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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
302/632

魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act17温泉大作戦!? 前編

挿絵(By みてみん)


闘いに心が病んだミハルが呟く。


「もう・・・戦場も・・・飽きたな。」


自らの心が闇に沈むのを感じていた・・・。

「参謀長、戦線はどうなっていますか?」


政務官が訊く。


「今、陸軍はロッソアとの国境150キロの処で対峙中です。

 現在我が第1軍と2軍が交戦中です・・・が、

 敵もしぶとく応戦しており、予断は許さないかと。」


陸軍総参謀長が、カスターとユーリに答えた。


「海軍は通商の確保に成功。

 また、ヤポンから貸与された駆逐艦により、海戦を展開。

 敵艦隊を撃滅する事にも成功。

 敵重巡4隻、軽巡2隻駆逐艦6隻を撃沈し、制海権を掌握。」


海軍長官が答えると、


「ヤポンから貸与されたとは言うが、その乗員の殆どが彼の国の人間です。

 我々の艦とは言い難いでしょう、長官。

 私からもヤポンにお礼を贈っておきましょう。」


ユーリが海軍長官に釘を差した。


「それにしても、これだけの戦果を収められたのは我が国が強いからと言う訳ではありません。

 他国の援助がなければ到底成し遂げられなかった事です。

 感謝せねばなりません。」


そう言ったユーリが、カスターに向って、


「そして一番の問題はロッソア皇帝が在任中に、停戦を発効出来るかどうかと言う事です。」


ユーリが言うのは、この戦争の終末点。


「如何にも皇女の仰られるとおり、外務官、どうなのですか?」


陸軍参謀長が、停戦交渉を行っている外務官に尋ねる。


「今現在の処、何の進展もございません。

 帝国側は未だに何の返事も返してきません。」


外務官の返事にカスターが問う。


「それはおかしい。帝国側は我々と戦い、またその一方で内乱を鎮圧しようとしている。

 だが、戦争とは片手間に出来るものではないものだ。」

「その内乱の規模が拡大している為に、

 我々を攻撃していた軍を引き上げさせているというのに未だ、戦争を止めないというのですか?」


ユーリも外務官に質す。


「その件につきましても、未だ返答がございません。

 また、第3国を経由しても皇帝は返事を返さないどころか、

 内乱も戦争も勝つと豪語している模様です。」


外務官の返事にユーリとカスターは互いに顔を見合わせて、


「その自信は一体どこからくるのでしょう?

