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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep3破談Act19き、聴いてたの?

すっかりご機嫌のミハルが朝の挨拶をする。

しかし、其処に居た者達は・・・。

「っはよー。って・・・どうしたの?」


明るく挨拶をしたミハルが、皆の視線で固まる。


「ったく。・・・こちとら全然寝れなかったんだぞ。」

「あーっあーっ、って。堪んないよね、あんな声聴かされたら。

 ・・・・悶々と、してしまうわ。」

「何も聴かない・・・聴いていない・・・シクシク。」


ラミルもルマもミリアも・・・誰かさん達の所為で、寝られなかったようだ。


「あ・・・は・・・は。マ・・・マモル・・・これって・・・。」


<ギギイィッ>と首を巡らせて、マモルを見ると、


「ミハル姉。感動の2人っきりはいいけど。

 ・・・その・・・声を慎んだ方が良いと思うよ。ねぇ、ミコトさん。」


宝珠に訊くマモルに、


「あ・・・ああ。マモル・・・聴こえちゃってたの?」


青ざめたミハルが汗を垂らして訊く。


「・・・聴こえんでか。」


マモルとミコトの声が重なった。


<ピシッ>


ミハルは石になった。


挿絵(By みてみん)



_______________


「では、姉様を護りつつ中央軍司令部に向けて出発。

 全部隊の指揮は第2皇女リーンが執ります。

 各部隊の・・・。」


リーンの説明が朗々と流れる中、MHT-6のキューポラでミハルは半分失神していた。


「ミハル車長代理。しっかりしてください。まだ呆けているんですか?」


ヘッドフォンからルマの声が流れる。


「ミハル姉。事故だと思えばいいんだ。事故だったと・・・。」


マモルも呆れた声でミハルに言うが。


ーそれ・・・追い討ちって奴だぞ、マモル -


ミコトが笑う。


「では、第1部隊から進出。かかれっ!」


ユーリが行動を促した。


「ほっほらっ!ミハル先輩。命令が来ましたよ。」


ミリアが心配して声を掛ける。


「よーしっ、我々も向おう。戦車前へ!」


・・・・・。


「ミハル姉さん・・・大丈夫?」


マモルがジト目で姉を見る。


「ほぇ?・・・あ。」


皆が見上げるキューポラで進行方向の逆を向いて命令を下したのに気付いたミハルが、

威厳を正す様に咳払いをし改めて、


「目標、第1部隊の後衛。戦車前へ!」


漸くマトモな命令を下した。


「ホント・・・大丈夫かしら。ミハルは・・・。」


指揮車から振り返って、その様子を見ていたリーンが微笑んだ。


「で・・・・。」


ラミルがミハルに訊く。


<ギクリ>


ミハルの身体が跳ね上がる。


「な・・・何かな、ラミルさん。」


冷や汗を垂らしたミハルが聞き返す。


「私達は何をすればいいんだ?」


<ホっ>


「ええと・・・差し当っては、抵抗されたらその部隊への防戦って事だけど・・・。

 仲間同士で撃ち合いたくはないよね。」

「全くだ。出来る事なら素直に身柄を引き渡して貰いたいものだ。」


ラミルが中央軍司令部が抵抗せずヘスラーの身柄を引き渡す事を望んだ。


「うん・・・そうだよね。」


ミハルも出来るなら流血を見ずして事が終るのを祈った。


「で。・・・元継承者。」


<ビク ビクッ>


またまた身体が跳ね上がった。


「な・・・なんでしょう・・・ミコトさん?」


だらだらと、冷や汗を垂らして訊き返す。


「おまえ・・・何か隠していないか?」

「え?何かって・・・何を?」


ビクビクしながらミコトに訊き返すと。


「んー?ホントに知らん・・・解らんのか?」


キューポラのミハルを見上げてジト目でマモルの姿をしたミコトが訊いてくる。


「だから・・・何なのですか?その・・・あの。リーンの事・・・ですか?」


途中から顔を赤くしてミコトに尋ねると、


「本当に解っておらんらしいな。まあいい、後でリインに訊くから。」


ジト目で弟の姿をしたミコトにそう言われて益々動揺してしまったミハルが、

余計な事を口走った。


「あっあのっ!リインさんに訊くって・・・

 その・・・あの。アレですか?

 私の声が大きかった事ですか。リーンのペットになった事ですか?

