魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep3破談Act26新しき力
「では、車長。訓示を!」
ミリア先任搭乗員が、ミハルに求めた。
ゆっくりとした動作でマイクロフォンを押したミハルは、すうっと息を吸って、
「車長より達する。みんな善く聴いて。
これより本車はリーン大尉の重戦車と紅白戦を行います。
大尉の車両は、あの<双璧の魔女>が乗っています。
勝てるとは思わない。
けど、私達がどれだけ対抗し得るかは、やってみないと解らない。
全力で抗い、全力で闘います。私と力を合わせてください。
お願いします。」
ミリアは装填手ハッチに半身を乗り出し、キューポラのミハルを見ていた。
ー先輩・・・やっぱり先輩は魔鋼騎士。
やっぱり先輩は誰より強くなった。-
眩しそうにミハルを見るミリアは、初めて会った時の事を思い出し、
今の姿と照らし合わせてそう思った。
「車長!小隊長より連絡。紅白戦開始迄アト3分。先行せよ・・・です。」
アルムが指示を伝えてくる。
「了解。タルトさん、戦車前へ!」
ミハルの命令を受けて、操縦手のタルトがアクセルを踏んだ。
「タルト兵長、3分後には摸擬戦を開始する。準備に掛かれっ!」
ミリアが銀髪を後で結ったタルトに命じる。
「ルーン一等兵。射撃命令が出ればいつでも撃てる様に準備を怠るな!」
先任としての責務を果すミリアに、金髪の砲手が答える。
「準備にかかります。」
ミリアは3人の同年の少女に命じた。
きびきびと命令を下すミリアに、ミハルは微笑んだ。
「よしっ、3分経ったわね。これより紅白戦を行う。
相手はあのミハル。
通常の攻撃方法では捕えられないものと考えなくては。
そうでしょ、マモル軍曹。」
「ですね、大尉。どうせ姉さんの事だから、行き成り全力を出して来ますよ。」
「あら、マモル君もそう思う?やっぱり。」
リーンもマモルと同じ考えだった。
「じゃあ、どうやって勝負をする?ミハルを倒すには・・・。」
「こちらも全力で闘うしか無いと思います。」
マモルが宝珠と母の髪飾りを握り締め備える。
「あらあら・・・。やっぱり姉弟ね。そっくりだわ、ミハルと。」
リーンがマモルの姿にミハルを重ねてそう言った。
「一つ・・・違う所があるのです。・・・大尉・・・。」
マモルの言葉に黙って頷くリーン。
「それは僕が継承者となった事。
僕が<双璧の魔女>と一つになった事!」
マモルが力を放つ。
黒髪が碧に染まり、瞳が輝く。
「ふっ、そうね。今はミコトさんがあなたの中に居るものね。」
リーンはその光に答える。
「ミリ・・・いえ。パロン兵長っ、魔鋼機械発動!総員配置っ行くわよ!」
リーンもネックレスを右手に持ち力を放つ。
<ギュイイイイインッ>
2人の魔法使いの力で車体が変わった。
「車長っ!大尉車魔鋼騎状態へ突入!」
アルムの絶叫で緊張感が車内に拡がる。
ーマモル・・・巧く扱える様になったね。リーンとの連携も出来ている。-
レンズ越しに見えるMHT-7の変化に、ミハルは喜びさえも感じていた。
「ミハル先輩。私達も・・・。」
ミリアが左手にグローブを填めて促してくる。
「うん・・・それじゃあ、ミリア。私達もなろうか。
真の姿に。魔鋼騎に。」
ミハルが胸を押えてミリアに命じる。
「ミリア、魔鋼機械始動!行くよっ!」
ミハルの命令にミリアの左手が叩く。
紅い砲尾のボタンを。
<ブオンッ>
車内が揺れた。
ー私の魔鋼力・・・。私の魔法石・・・今は胸の中に居る。
私と同化した魔法石。 -
手を置いた胸の中が熱くなる。
ー力を求めるのか?ミハル。-
胸の中に居る者が、問い掛けてくる。
「うん。力を使いたいの。一緒に力を放ってくれる?」
ミハルが問う、共に闘えるかと。
ーミハルが欲しいのなら。ミハルが求めるのなら。共に力を尽くす。
約束を果たす事が余の使命、余の願い。ー
「ありがとう・・・ルシちゃん。」
瞳を閉じて胸の中に礼を呟いたミハルが、
キューポラから砲尾へ向けて手を伸ばす。
<グウオオンッ>
魔鋼機械が唸りを上げる。
ーさあミハル。共に闘う事を誓おう。
余はそなたと共にある。そなたの力となろう。-
胸の中から沸き起こる力の奔流。
今、闇の力をも光と換えて、ミハルが放つ。
「リーン、マモル・・・これが・・・私の力。
光と闇を抱く者の力 。」
ミハルの瞳が開かれる。
綺麗な紅い瞳が輝く。
その紅は、邪な者とは全く違い、澄み渡り美しく光を放っていた。
<ドオオオオンッ>
前方のMMT-8が、突如輝いた。
轟音と共に。
「う・・・そ・・・でしょ。」
ルマが口を開けたまま閉じるのを忘れる。
「あれが・・・ミハル・・・なのか。」
ラミルが呟く。
「魔鋼騎・・・ですよね。」
赤毛のパロンが驚く。
「ミハル姉・・・。やっぱり全力で来たな。」
マモルが微笑む。
「もう・・・手加減なしって言う事ね。」
リーンも苦笑いを浮かべる。
リーン達の前に現れたのは新しいミハルの力。
輝く紋章を浮かべたその姿はミハル自身の証。
金色に輝く<光と闇を抱く娘>の紋章を浮かべた、
MMT-8パンター改は、その勇姿を晒す。
<光と闇を抱く者>、この世界で唯一人相反する力を持つ事になったミハル。
その力を遂に発揮するのか・・・。
相手はリーンとマモル<双璧の魔女>。
次回 リーン対ミハル
君は闘う力を授かった。新たな魔鋼騎士となれ。





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