって力を増強している。
あの霧の中に居る者がどんな物なのか解らぬが、
きっとこの車両より強力な物体だろう・・・と思うぞ。」
毛玉がそう教えた後、
「友よ、ここは早く退却するのだ。
奴の触手に囚われる前に。」
タルトに後退する様に命じる。
「少尉っ、どうしますか?」
タルトがミハルに指示を仰ぐ。
「ルシちゃんの言った通りにしよう。
タルト全速離脱。
リーン隊長車まで、後退しますっ!」
タルトはミハルの命を受けてターンし、黒い小山の様な物から離脱を図る。
「キャミー!リーンに報告してっ。
私達が見た物は怪物。
敵も味方も無く、人類そのものの敵。
それが迫って来ているって!」
「お、おいっミハル。そんな報告でいいのかよ?」
キャミーが驚いて訊き返すと、
「いいの!あっちには<双璧の魔女>が居るんだから。
あの2人なら何か闘える術を知っていると思うの。」
ミハルが毛玉を手に載せてキャミーに教える。
<双璧の魔女>なら何とか食い止める手段を持っていると思って。
「何ですって?
ミハルがそんな事を知らせて来たの?」
リーンがルマに聞き直す。
「は・・・はい。ミハル姉からはそう伝えてくれと打電されて来たのですが・・・。
どう言う事なのかは、解りませんが。」
ルマが小首を傾げて、無電欄を差し出す。
マモルがそれを取り次ぎ様、
「リイン。私だミコトだ。話しがある。」
ミコトがマモルに代わって話し掛ける。
「うん?ミコト・・・あの娘が知らせて来た敵についてなの?」
リーンもリインに代わられた。
「ああ。ミハルが知らせて来た敵の事だ。
どうやらとんでもない奴が現れた様だぞ。」
「とんでもない奴?・・・それは?」
リインの質問に真顔でミコトが答えた。
「魔王・・・だ。」
「えっ!?それは・・・確かなの?」
リインの瞳が曇る。
「ああ、リイン。
ルキフェルなんか目じゃない程の力を持った大悪魔。
魔王・・・それも相当ヤバイ類の奴のようだな。」
ミコトがその瞳に力を込めてリインに知らせる。
自分達の力を持ってしても太刀打ち出来るかどうか、解らない程の大悪魔だと。
「そんな奴がどうしてロッソア軍に?」
リインが曇らせた瞳のまま、ミコトに訊く。
「どうしてかは解らないが、今ミハルが教えている事と照らし合わせると、
その魔王がロッソアに組しているのは間違いない。
つまり、その魔王を倒さねばフェアリアに勝利はないと言う事だ。」
ミコトがリインに告げる。
近付く魔王を倒さなければフェアリアは、この戦いで負けると。
強いてはこの戦争にも勝利する事は出来ないと言う事を。
「では・・・闘って倒すしかないのねミコト。」
「そうだ・・・だが、私達で倒せるとは言い切れん。
心して掛からねばならんなリイン。」
「ええミコト。ここが正念場ね。
そして奴を倒せればフェアリアを守る事が出来る。
私達の1000年の願いは果されるのね。」
「ああ・・・その時は・・・リイン。
一緒に行こう天界へと。
魂の安息の地、天国へ。」
「うん・・・やっと願いが叶うと言うのならば。」
ミコトとリインは闘う決意を固める。
相手が例え魔王と解っていても。
<双璧の魔女>の2人は覚悟を決める。
敵わずとも闘う事を。
その時ミハルと毛玉は・・・。
次回 近付く巨悪 Part4
君達は長年の宿命を遂げられると思ったのか?





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