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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士Ep4魔鋼騎士Act7 戦場

挿絵(By みてみん)



魔鋼騎マチハは、敵重戦車KG-1との決戦を挑む。

その重戦車の前面装甲に光る紋章にミハルは見覚えがあった・・・・。

砲塔前盾を削り取った砲弾は、あきらかに75ミリ以上の衝撃があった。


ー  もし、魔鋼状態でなければ、一撃で撃破されていただろう。

   あの重戦車も魔鋼騎なんだ・・・


リーンの額に汗が滲む。


「ミハル!アイツと闘うわよっ!全力フルパワーで!」


「はい!少尉っ!!」


リーンとミハルは、解っていた。

あのKGを倒さなければ仲間達が、いずれ倒されてしまう事を。

重戦車の魔鋼騎によって、全滅してしまうのを。


ミハルの瞳に、あの悪夢に出てくる重戦車の姿が思い起こされる。


挿絵(By みてみん)



ー  あの時、私達を全滅に追いやった重戦車。

   なすすべなく撃破されていった仲間達。

   今、私は再びあの重戦車の前に居る。

   ・・・でも、今度は違う。

   今度は対抗するすべを手に入れた。

   私は闘う、私自身の悪夢を消し去る為にも・・・


照準器に写るKG-1の前面装甲に、あの日見たものと同じ紋章が目に入った。


「少尉!あのKG-1を倒して、味方を救いましょう。

 あのKG-1を倒して帰りましょう。私達の仲間の元へ!」


ミハルの言葉にキャミーも、ラミルもミリアも、そしてリーンも頷く。


「そうね。絶対勝って、帰りましょう。私達の仲間の所へと!」


リーンも顎をぐっと引き、キューポラのレンズに映るKG-1重戦車を睨んで言った。


「ラミル!長距離は奴の方が有利だわ。距離を詰めてっ!機動戦を挑む位に!」


「了ー解!」


ラミルがアクセルを一杯まで踏み込む。


猛然と砂煙を上げて、マチハは進む。

KG-1も重戦車とは思えない機動で、接近戦を嫌って距離を取ろうと向きを変えて進む。


KG-1が走行射撃を開始する。

ラミルが発砲されたのを知ると微妙に速度や進路を変える為、砲弾は一発たりとも当たらなかった。


「いいぞっ!ラミルさんその調子で。距離1000メートル!」


キャミーがペリスコープを動かして捕捉を続ける。

ミハルは急機動を続ける車体に合せて砲塔を旋回させ続ける。


ー  奴が焦って、停止射撃する所を狙うしかない。

   今、撃っても当たりっこ無いし、

   当たっても跳弾してしまうだけだろうから・・・


ミハルがその時を、じっと耐えて待った。


「ミハルっ!距離800メートル」


ミハルが一度も撃ち返さないので、キャミーが焦って急かして来る。


「まだ・・・まだです」


ミハルが自分に言い聞かせる様に言った。


  ((ガッ))


車体の何処かに至近弾が擦れる。


「くっ!まだかミハル。もう避けれないぞ!」


ラミルも操縦しつつ、ミハルに叫ぶ。


「ラミルさん。このまま接近してください。

 私が停車を命じたら急停止して。一発で勝負を決めますから!」


「おっ、おいっ!大丈夫かよ!?」


ミハルはみんなとの約束と絆を信じて・・・決意を胸に秘めた。


「信じて下さい。次の一撃で切り開いて見せますから」


己の陰我と退路を切り開く為に瞳の蒼き光を輝かせて、ミハルは全てを次の一撃に賭けた。


「ミハル。私達も一緒だからね。次の一発に全てを賭けよう!」


キャミーがミハルを信じて笑い掛けた。


「私も、先輩を信じますっ!」


ミリアも砲手席のミハルに力を与える。


「任せておけ!どんなタイミングで合せてやるさ!」


ラミルは前を見ながら、親指を立ててミハルに同意した。


「ふふっ、みんなミハルを信じてるから・・・皆の力で打ち破ろう。生き残る為に!」


リーンの言葉に全員が答える。


「はいっ!」


ラミルは突撃する、悪魔の如く立ちはだかる重戦車へ。

キャミーは監視する、重戦車と周りに他の敵が居ないかを。

ミリアは構える、次の1発の為に。

リーンは強く祈る、敵を打ち破る力を放つ為に。


そして、ミハルは想う。

数多あまたの戦友との約束を。


ー  みんな、私に力を貸して。

   私の陰我を打ち破る為に。

   みんなを護る為に。そして、生き残る為に!



照準器の中で敵重戦車KG-1の紋章が強く輝く。


これ以上接近されては側面か後方を取られると考えたのか、

KG-1は足を止めて一撃で勝負を決めようとする。


ー  今だ!この一撃で全てを終わらせてみせる!


