魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep4革命Act11心の微笑み 前編
「えっ!?」
突然、毛玉が叫んだ。
<ガンッ>
「う あ あ あ っ!」
ミハルは絶叫し、左足を地に着けてしまう。
「うっ ぐ う っ !」
車体が傾く。
「ミハルっ、足をやられたのか?」
マチハの左舷転輪が、一個破壊されて外れていた。
「ううっ・・・でも・・・まだ・・・動ける・・・よ。」
フラフラと立ち上がったミハルに、毛玉が止める。
「もう十分だ!もう止めるんだ。
これ以上ミハルが傷付くのを見たくない。」
「えへへ・・・。ルシファー・・・ちゃんと護っててよ。
大丈夫。私はそう簡単にやられはしない・・・から。」
「どうして言い切れる?
余の力を持ってしても限界はある。
今の弾も本当なら車輪一個ではなく、
エンジンを撃ち抜かれてしまう処だったのだぞ!」
毛玉が教える、最早防ぐにも限界がある事を。
「解ってるよ。あれで済んだのは、あなたが護ってくれたおかげだって。」
「ではまだ退かないと言うのか・・・ミハルは?」
毛玉の質問にミハルが答えた。
「うん。やられっぱなしで逃げるのなんて、癪だから・・・闘ってあげるの。」
「ミハル・・・またそんな事を・・・まあ、お前らしくていいよ。
それじゃあ、一発お見舞いしてやれ。」
「へへっ、解った!」
左舷のスピードが落ちた為、快速力を維持出来なくなったマチハを操り、
それでも敵に抗う。
当然敵もマチハが損傷した事を知り、射撃を続けてくる。
「よし、捉えた。先ずは一両目!」
車体を残骸に半ば隠している車両に目を付けたミハルが、
「それで隠れているつもり?お尻が丸見えよ!」
側面後部へ弾を送り付ける。
<バガーンッ>
そのM4中戦車はいとも簡単に炎上した。
ー後3発・・・。-
6両はテンデバラバラの位置から、マチハを攻撃する。
「それじゃあ、連携は執れないんじゃないの。
そこが私の狙い目でもあるけど。」
炎上したM4の後方から射撃してくるもう一両のM4に狙いを絞る。
「あなたの装甲なんて、側面を狙わなくても貫けるんだからっ!」
ミハルは徹甲弾を放つ。
その前面装甲を狙って。
<グガアアンッ>
「2両目!」
ーこれでもう榴弾しか残っていない。-
貫通力の劣る弾で、ミハルはどう闘うというのか。
ー確かに装甲は破れない・・・けどダメージは与えられる。
闘う事が出来なくなる位のダメージを。-
ミハルは迫る、片足を引き摺りながらも。
狙うはY-34中戦車。
マチハの動きを見て、走行射撃を掛けてくる。
その車体目掛けてミハルは急停止を掛ける。
狙ったY-34がマチハの動きに戸惑うかの様に急旋回を掛け、
射撃を避けようと正面を向ける。
ーそう、正面を向ける為、スピードを落とす。
そうすれば当然狙いも付け易くなる。
その 眼 に ! -
ミハルが狙うのは砲身基部。
照準鏡の小さな穴。
僅か5センチにも満たない窪み。
<グゥオオンッ>
長砲身75ミリ砲弾が、その穴に突き刺さり爆発する。
Y-34は命中と同時に停まる。
砲身をうな垂らせて。
「3両目!」
<ガアーンッ>
「うっ ああっ!」
ミハルの苦悶の叫びが車内に響く。
「ミハルっ!大丈夫か?今のは相当ヤバかった!」
毛玉が呼びかけるが、ミハルは俯いたまま震えていた。
「む?ミハル何処をやられた?」
毛玉が震えているミハルに訊く。
「う・・・ううっ。やられた・・・やられちゃった。」
ミハルがブルブル震えながら答える。
「やられた?ミハルっ戦闘不能になってしまったのか?」
毛玉が心配して訊くと、
「お尻に喰らっちゃったの!」
赤い顔を挙げたミハルが自分を撃った車両を睨む。
「・・・。お尻って・・・後部に喰らったのか?
エンジンは動くのか?」
毛玉が訊くが、それには答えず。
「よくもっ!乙女の大事な処を。許すまじっ!」
「・・・。元気じゃないか・・・。」
両手でお尻を隠したミハルに、毛玉が呆れた。
「決めた!最期の弾はアイツに撃ち込んであげるっ!」
ミハルが吊りあがった眼で、自分を撃ったM4に狙いを定めた。
「まあ、どの車両だろうが構わんが。
相手には理不尽だろうな。」
毛玉はその車両に突き進むミハルを見て少しだけ笑った。
「よっくも、ズボンを破ったわね!お返しよっあなたもお尻丸出しにしてあげる!」
片手で破かれた処を押えつつ、そのM4に機動戦を挑む。
マチハが足回りを壊している事を知るM4は、左側に回り込もうとする。
ーよしっ、そっちがその気なら・・・。-
ミハルがそのM4の意図を知り、急に右旋回を掛ける。
目の前で右旋回を掛けたマチハを見て、
M4は追譲出来ず、正反対の方に向いてしまう。
「そこよっ!」
<グゥオンッ>
ミハルの狙った通り、敵M4の排気管の根元から榴弾がエンジン内へと飛び込んで炸裂した。
<ダダーンッ>
ガソリンエンジンから炎が上がる。
「どうだ!参ったか!」
ミハルが舌を出して、やっつけたM4に空威張りする。
「よしっミハル。弾を撃ち尽くした。
もういいだろう。戻る・・・ぞ!」
毛玉がミハルに言った。
「あ、ルシファー。待って後3両。」
「弾もないのにどうやって倒すと言うのだ。
もう辞めて戻るのだ。」
毛玉がミハルを停めるが、
「違うよ。リーン達に後3両燃やして貰えば、
ロッソアの燃料車はほぼ壊滅した事になるの。
だからその3両を叩いて貰うまで観測したいの。」
「ふむ。闘うのでなければいいか・・・って。
そうじゃないだろ、ミ ハ ルっ!」
「えっ?」
毛玉に顔を向けて訊く。
「タイムリミットだ。見ろ燃料計を。
もうゼロを過ぎている。
いつ停まるか解らんぞエンジンが。」
「あ・・・・。」
毛玉の言う通りだった。
次回 心の微笑み 後編
君は最期の瞬間何を願うのか・・・。





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