魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士Ep4魔鋼騎士Act6 戦場
遂に魔鋼状態で闘いを挑む、第97小隊。
彼女達の真の戦いが、今始まる・・・
リーンは胸元からペンダントを出して、握り締める。
「はいっ!車長っ!!私も共に闘います。皆と共にっ!!」
ミハルは腕のブレスレットを掲げて、リーンに応えた。
砲塔側面に描かれた<双璧の魔女>の紋章が蒼く淡く光を放つ。
砲身が長く伸び、その威力を増大させる。
「ミハル!暴走ぎりぎりまで行くわよ。魔法力を上げてっ!!」
リーンは、更にペンダントを強く握り締める。
「はい、リーン少尉っ!」
ミハルも願う。
強くなりたい。
皆を護る力となりたいと。
紋章の輝きが車体を覆う。
車内にも光が満ち、輝きが全ての装置を換えていく。
車体が大きく変化を始めた。
蒼き光と共に・・・
「あれは、マチハの光?
蒼き聖なる輝きは、リーン少尉とミハルが共に魔鋼の力を使っている証・・・」
後方陣地で力作車の荷台から戦場を眺めているマクドナード軍曹が、天に昇る青い輝きを見て思った。
「2人が全力で闘っている・・・無事に還って来い。
決して諦めるな。必ず還って来い!」
マクドナード軍曹は彼女達の無事を祈った。
「おいっ!お前達っ、オレ達も迎えにいくぞっ!」
マクドナードは、部下の整備士に命令を下す。
共に闘う・・・その為に。
蒼き輝きの中で・・・変化が終わった。
その姿は最早MMT-3、3号J型を原型とした試作車両の面影は微塵も無い。
分厚い装甲と、長大な砲を備えた新たな車両となっていた。
「これが・・・レベル4。
これが魔鋼の力・・・これが私達の闘う真の姿」
リーン少尉はペンダントを握り締め、ミハルを見る。
ミハルの髪が碧く染まり、風もないのに靡いている。
蒼い不思議な衣装を身に纏い・・・
「ミハル?」
その声にミハルはキューポラのリーンを振り仰ぐ。
別人となったかのような姿、髪の色。
そして決意を漲らせた蒼き瞳で。
「大丈夫です、少尉。
さあ、行きましょう。私達の進むべき道へと!」
碧き瞳は、何の迷いも無く澄み切っている。
碧い髪を靡かせて、リーンに微笑みかけている。
ー これが・・・ミハルの魔法力?
この姿の意味する事とは?
いつか見た事がある・・・ミユキさんの姿と同じ・・・
高位の魔砲使い・・・戦士の魔法衣?
リーンの眼に写るのは、嘗て一度だけ観た事のあるミハルの母、
ミユキが魔鋼機械を発動させた時に観た姿に酷似して見えた。
ー やはり・・・能力は遺伝するというの?
いいえ・・・魔法力は受け継がれるの?
ミユキさんの・・・ミハルの母から継承されたというのかしら?
だとすれば、私にも出来るかもしれない・・・いつかは・・・
蒼き衣装に替わったミハルの姿に、リーンは記憶を辿らせていたが。
「車長!準備完了です!」
ミリアの声に我に返った。
「ええ、行きましょう。皆!用意はいい?」
「はいっ!車長。共に戦い共に還りましょう!」
ミリアが、元気よく言った。
ミハルの姿に力を得たかのように。
「はい!お供します。どこまでも!」
キャミーが頷くミハルを観て。
「行けと言われた処へ、どこまでも!」
ラミルもハンドルを握り直して、顎を引く。
背中にミハルの力を感じて。
「リーン少尉、さあ、命じて下さい。
あなたの命じるままに私達は闘い、貴女の思うままに私達は進むでしょう。
<双璧の魔女>の名の如く!」
ミハルは青き光を身に纏い、リーンを誘う。
「ええ、そうね。
私達は一つなんだからね。
行こう、還るべき所へ。この戦場を抜けて・・・」
リーンの瞳に力が宿る。
「戦車前へ!目標っ敵M3部隊。攻撃始めっ!」
リーンの命令で、魔鋼騎として初めての闘いが開始された。
(注・魔鋼騎状態のマチハ。
今やその姿は後に出現する事になる中戦車、VK-30・02M<パンサーの試作車両>