 何か特別な理由がなければ、そんな強気になれる筈が無いというのに・・・。」


ユーリが考えながら小首を捻る。


「早く、その訳を調べなくては。

 その訳次第では、停戦も出来ず帝国政府が内乱で崩壊してしまう恐れもあります。

 そうなれば、戦争終結どころの話ではありませんから。」


カスターがロッソア皇帝の自信が如何なるものかを調べさせる。


「外務官、そしてここに集まった方々にお願いします。

 帝国側が如何なる理由で停戦に応じないのか、至急調べて貰いたい。

 その理由次第で我々の終戦提案が変わります。

 何としても戦争を終える為に手を尽くしていただきたい。」


カスターが頭を下げ、会議に集まった者達に頼んだ。




_____________



<ガッ>


装甲に穴が開く。


<グッワアーーンッ>


その戦車はたちどころに爆発炎上する。


「次!目標、左舷10時の方向。M4型!徹甲弾。射撃始めっ!」


ミハルの命令が飛ぶ。


「装填よしっ!」


ミリアが88ミリ徹甲弾を込める。


「照準よしっ、射撃準備よしっ!」


ルーンがトリガーに指を掛ける。


「よしっ、撃てぇっ!」


<チキッ>

<グワアアァンッ>


ルーンの指がトリガーを引き絞り、88ミリ砲弾が目標へと飛ぶ。


<グワアンッ>


数十両の戦車が斯座する中、残っていた一両も撃破された。


「攻撃終了。周りに敵影なし。

 戦闘を終えるわ、合戦準備用具納め。」


リーンの命令で最後の一両を撃破したマモルが、


「了解、戦闘を終えます。各員用具納め。」


命令を復唱し、自らも照準装置に安全装置を掛けた。


「フーッ、ラミル。今日は何両撃破出来たの?」


リーンが戦果確認の為に集計を取っているラミルに訊く。


「重戦車2両、中戦車6両・・・8両って処ですか。」


ラミルが即答する。


「うん・・・間違いないわね。ルマ、2号車にも訊いてくれる?」

「あ、はい。」


ルマが隊内無線でアルムに呼びかけた。


「ミハル車長!1号車から戦果報告を求められています。」


アルムがキューポラのミハルに返答を求める。


「・・・戦果報告ねえ。周りを見れば解ると思うけど・・・。

   ミリア、代わりに答えて。」

「えっ?あっはい。」


ミリアに代答を命じ、ミハルはキューポラから外へ出た。



戦場を見渡すと、野原一面に薄く積もっている雪の中で、

黒々と煙を吐き出す車両を見て、


ーこの中に一体何人の死者が居るのだろう。

 私は変わってしまった。

 昔はあんなに砲を撃つ事が恐かったというのに。

 あんなに嫌だったのに。-


味方戦車隊中で、ミハルは一人車体の上に立って虚しく撃破された敵部隊を見てそう感じていた。


ーいつかは・・・同じ運命を辿る事になるかもしれない・・・

 そう想い続けてきた。そう怯えてきた。

 その感情すらも・・・今は無くなってしまっている。-


ミハルは一人、キューポラの前に立って戦場を眺めてポツリと呟いた。


「もう・・・戦場も・・・飽きたな。」

「そう思えてしまう事は、先輩も戦争に慣れてしまわれたって事ですね。」


不意にミリアが声を掛けて来た。

その声に振り向かず、ミハルが話す。


「いつからだろう・・・私。

 こんなになってしまったのは。」

「さあ?私も解りません。

 私も先輩と同じなんです。白兵戦でSマインを平気で撃てるのですから。」


その答えに、ミハルはミリアに振り返る。


「いつの日にか・・・戻れるのかな?私達。」


ミハルがミリアに質問する。


「いいえ、先輩。

 私達はもう戻る事は出来ないでしょう。

 この記憶が残っている限りは。」


ミリアの答えに頷くミハルは想う。


ーそう・・・死ぬまで消せない、死んでも消えない。

 魂が浄化されるまで、ずっと背負っていかなければならない。-


「センパイ・・・後退命令です。補給に戻りましょう。」


ミハルの思考を遮る様にミリアが言った。

ふっとため息を吐いてミリアに答える。


「了解。では、戻るとしましょうか、人の心に・・・。」


そう答えたミハルを見上げてミリアは頷いた。





「2号車車長っ!お前の処の無線手を借りるぞ!」


陣地へ戻ったミハルにキャミーが言い寄る。


「えっ?アルムを?なぜ?」


ミハルが首を傾げると、


「なんでじゃない。無線手の先輩として教える事があるからだ。」

「無線手としての?」


