魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act16復帰 前編
ちょっと気分を切り替えましょうか。
酷い闘いの後だから・・・。
お月見ミハル・・・。酔ってるのか?
毛玉みたいに月見団子食べてなさい。
ミハルは酷く落ち込んでいた。
自分のミスリードで、乗員の心が乱れてしまった事に。
そのミハルをリーンが優しく慰める。
「2号車の連中、余程ショックだったんだろうな。まあ、無理はないか。」
ラミルがふうっと、ため息を吐いて話し掛けて来る。
「ええ、ミハル先輩も酷く落ち込まれていますから。
自分が前進させ過ぎた所為だと・・・悩んでいますから。」
ミリアが部下達の事で落ち込んでいるミハルを心配してラミルに教えた。
「まあ・・・な。私達だってあんな馬鹿げた突撃を見たのは初めてだったからな。」
「確かに。・・・自殺攻撃って言うんですか?初めて見ましたから。」
ラミルもミリアも今迄長い戦争の中で、初めて見た自殺攻撃で軽いショックを受けていた。
「ミハル・・・そう想い迷わないで。あなたが悪い訳ではないのだから。」
リーンがミハルの髪を撫でて優しく諭す。
「う・・・うん。解っているけど・・・ちょっと・・・ね。」
ミハルが顔を挙げずに答えた。
「思い出していたの?あの日を・・・。」
<ビクン>
ミハルの身体が一瞬震えて、
「この記憶は生涯・・・消えないのかも知れない・・・うっううっ。」
リーンには解っていたのかと思う感情と、
敵と自分が辿った運命が全く同じだったのが記憶を呼び覚ましたのだ。
唯一違うのは、そこで生き残った者が居たと言う事。
「私はターム達のおかげで生き残れた。
けど、彼等は・・・全員が命令の為に亡くなってしまった。」
ポツリと呟くミハルが涙を零す。
「ミハル・・・悲しむ気持ちは解るわ。
でも、もう忘れて欲しい。
マモル君との約束も果せたのだから。」
「うん・・・私もてっきり忘れられたとばかり思っていた。
でも・・・やはり心のどこかに残っていたみたい。」
リーンに優しく撫でて貰っているミハルが涙を拭き、
「リーン。私、強くなれたかな。昔よりは?」
突然ミハルがリーンに訊いた。
「そうね、少し位は・・・ね。」
「そっか・・・少しだけか・・・ふふふっ。」
「そう・・・少しだけよ。ふふふっ。」
ミハルもリーンも、やっと笑い合えた。
________________
「総員搭乗っ!これより第2師団と共に、戦線を北上。
ロッソアの戦車隊と交戦中の第4師団の支援に向かう。」
リーンの命令が辺りを震わす。
「第2分隊、集まれっ!」
ミハルが凛とした声で部下を集める。
ミリア以下4人がミハルの元へ駆け寄る。
「皆、心を一つに。いい?私達は魔鋼騎士よ。」
ミハルが元気な声で呼びかける。
「はいっ。」
何となく3人の元気がないのを知ってミリアが。
「ほら3人共。もっと大きく返事をして。」
そう言った時、ミハルが突然笑った。
「あははははっ、こういう時こそお腹の底から笑うのよっ!
無理してでも元気を出すのっ!」
「は?はあ?」
4人共、ミハルの顔を見て戸惑う。
「3人共、あの時の慌てようったらなかったわ。
特にアルム、あなた泣いていたわよっ。」
ミハルが笑いながらアルムを指差す。
「えっ?そうですか?そうだったかな?」
「そうよ。ギャーッギャーッ泣き叫んでいたもの。」
横からミリアが茶々を入れた。
「ぷっ、くっくっくっ。」
タルトが吹き出して笑い始める。
「タルトもそうよっ、ルーンも。みっともなく慌てふためいていたもの。」
ミハルが3人共同じだと笑う。
「そー言う車長も、戸惑って固まってましたよねぇ。」
ミリアが笑うミハルに突っ込みを入れた。
「うっ。バレてたか。こりゃ参ったな。」
ミハルが頭を押さえて困った様な仕草をすると、
「あははははっ。」
全員が笑う事が出来た。
「よーしっ、では搭乗っ!」
ミハルが4人に命じると、
「はいっ!」
元気な返事が返ってきた。
その光景を1号車から見ていたリーンが微笑む。
その微笑にミハルは親指を立てて、返事を返した。
ーふっ。指揮も上達したのね、ミハル。-
息を吐き、ミハルに頷き返すと、リーンはマイクロフォンを押して命じた。
「これより発進する。各車1号車に続行せよ。」
そして右手を高く掲げてから、
「戦車前へ!」
言葉と同時に振り下ろした。
ミハルは歓喜の表情でその人を見詰めた。
約束を共に交わしたその人を・・・。
次回 復帰 中編
君は命の恩人と再び共に闘える事に歓喜する。





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