 そっそれとも初めて・・・の事とかですか!?」


ー・・・。いらん事を。-


ミハルを見る4人の眼が・・・痛かった。



____________


「ヘスラーが逃亡した?何故誰も止めなかったのよ。

 数名の部下達と共に?なんて事!」


リーンが激怒する。


「まあ、リーン落ち着きなさい。

 逃げた参謀長を訴追する事。

 これでヘスラー達はもう、この国には居られないでしょう。」


ユーリが宥める様に言うが、


「でも、姉様。私は何としても奴を捕えたかった。

 そして幾多の英霊に奴が罪に問われる姿を見せてあげたかった。ミハルにも。」


堅く握られた手を震わせ、悔しさを滲ませる。


「解っているわ。

 だけど今は情けない参謀長を追う事より、一刻も早く戦局を立て直す方が優先。

 そして出来る事なら和平への道を探るのが最優先。」


ユーリがリーンの肩を持って諭す。


「解っています・・・いますが。」


悔しさを滲ませたリーンの眼に微笑んで見詰めているミハルが、首を振ったのが写る。


ーいいの、ミハル?私達の仇が逃げたのに。

 ほって置いていいの?・・・そうか、そうだねミハル。-


優しく微笑むミハルを見て、リーンの気持ちも落ち着きを取り戻す。


「解りましたユーリ姉様。いえ、第1皇女様。

 私達に出来る事をしましょう。このフェアリアの為に・・・平和の為に。」


リーンの瞳を見ていたユーリが、


「いいわね、リーンは。何も喋らなくとも心が通じ合う大切な人が傍に居てくれて。」


リーンとミハルを見て、ユーリが微笑む。


「ん?姉様、変わった?前なら寂しそうにしていた処なのに。・・・うーん、さては!」


リーンの頭にビックリマークが付く。


「なっ、何?リーン。」


ジトっとリーンに見られたユーリが引く。


「昨日の晩。

 私達より先に寝所に帰って行ったわよね姉様っ!」

「ぎっくぅっ!」


姉妹の会話の横で、目が点状態のミハル。


「あの後、誰かと会っていたんでしょっ!寝室で・・・いやらしい。」


<ピシッ>


ミハルの前で、ユーリが石と化した。




_______________

「あなたを信じて付いて来たのに。

 何故我々が逃げねばならないのですか!」


中佐参謀がメガネの男に言った。


「ふふ。だがロッソアに渡したのだ。喉から手が出るほど欲しがった物を。

 これで約束は果したのだ。フェアリアが堕ちれば我々も戻れる。

 そして、支配者となれるのだ。」


ここはフェアリアとロッソアから少し離れた中立国への街道。


「確かに極大魔鋼弾を放ちました、我々の計画通りに。

 魔鋼力の半分しか入っていない試作の弾の方を。

 実弾頭を装備してある方ではない、飛翔させる為だけの魔鋼力しか入っていない方を。」


一人の部下が認める。


「ヘスラー参謀長が付け狙っていたシマダ・ミハルの魔鋼弾ではなく、

 試作品を撃ったのはロッソアに渡す為。

 これが戦争終了後、衛星国になった時に我々が支配者になれる条件。

 そうロッソアの密使が約束した事ですが・・・。

 その書類は信用出来るのですね。」


中佐参謀が念を押す。


「何度も話しただろう。書類には皇帝の印が押されてあると。

 これでこの戦争は我々の・・・このヘスラーの勝利と言う訳だ。」


ヘスラーが高笑いしてほくそ笑んだ。


「ですがロッソアに見せてからでも、良かったのでは?

 あの狙って来たシマダ・ミハルの魔鋼力を使ってから渡した方がもっと高値を付けられたのでは?」


実弾頭を持つ弾を使って、威力を見せつけた後で、

もう一発を渡した方が良かったのではと中佐が問う。


「仕方あるまい、ユーリ皇女が止めなければ私もそうしていただろう。惜しい事だ。」


ヘスラー達はもし、ユーリ皇女が止めに入らなければ、

ミハルの魂を宿した弾を最初に放つ予定だった。


「しかし、逆にこれで良かったのかもしれぬ。

 威力は解るだろうが、我々に対する怒りも増える。

 大勢の将兵が死んだとなれば・・・な。」


ヘスラーは、自分達に都合が良い風に解釈を付ける。


「では、ヘスラー参謀長。約束通り、ロッソアに電報を打ちます。

 その後はロッソア軍と連絡を取り、我々を匿って貰うとしましょう。」

「うむ。」


数名の男達がその後、ロッソアへと向かう事となった。

逃げたヘスラー達の策謀は成就するのか?

それとも・・・。


次回 祝福の光

君達は堅く愛し合い祝福を受ける・・・。

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