ミハルが聞き返す。


「そう!ミハルは砲手あがりだから解ってないかも知れないが、

 私には直ぐに解った。

 お前の処に居る無線手は調整が甘いんだ。

 そこを教えておかないといけないと思っただけだ。」


キャミーはそう言うと、


「おい。2号車の無線手。ちょっと付き合え。」


アルムにそう命じると、そそくさと車内へ入ってしまった。


「相変わらず口が悪いですけど、

 キャミーさんは心から私たちの事を気に掛けてくれているんですよね。」


ミリアが笑ってキャミーを見送る。


「あはは。少々お節介な処も変わっちゃいないよね。」


ミハルも笑ってアルムに教育してくれるキャミーを見送る。


「先パイ・・・キャミーさんは、本当は私達と一緒に乗りたいんですよね。」

「うん・・・そうだと思う。」


ミリアの言葉に頷くミハル。


「だったら、大尉に乗員交替を願い出たらどうですか?」

「駄目よ。そんな事。」


ミハルが強い口調で拒否する。


「?なぜですか?」


少し驚いたミリアが訊き返す。


「キャミーさんには少しでも危ない目にあって欲しくないから。

 バスクッチ大尉に誓ったの・・・キャミーを守るからって。

 戦争を終えるまでキャミーの事を守るって・・・。

 だからキャミーには後方に居て貰いたいの。」


ミハルが拳を握り締めてミリアに答えた。


「そうですか・・・そうですよね。」


ミリアも納得して2号車に入っているキャミーを想った。



「ミハル少尉!先任!大尉がお呼びです。」


タルトが2人を呼んだ。


「ああ、直ぐに行く。」


ミリアがキャミーへの想いを断ち切って、ミハルを促す。


「さて。今度はどんな作戦を命じられます事やら。」


肩を竦めて、おどけてみせるミリアに、


「ハハハ。ホント・・・だね。」


笑って歩き出した。


______________



「ミハル!ミリア!大変よっ。」


笑いながらリーンが手招きする。


ーうっ・・・リーンの目が笑っていない。これは何かあるな。-


ミハルが気付いた通り、


「この作戦は絶対、成し遂げなければならない。

 絶対勝って奪い返さなくてはならないの!」


リーンが語気を荒げて2人に話す。

ミハルとミリアは互いに顔を見詰め合って、ため息を漏らす。


「はあ。で・・・どこを奪還するのですか?」


ため息混ざりにミハルが尋ねる。


「にひっ!それがねミハル。

 ここより北東80キロの海辺の街ミタア。」


どこか嬉しそうなリーンが教えると、


「あっ、ミタアですか!?あの温泉街の?」


ミリアが直ぐに訊き直す。


「? 温泉街・・・?」


ミハルが2人に小首を傾げて訊く。


「そうよミハル。そこに居ると思われる敵に降伏を呼びかけて、街を取り戻すの。

 出来るだけ無傷で取り戻して・・・温泉に入るの!」

「は あ っ ?」


リーンの言葉に2人が口を揃えて呆れる。


「あら?気に入らないの?」


リーンが2人に聞き咎めると、


「いや・・・あの。作戦目的とリーン大尉の希望がごっちゃになっているような。」


ミハルは苦笑いしながら答える。


「ふふふっ。作戦目的は街の解放よ。

 その目的の結果、温泉に浸かれるのは単なる役得。」


リーンが言い切って断言した。


「あはあは。そうまで言い切られると返す言葉もないですね。」


ミリアも苦笑いして目を輝かせるリーンを見た。


「闘い詰めの身体を癒すのも必要よ、ねえ。

 ミリア・・・そうは想わない?」


<キラーン>


リーンの言葉にミリアの目が光る。

そして、リーンと共にミリアはミハルを見て、ニヤリと笑う。


「えっ?なっ何?私がどうかしたの?」


2人の視線に仰け反って、ミハルが訊く。


「リーン?ミリア?何か身の危険を感じるんだけど?」


仰け反ったままミハルが二人に訊くと、妖しい瞳をした2人が言った。


「リーン隊長!この作戦は絶対成功させねばなりませんね!」

「そうよミリアっ!絶対街を取り戻さねばならないのよっ!」


目を輝かせて言う2人に、


「あ・・・あの。そこまで力一杯叫ばなくても。」


ミハルはその気迫に押されて戸惑った。

命令を受けた中隊が向かうのは、<ミタア>。

そこはフェアリア髄一の温泉街がある処。


次回 温泉大作戦!?中編


君は心を癒す湯に浸かる。

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