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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep3破談Act3幼女ミハルとマモル

挿絵(By みてみん)


訓練に出動するMHT-6。

その中には幼女の姿も含まれていた。

「わーいっ、リーンお姉ちゃん早い、はやーぁぁぁいぃぃっ。

 髪の毛、バッサ バッサで、こまっちゃうんんんっ。」


装填手ハッチから身を乗り出した幼女に、


「こらこら、ミハルちゃん。はしゃぐと舌を噛んじゃうから。」


リーンが幼いミハルに危ないからと口を噤ませる。


「ぶうっ。」


怒られたと思ったのか幼いミハルが口を尖らせてぶう垂れた。


「小隊長、訓練場に着きました。」


ラミルの声がヘッドフォンから聴こえる。


「よし、停車。これより砲撃訓練を執り行う。

 ミリア、徹甲弾装填。目標、前方500メートルの残骸。

 マモル君、様子が解るかしら。」


リーンが配属された車両の砲の確認を兼ねて、

マモルの腕を計る為に射撃訓練を命じる。


「大体は・・・。

 フェアリアの砲手席の方が優れていると思います。特に照準器は。」


記憶を失っていた割にはすんなりと砲の扱い方を知っているマモルに、


「身体に沁み込んでいたのかしらね。それとも思い出したのかしら。」


リーンが問い掛けると、


「記憶の中にはありません。ですがどこと無く感じるのです。

 砲を撃たなければ、敵を倒さなければ反対に殺されてしまうと。

 その想いは強く残っていますから。」


照準器を見詰めて話すマモルに、リーンが気付く。


ー闇の中ででも、魂を奪われていたにしても身体は記憶しているって事?

