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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act44陰我(いんが)の果て

マリーの魂は祝福を受け闇から救われた。


「マモル・・・ミコトさん。大丈夫かな?」


ミハルは砲口を塞いでいる弾を見ながら呟いた。


その軽戦車は、先程まで赤黒く澱んでいた紋章を赤く輝かせて停車している。


「ミハル?次弾は・・・撃たないの?」


リーンが確かめるように訊く。


「うん・・・確信がある訳ではないけど、赤い光点に命中したと思うんだ。」

「えっ!?じゃあ?」


リーンが砲手席を覗き込む。


「まだ・・・解らないけど。話を聴いて貰えるかもしれない。」

「ミハル姉!ホント?」


ルマの顔が輝く。


「よっしゃあっ!」


ラミルが両手を叩く。


「ミハル先輩っ!やっぱりセンパイは凄いです!」


ミリアが砲弾を持ち上げて喜んだ。


「ふっ、さすが。私の砲手。さすが、聖魔法使い(パラディン)!」


リーンが頷いて呟く。


「ルマっ!敵の無線に呼びかけられる?話を聴いて欲しいと。

  マモルと、弟と話をさせて欲しいって!」

「はいっ!やってみますっ!」


ミハルの求めに即座にルマが応えた。


「こちらフェアリア重戦車マヘト。ロッソアの軽戦車の乗員へ。

 聴こえていたら答えて!こちらフェアリアの<双璧の魔女>。

 <大蛇の紋章>の乗員、呼びかけが聴こえているなら返事して!」


ルマが必死に無線で呼び掛ける。



_______________


[彼女達が呼んでいる・・・。私は戻らなければいけない。

 皆、ありがとう。教えてくれて・・・救ってくれて。]


マリーの魂が周りの魂に礼を述べた。


[さあマリー。私も共に居ます。判断はどうされますか?]



微笑むロナが、マリーの手を取る。


[そうだな・・・古来からの因果をこれで終らせるのがいいな。]

[闘うのですね。]


マリーにロナが確認する。

その微笑みは絶えていない。


[ああ、闘おう。そして終わりにしよう。勝っても負けても。

 私達の闘い方で、悔いの残らぬ闘いを行ったうえで!]

[はい、マリーベル!私の車長!]

2人の魂は誓い合った。

これが本当の最期の闘いにする事を。


だが、気懸かりがあったロナが訊く。


[この子はどうするの?マリーベル。]

[ああ。それは私にはどうする事も出来ない。この子が受けてしまった呪いなのだから。]


マリーの瞳が曇り、


[聖巫女よ。何とかならないものなのか?

 その呪いを打ち消す事は出来ないのか?]


マリーとロナがマモルを見て訊く。

マモルを守護しているミコトの魂が首を振り、


[それは今は無理だ。私の槍は闇へ堕ちたっきり還ってこない。

 だが、マモルの身体は此処にある。それが真実だ。]


ミコトの説明にある事実に気付いたマリーが頷く。


[そうか・・・そうだな。この子が呪いを解くには姉の力が必要だな。

 この子が救われるには彼女の力が必要なのだな。]


そしてロナに告げた。


[闘いの末、私達がどうなろうとも、この子だけは助けたい。ロナ、頼めるか?]


ロナは微笑みを浮かべ、


[それがマリーベルの求めなら。]


大きく頷いた。


[ありがとう、ロナ。私の友よ。]


マリーが微笑み返し、


[それじゃあ、最期の勝負を着けよう!ロナ!戦闘準備に着け!]

[はい!車長!]


自らの為、友の為。

そして古来からの宿命さだめを打ち破る為。

剣士マリーの継承者が宿敵との最終決戦に挑む。

そう、聖なる光を浮かべた紋章の元に。


_________________


「我はロッソアの剣士、マリーの継承者。

 フェアリアの<双璧の魔女>に告ぐ。これが最期の闘いにしよう。

 勝っても負けても、もう恨みも憎みもしない事を約束する。

  そちらも約束しろ!」


ルマの耳に暗黒魔鋼騎からの返事が入った。


「ミハル姉、車長!通じましたっ!」


ルマが2人に話せる事を教える。


「ロッソアの魔法使い。私は紋章を継ぎし者。話を聴いて!」


リーンが呼びかける。


「お願いがあります。あなたと同乗している男の子は、私の弟なのです。

 どうか話をさせてください!」


ミハルが必死に呼び掛ける。


「お願い弟と話をさせて。弟を返して!