75ミリ長砲身砲を搭載した傑作戦車。
前面装甲は傾斜し、厚さ80ミリの装甲帯を持つ)
「ミリア!魔鋼弾装填!目標2000メートル先のM3。
ミハル、直接照準!砲塔旋回は可能?」
リーンが命令を下す。
ミハルの眼前には、47ミリ砲の時とは全く違う照準器と旋回レバーがある。
そのレバーを右へ引くと、
((ギュインッ))
砲塔が、素晴しい速さで、向きを変えた。
「いけますっ!前よりずっと早い。これなら足の速い車両にも対応が可能です」
ミハルは、照準器を睨んでそのレクチルを見詰ながら答えた。
「よし、M3を各個撃破します。
目標を右から1番に指定。
先頭を行く1番、距離2000メートル。
魔鋼弾。直接照準、撃ち方始めっ!」
リーンの攻撃命令で、
「魔鋼弾、装填完了っ!」
「照準よしっ、攻撃を始めます!」
ミリアとミハルが次々に攻撃準備を整え、
「よしっ!撃てぇーっ!」
リーンが射撃命令を下した。
「撃っ!」
ミハルの右人差し指がトリガーを引いた。
((グオォムッ))
低く重い発射音と共に、長砲身75ミリ砲が放たれた。
赤い光の尾を引いて、あっという間にM3の正面装甲を貫いた。
貫通されたM3の乗員が慌てて脱出するのが見える。
「命中!凄い。M3の車体を完全に貫いた」
正面装甲に当たった弾が、なんとそのまま後面まで貫いて後の地面に砂煙を上げて着弾する。
乗員が脱出したM3が、エンジンから煙を上げて斯座した。
「1番撃破。次発の目標2番。射撃を続行せよ!」
リーンの命令でミリアが装填し、
「次発、魔鋼弾装填よしっ!」
照準器に捕えたM3が、回避運動を始めたが。
「撃っ!」
ミハルの射撃に迷いは無かった。
射撃を回避しようと車体を左に振った所に斜めに弾が当たる。
((グワーーン!))
射弾が弾薬ラックに命中したのか、爆発を起して砲塔が吹き飛ぶ。
仲間の2両が撃破された為、慌てて正面をこちらに向けて射撃を開始するM3。
「ラミル、このまま突っ込んで。
ミハル、魔鋼弾の残弾が少ない。2両が重なった所を一撃で倒すわよ!」
リーンは魔鋼弾の特性を活かした攻撃方法をとる。
この高い貫通力と、変形しない弾頭の威力を活かした作戦を取った。
「了解!目標が重なり次第射撃します。
ラミルさん、目標3番4番。全速で敵の右舷に突っ込んで下さい!」
「良し、解った!」
ラミルはミハルの意図を理解して、ハンドルを左にきった。
猛然と速度を増して敵に突入する。
敵も食い止めようと射撃を再開し防戦に移った。
((ガッ!ギイイィンッ))
キャミーの前、前面装甲にM3の75ミリ砲弾が当たるが分厚い装甲に阻まれて、
掠り傷しか残らなかった。
ー これが、魔鋼の力。私が放つ盾の力なのね・・・
リーンは己の能力に感謝した。
「撃っ!」
ミハルが射撃した弾が3番の側面を貫き、
その後に被った4番の車体をも貫いて破壊をまき散らす。
「3番停止、4番炎上、撃破!」
敵車両から乗員が脱出する。
「残り2両。後退して行く!」
キャミーがリーンに監視目標を報告する。
「道は開けた・・・のかしら?」
リーンが一息吐いて気を緩ませた時!
((ガッ!ギイイーンッ))
先程の75ミリ砲とはあきらかに違う衝撃と、響きが車内に轟く。
「くそっ!新手?あ、あれはっ!?」
後退するM3と入れ違いに、重量感のある車体が現れた。
「敵重戦車!KG-1一両。こちらに向って来ますっ!」
キャミーが目視目標を確認した。
紫に光る大蛇の紋章を浮き立たせた重戦車。
邪なる紋章を浮かばせつつ、迫り来る姿に眼を見開かされる。
リーンにはそのKG-1が悪魔の様に見えた。
撃破した中戦車の影から現れた重戦車KG-1。
そのKG-1と決戦を挑むリーン達。
魔鋼騎同士の戦いの行方は?
次回 戦場
ACt7
君は生き残る事が出来るか!?





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