魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act18戦場・・・後編
「指揮官より命令!
<我等反転し、味方本隊へ敵を誘導す。これより敵との決戦を挑む。各車両の健闘を祈る>
以上です!」
アルムが命令電文を読む。
「いよいよね。みんな、気を引き締めて掛かるわよ。」
ミハルの気合に、全員が頷く。
敵の中戦車隊は、脇目も振らず突っ込んで来る。
その先鋒は・・・。
「敵M4型、紋章を光らせています。
魔鋼騎のようです。その数、約30両!」
タルトが目ざとく敵の情報を報告する。
「ミリア、敵もここが正念場と踏んで、トッテオキの魔鋼騎を投入してきたよ。」
ミハルの声にミリアは眦を決して、
「こちらも魔鋼状態へ移りますか?」
砲尾のボタンを確認しながら命令を待っている。
「いいえ、まだその時ではない。
相手が中戦車なら、この砲でも闘える。
徹甲弾の用意をしておいて。」
「了解!」
ミリアが88ミリ砲弾を取り出しながら、復唱する。
彼我の距離はまだ5kmもあった。
ー彼等の砲ではまだ射程距離に入っていない。
アウトレンジするには、今がチャンスだけど。-
ミハルが指揮官車に視線を向けて考えていると、
「指揮官車から命令。
<重戦車隊並びに第97中隊、攻撃せよ。一両でも多く決戦前に減らすべし。>
以上です!」
アルムの復唱に応えて、ミハルが命じる。
「戦闘!対戦車戦っ、距離4500。
敵速40k、動標的につき15シュトリッヒ前方を狙え。
徹甲弾、目標敵M4型。
先頭を近付く一番車。攻撃始めっ!」
「了解!目標敵M4型一番車、攻撃始めます!」
ミハルの指示にルーンが射撃諸元を入れ、
「目標捕捉っ、射撃準備よしっ!」
敵魔鋼騎M4へ砲を向ける。
「よしっ、撃ち方始めっ!撃てっ!」
ミハルの射撃命令に答え、
「撃ちぃー方っ、始めっ!撃てぇっ!」
<グオオオムッ>
ルーンの指がトリガーを引き、弾が飛ぶ。
今次戦争最大の決戦の幕を、MMT-9の砲弾が開けた。
<ドグワッ>
ルーンの撃った弾が、敵一番車の左舷転輪を吹飛ばして斯座させた。
「命中!一番車撃破っ!」
ミハルの目がM4型戦車の斯座を捉える。
「いいわよルーン!初弾命中っ!
次の目標はその左側に居る同じくM4型。続けて撃て!」
ミハルの命令でミリアが弾を込め、ルーンが斯座した車両の左側に居る目標に的を絞る。
「撃てぇっ!」
<グオオオムッ>
狙った車体に弾が向かう。
命中。
だが・・・。
「弾かれた・・・だと?88ミリ砲弾だぞ?」
タルトの声を聞く前に、跳弾の閃光を見たミハルが覚悟を決めていた。
「ミリア、そろそろ必要になるわね。」
ミハルの言葉に頷くミリアが、
「センパイ・・・いつでも・・・用意宜し。」
眦を決して答えた。
「車長っ!敵中戦車隊から紫色の光が!