「ラミルさん。右反転急停止っ!」


挿絵(By みてみん)



ミハルの叫びに左転輪のギアを抜いて、急角度の方向転換をするラミル。


「みんな!いくよっ、力を貸してっ!!」


ミハルが照準器にKG-1の正面装甲を捕えてトリガーに指を掛ける。

リーンもミリアもキャミーもラミルも、想いは同じ。


「力をっ!」


光が車内を車体を満たし、蒼き聖なる輝きが紋章と共に放たれる。

ミハルの指が魔鋼の力と共にトリガーを絞った。


 ((ズグオオオォム))


蒼き輝きの紋章と共に、砲弾が放たれた。

敵KG-1も、此方に向って発砲する。


両方の砲弾がクロスして、飛び交わした。

ミハルの放った一撃はKG-1の正面装甲を喰い破り、

砲塔バスケット内の予備砲弾をも撃ち抜いた。


 ((ガッ!グオオォンッ))


淡い紫の光と共に、砲塔を天に吹き飛ばされてKG-1は撃破された。


あの魔鋼騎の紋章と共に。


KG-1の撃った一撃はミハルが急反転停止を命じた為、

照準が狂い僅かに狙いがそれて・・・

 

 ((ガッ!ガーーンッ))


左側面後部に命中した。


「ぐっ、何処をやられたのかしら?」


リーンが衝撃でおでこをキューポラでぶつけて一瞬気を失いかけたが、

車内の様子を見て誰も怪我人が居ない事を確認して口に出す。


「車内は異常有りません。恐らく左舷の側面です」


ミリアが周りを見て報告する。


「どうやらその様ね。他に被害は?」


リーンは少しほっとした表情で言って、ミハルに視線を向けた。

蒼き魔法衣を纏ったミハルに。


ー  ミハル・・・貴女の戦友達の仇を討てたわね。

   解っていたわよ。

   あのKG-1が、あなたの部隊を壊滅させたのでしょ。

   これであなたの呪縛が解けたことを願うわ・・・


ミハルは流れ落ちる涙を拭こうともせず、肩を震わせながら泣いていた。


ー  みんな、私やったよ。

   みんなの仇を討つ事が出来たよ。

   私はあの悪夢から解き放たれたんだよ・・・


ミハルの思考を遮る様にラミルが叫ぶ。


「車長!左舷駆動状況がおかしいです。敵弾によってどこかがやられたみたいです!」


「何ですって!此処から脱出するまで保つかしら?」


リーンが血相を変えて訊くと、


「それは・・・やれるだけやってみますが・・・」


ラミルが苦悶の表情を浮べて操作に専念する。


「各員、見張りを厳にして。

 今、敵と出会ったら、魔鋼騎状態でもどうなるか解らないわ」


「敵重戦車撃破後、敵部隊は後方に留まっています」


キャミーの報告に、


「第1連隊と交戦中の部隊は・・・どう?」


「はい。双方引き下がって重砲の撃ち合いになっています!」


ミリアが装填手ハッチを開けて観察を続ける。


「ふうっ。取敢えずは、安心みたいね。

 でも、何処から敵が現れるか解らないから注意を怠らない様にしないとね」


リーンがキューポラから外を見ながら言う。


「リーン少尉。

 あの、そろそろ魔鋼状態を解除しても宜しいでしょうか?

 ・・・何故か疲れが酷くて。

 その、力がはいらなくなってきてしまって・・・」


ミハルの髪が、もう碧くなくなり何時もの黒髪に戻っている。

瞳の色だけが碧く輝いている状態だった。


ー  そうか。

   全力を使って魔法力が底を衝きそうなんだわ。

   ・・・もうミハルを休ませてあげないといけない・・・


「うん、ミハル。

 あなたは良くやってくれたわ。

 少し休みなさい。私だけでも魔鋼の力を使ってみるから」


「すみません。そうさせて頂きます」


そう言ったミハルは、砲手席に座り込んで荒い息を吐く。

と、同時にミハルの姿が見慣れた戦車服へと戻った。


挿絵(By みてみん)



ーあらあら。よっぽど疲れていたのね。無理も無いけど・・・


リーンはそんなミハルを見て微笑んだ。


  ((ガクンッ))


ミハルの魔鋼力が無くなった途端に、車体が元のマチハの姿へ戻る。

リーンの力だけではレベル4の姿を維持出来なかったのだ。

元へ戻ると先程まで何とか動いていた駆動系が、いきなり停止してしまった。


「車長!左舷駆動系故障!動きませんっ!!」


ラミルの切迫した声が響いた。


「私一人の能力では、どうする事も出来ないの?」


リーンは悔しそうに唇を噛む。


「こんな所を敵に見つかったら、軽戦車でさえカモにされちまうぞ」


キャミーが周りを観測しながら悔しがる。


駆動系を何とか稼働させようとしていたラミルが、

ふとバイザー越しに稜線を見て叫んだ。


「しまった!敵だっ!左舷前方から近付くっ!」


車内に緊張が走る・・・



ミハルの部隊を壊滅させたKG-1重戦車を、鹹くも撃破したマチハ。

自らも行動不能となったマチハに近付く車両が。

絶対絶命なのか・・・。

次回 戦場

Act8

君は生き残る事が出来るか?

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