 無意識にでも記憶しているって事なのかな。

 だとしたら、この子も・・・。-


リーンは横の装填手ハッチに身体を出し周りを見回している幼女ミハルに、眼を移し考えた。


「射撃準備よし。装填よし。

 車長、準備整いました。」


ミリアが訓練の準備が整ったと告げる。


「うん、よし。では、マモル君。射撃開始、撃て!」


十字線を残骸の正面装甲に当てて、


「撃て!」


マモルの指がトリガーを引いた。


<ズッドオオオンッ>


88ミリ徹甲弾が、元KG-1の正面へ飛ぶ。


<ガッ ボッ>


命中。

だが、マモルは首を傾げる。


「おかしいな。この砲の癖なのかな?左に少し逸れた気がする。」


マモルが砲の精度に納得せず、


「小隊長、もう一発撃たせて下さい。」

「ふむ。ミリア、再装填!」


マモルの申告に、リーンが応じる。

そして、第2射を発砲する。


<ガッ ガーンッ>


命中。

そして。


「リーン小隊長、通常時は何とか把握出来ました。

 次は魔鋼弾での試射をさせてください。」


マモルが言う。


「マモル君・・・君は魔鋼騎での戦闘を?」


リーンが少なからず驚いて、その瞳へ眼を向けると、


「マモル・・・その瞳の色は・・・魔鋼騎士。」


ルマがいち早く気付いて声に出す。

そっと右手を翳したマモルの口から・・・。


「リイン、私だよ・・・ミコト。

 新しい継承者の身体を調べたいんだ。一発撃たせてくれよ。」


ミコトが現れた事が解る。


「なんだ、ミコトさんか。マモル君のテストね。

 解りました、撃ってみて下さい。」


リーンが了承して、


「ミリア、魔鋼機械発動。魔鋼弾装填!」


命令を下した。

直ちに、ミリアがセットして。


「準備完了。」


マモルとリーンに報告する。


「では、マモル君の力を試そうか。」


リーンがちらりと幼女ミハルに目を向けてから、


「射撃開始。撃て!」


<ズッドーーンンッ>


命中。

徹甲弾より、僅かに威力が上がった様に思える。


「ふう。こんなものか?リイン。」


マモルの口がミコトの言葉を吐いた。


「うーん、最初はこんなものではないですか?ミコトさん。」


リーンが小首を捻ってマモルを見る。


「やはり、ミハルの力には遠く及ばないか。」


マモルの口が失望を交えたミコトの言葉を吐く。


「これでは強敵と闘うには不安が残るな。

 何とかもっと力を引き出さなければ・・・。」


焦りの声を出すマモル。

その右手に填めた宝珠の中で、

右手に槍を持ったミコトがマモルの身体を乗っ取り口に出すのは。


「ミハルと同等の力を有している筈だがな。何故不足しているのだろう。」


ミハルの力が勝っていた事への不安。


「ならば。もう一度撃ってみて下さい。

 今度は私と、リインさんの力を加えてみますから。」


リーンがミリアに再装填させて、ミコトに勧めた。


「ふむ。では、そうさせて貰うか。」


再射撃を試みる。

ネックレスを取り出した時、視線の片隅に幼女の姿が無いのが判った。


「マモル兄ちゃん。撃ってご覧よ。

 面白過ぎて、こまっちゃうんんんっだからっ。」


そう笑った幼女ミハルが、いつの間にかマモルの横に居た。

その瞳の色を変えながら・・・。


ーミ、ミハルっ!その瞳の色はっ!!-


気付いたミコトの叫びにも意に介せず。


「撃っちゃえ、マモル兄ちゃん。きゃはははっ!」


幼女の手が、マモルに伸びる。

妖女と化したミハルの瞳が金色に染まる。


ーえっ!?-


ミコトが驚く暇も無く、その声がマモルの心に直接届いた。


「マモルっ、こうするの。」


幼女ミハルの右手が宝珠を着けたマモルの手に被さり、


「祈るんだよマモル。守りたいって、大切な人を守ってそして約束を果たしたいって。

 その想いを強くいだいて放つの。あなたの力を・・・。」


マモルの耳元で呟く。

身体をミコトに乗っ取られている筈のマモルが、


「ミハル姉さん・・・。」


大切な人の名を呼んだ。


ーミハルっ!お前かっ!!-


宝珠の中で聖巫女も気付き、叫ぶ。


<ギュイイイイイィンッ>


突如魔鋼機械が唸りを上げた。


「ミハル姉!」


その輝きは青く、その力は金色に。


長く突き出た砲身は、その力を現す。

車体は既に、別の物と化す。


「あはははっ、撃っちゃえ!撃っちゃえ!」


妖女と化したミハルが笑う。

金色の瞳で。


<ズッドオオオム>


マモルの指が引き絞った。


<ズギュウウウッムッ>


その魔鋼弾はKG-1の車体自体をくの字にへし折り、

遥か彼方に着弾した。


「す・・・すげぇ・・・。こんな弾、見た事無い。」


ラミルが息を呑む。


「これがマモルの・・・?」


ルマが砲手席を見上げる。


「そんな・・・これが僕の力なんですか?」


マモルが気付いて右手の宝珠に訊く。

その答えは宝珠からではなく、マモルの後、キューポラから返って来た。


「マモル君、今の力はあなたとミコトさんだけで出た訳ではないわ。」


リーンが静かに言う。


「え?では誰の力で?」


その答えはリーンと、右手の宝珠から重なって聞こえた。


「あなたと、あなたの姉。

 そこに居る妖女ミハルとによって、成された力。」


マモルの横に居る幼女ミハルが砲手席に向って立っていた。


「ミハル・・・姉さん。」


搾り出す様に、その幼女に呼びかけるマモル。

    幼き姿のミハルが、

妖しく輝いていた瞳を、黒く澄んだ色に戻したその顔で、

  ニコリと笑いかけて来た。


幼い姿の中に姉ミハルを見たマモル。

今、彼女は一体?

彼女の魂は何処にあるというのか?

次回 守りし魂

君は妖女の中に大切な人を求める・・・。

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