前面を進む約30両!魔鋼状態へ突入!」
タルトの声が車両に響く。
「M4型魔鋼騎が・・・その数30両。
私達とリーンの1号車で相手をするしかなさそうね。」
ミハルが右手を突き出しながらミリアに言う。
「はい。数では圧倒されそうですね、でも・・・退けませんよね。<光と闇を抱く娘>なら。」
ミリアが少しだけ微笑んだ。
「そうだねミリア。ここで退いたら、今迄の苦労が無駄になっちゃうもの・・・ね。」
ミハルの瞳が紅く輝く。
「闘いの時か?友よ。ミハルよ。」
毛玉が覚悟を求める。
胸の中から現れた毛玉に、
「そう・・・ルシちゃん。
私達の国を守る為、私達の願いを果たす為。闘いの時が来たの。」
ミハルが毛玉に告げる。
「そうか。では、共に求めるとしよう。
友の願いを護る為。ミハルを護る為に、余はそなた等と共に闘おう。」
毛玉がミハルに向き直って、
「求めるのか、ミハル。力を・・・。」
紅き瞳の魔法少女に尋ねる。
「ルシちゃん、この闘いが終れば・・・。
この闘いで勝てばフェアリアは平和を取り戻す事が出来ると信じているの。
だから私は全力で闘う。だから私は力を求めるの。」
ミハルは毛玉に求める。
「光と闇の力を。
ルシちゃん、一緒に闘ってくれるかな。この魔鋼騎士ミハルと共に。」
ミハルの求めに毛玉が微笑む。
「他ならぬ、そなたの求め。
そして余が欲する願いの為、共に闘う事を約束した筈だ。
今更拒む事など有り得ない。」
そう告げた毛玉がミハルの胸に飛び込み、
「さあ!求めよ力を。
そなたの光と余の闇を抱き、放つがいい。そなたの真の力を。」
毛玉がミハルに同化する。
「ミリア、魔鋼機械発動!魔鋼騎戦用意!」
ミハルが車内に響く位の声で命じる。
「了解!魔鋼機械始動っ!」
<ブオンッ>
車内が揺らぐ。
車体が変わる。
「みんな!闘うよ。そして勝とう!」
ミハルの身体から金色の光が溢れる。
「車長!」
皆が見詰めるミハルの顔には。
「先輩!金色の瞳・・・<光と闇を抱く娘>。」
ミリアが見上げるその瞳は、紅から金色へと変わっていた。
「全力で闘うって決めたから。
全ての力を出し切って勝つと願うから。
そう・・・これが私の闘う姿。」
薄く輝くその身体は、金色の光を纏った騎士の姿。
「ふっ・・・うふふっ。先輩がその覚悟ならば、何も恐くはない。何も迷う事などない。
私達は黄金騎士の元で闘う事が出来るのだから。」
ミリアが笑い、そして握った手を差し伸ばして、
「魔鋼騎士と共にあらん事を!」
天に向かって突き出した。
「魔鋼騎士と共にあらん事をっ!」
タルト、ルーン、アルムが叫ぶ。歓喜の声で。
「いくよっみんな!
敵を倒してこのフェアリアを護り抜こうっ!」
「はいっ!」
4人は声と共に手を差し伸ばし、ミハルの力を受け取る様に、その手を自分達の胸に翳す。
「よしっ、これより敵魔鋼騎隊へ突撃する。
対戦車戦闘っ、魔鋼弾連続射撃!戦闘始めっ!」
ミハルの力で車体が変わり、スピードが増している。
「敵の中央へ突入っ!格闘戦用意っ!」
ミハルが一両で突入を図るのを見て、
「あんのーっ馬鹿娘。
私達が居る事を忘れているんじゃないの?」
そう言ったリーンに、
「そう言う隊長も無鉄砲な事は変わりがありませんよ。」
マモルが笑ってリーンに言い返した。
「むう。私はミハル程、無茶振りはしまいわよ。」
「そうですかぁ?では何故我々2両だけで突撃しているのですかねえ。」
ラミルが笑って前方を走る2号車を見て言った。
「それはミハルが勝手に突っ込むからよ。」
リーンがあくまで違うと言うが。
「あれ?2号車が突撃を図るのと我々が突入するのと・・・同時だったような。」
ルマがニヤリと笑う。
「あーっ、もうっ。面倒臭いっ!
そうよっ!私とミハルは一心同体なのっ。
2人共、無鉄砲な馬鹿娘ですよ!」
リーンが逆ギレして喚き、
「ミハルと共に、このフェアリアを護るのが私達の願い。
それが私達の約束なのだから。
みんなっ!勝つわよっ!」
リーンの求めに全員が頷き、
「了解!隊長っ!!」
右手を突き上げて答えた。
闘いは始まる。
何れが勝つのか負けるのか。
それは生き残りを賭けた戦争の中での一幕に過ぎなかった。
いよいよ最後の戦いが始まるのです。
これから始まる闘いでミハルは何を想い、感じるのか?
さあ!戦闘開始!
次回 戦端
君は生き残る事が出来るか!?





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