  マモルと会わせて!」


2人の呼びかけに返事が入った。

その声は、落ち着いた女性の声だった。


「フェアリアの魔女よ。この子は返す。

 約束しよう・・・だが、その前に我々の因果を終らせなくてはならない。

 闘え!我々と!これが最期の闘いだ!」


ロッソアの女性の声が決戦を求める。


「どうしても、闘わねばならないのですか?

 なぜ、その宿命に抗おうとしないのですか!」


ミハルが闘う事を躊躇い、女性に反論する。


「何故かは教えられないが、それが我々が求めた唯一つの答えだからだ。

 そうする事が私達を救ってくれる答えだと解ったからだ。」


その女性の声はもはやミハルがどう説得しようと闘いをやめる気配が無い事を教えていた。


「どうしても・・・。私達は闘わねばならないのですか?」

「ああ、フェアリアの魔女よ。いざ決戦のときだ。」


軽戦車の紋章が赤く浮かび上がる。


「待って!マモルと話をさせてください。お願いです!」


ミハルが闘う前に弟と話をさせて欲しいとお願いを言うが、


「闘い終わればいくらでも話すがいい。もう時間だ<双璧の魔女>!」


有無を言わさぬ声が返ってくるだけだった。


「ミハル、闘いましょう。そして取り戻すのよ弟君を。」


リーンが闘う事を求める。


「ミハル姉!勝ってマモルを取り戻そう。それしかないよ。」


ルマも闘う事を決意する。


「だけど・・・次はマモルに当るかもしれない。」


戸惑うミハルにリインの魂が教える。


「ミハル。ミコトはまだ奴の中に居るんでしょ、大丈夫よ。

 それに今の奴は邪な気を発してはいない。

 きっと約束は守ってくれる筈よ。」

「リインさん・・・。リインさんはあの人を信じられると思うのですか?」


ミハルが一番聴きたかった事を訊いた。

リーンの身体を借りたリインがキューポラから降り、ミハルの肩を掴んでこう言った。


「あなたは信じられない?

 彼女がまだ邪な魂のままだったとしたら、通信に応えたと思う?

 これが最期の闘いだと言ってこれる?

 そして何より・・・

 あなたが命中させた弾があの赤黒く澱んだ魔法石を打ち破った事が、

      信じられないの?」


リインの言葉にミハルは目を見開く。


ーそう、私が放った弾は砲口に重なった薄赤い魔法石へと飛んだ。

 そして砲口に突き刺さった時私は見たんだ。

 あの欠片と同じ赤黒く澱んだ石が黒い霧となって消えたのを・・・。-


「私は信じたい・・・彼女の事を・・・信じたい・・・私の能力ちからを。」


ミハルはリーンの瞳に答えた。


「そう。だったら闘いなさい。彼女と闘う宿命さだめと。

 これが本当の最期とする為に。」


リインとリーンが宿命さだめに抗う事を求める。

これが最期の闘いとする為に。


「はい。これが私の宿命ならば・・・勝ってみせます。

 勝って弟を・・・マモルを返してもらいますから。」


ミハルの碧き瞳が輝く。

凛とした瞳が決意を告げる。


「良い瞳の色ね、ミハル。

 そう、それでこそ新たな伝説を造る者。」


挿絵(By みてみん)



リーンがしっかりとミハルの肩を掴んで頷き、


「それでは、彼女に教えてあげましょう。

 私達の闘い振りを。この紋章に賭けて。」


ミハルと共に闘い、打ち破る事を誓った。


「はい、共に闘い、必ず勝ちましょう、リーン。」


碧き瞳の砲手が共に誓う。


永き宿命さだめに終止符を打つ為に。

ミハルは闘う事を決意する。

伝説の継承者として、

新たな伝説を造る者として。


次回 一騎討ち

君はその運命さだめに抗い続ける者なり。

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