魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act43魂の回帰
ミハルはその能力の全てを使い、弾を撃つ。
自らの願いと希望を載せた一撃は何を産むというのか・・・。
リーンの青い瞳にリインの力が加わる。
「聖魔法使いミハル。そなたの力を解き放て!
新たな伝説を産む為に!」
リーンのネックレスが輝きを放つ。
ーミコトさん、今から放つのは私自身の力。
今から撃つのは光の槍。これが・・・これが・・・。-
ミハルの瞳は十字線を見詰める。
その十字線には暗黒魔鋼騎の砲口と、
薄赤く輝く魔法石が、重なって見えていた。
ミハルの拳が碧く輝きを増し、
ーこれが・・・これが!-
「私の全力魔法だぁっ!!」
ミハルの指がトリガーを引き絞った。
<グワオオォンッ>
マヘトの砲口から光が迸る。
[なんだと!撃ってきたのか。しかも車体を狙ってだと!?]
マリーが慌てて砲を放つ。
その弾道は、途中でクロスした。
<ガッ>
<ガガンッ>
お互いに、命中弾を喰らった。
「あぐっ!」
マヘトの左舷砲塔側面に弾がめり込み、内部へ僅かながら破片が入り込んでミハルの左肩を掠める。
服が裂けた所から肌が見える。
だが、ミハルは痛みさえも感じないのか、照準器から目を離さない。
「う・・・そ・・・。そんな・・・。」
ルマが目を見開く。
「へっ!」
ラミルが鼻を擦る。
「ミハル・・・センパイ。」
ミリアが頷く。
「ミハル・・・。」
リーンとリインがその名を呼ぶ。
弾の行方を確認したミハルが。
「リーン、やったよ!」
親指を立て、振り返った。
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[ぐうっ!馬鹿なっ、そんな馬鹿なっ!]
あまりの事にマリーがうろたえた。
[信じられない・・・砲口に命中させたのか?それとも偶然なのか?]
暗黒魔鋼騎は90ミリ砲の砲口に127ミリ弾が突き刺さった状態で走行する。
[これを直すには・・・弾を取り除くには手間が懸かる。]
マリーの瞳が強く光る。
[邪な魂よ、見ろ。これが奴の力だ。お前に奴が倒せるのか?]
マリーが自らの魂で闇の魂に訴える。
[闇の力で砲が撃てる様に戻せるというのか?出来るというならやって見せろ!]
マリーが砲口に突き刺さった弾を取れと闇の魂に叫ぶ。
[邪な呪いだけで奴に勝てると思うならやってみせるが善い。そら、どうしたのだ!]
マリーの魂が赤く輝きだす。
[出来ぬとあらば、この闘いから去れ。
この闘いは私と私の友が闘う。私の力とロナの力で!]
マリーの魂が邪な魂を打ち破った。
ーピキイイィンッー
闇の魂は赤き魔法石から消えた。
「見事だマリーベル。本当のマリーよ。
さあ、古来からの闘いに終止符を打つのだ。私と共に・・・。」
剣士マリーの魂がマリーベルと一つになる。
闇の力が消えた暗黒魔鋼騎の紋章が変わる。
赤黒く澱んだ輝きから赤く光り輝く本当の紋章へと。
[マリー、おかえりなさい。マリーベル、私のマリー。]
魂が現れる、優しい青く輝く光の中で。
[ロナ。私の友よ、私は戻った。本当の私へと。]
軽戦車の中で、魂が魂の元へ還ってきた。
[はい。約束を果しに来ました。これでやっと私達は願いを果す事が出来るのです。
<双璧の魔女>と闘って古来からの陰我を斬捨てられるのです。]
ロナが右手を差し出す。
その右手にマリーが魔法力を返す。
[ああ、ロナ。私達の願いの為に。私達が求めた未来の為に。]
2人の魂が再び闘う事を誓い合う。
[?]
マリーの魂はロナの後ろに居る魂に気付いた。
[あんた達は?どうしてここに居る?]
マリーはロナの後ろに居るフェアリア戦車兵服を着た、金髪と銀髪の少女達に訊いた。
[マリー。この人達は私達が殺してしまった人達。
闘いの中、あの魔法少女を守って死んでいった人達・・・。]
ロナが振り返って教えた。
[そうか・・・私が殺してしまったんだな。
・・・私を連れに来たのか、地獄へ・・・。]
マリーが2人の魂へ訊くと、金髪の少女が口を開いた。
[いいえ。<大蛇の紋章>のマリー、違うわ。]
銀髪の軍曹が続けて、
[私はミハルをこれからも守る。
あなたからだけでなく、全ての闇からミハルを守る。]
じっとマリーを見詰めて言い切った。
[あなたは自ら闇を払い除けてみせた。
本当の自分を取り戻せた。私達はあなたに教えたい事がある。それは・・・]
金髪の少女が銀髪の少女と目を合わせてこう言った。
[それは、あなたを私達は赦します。
私達を殺した罪を、今迄行った罪を全て許してあげます。
あなたは今、魂の粛罪を受けたのです。
神の祝福を受けられる魂に昇華した事をお知らせにまいりました。]
2人の少女がマリーに微笑む。
そして、ロナがもう一人の魂を手招きした。
[まさか、ルメル・・・?お前か?]
[マリー姉さん。おめでとう、そしてお帰り。]
マリーは弟を求めて手を差し出す。
その手をしっかりと握った弟が、
[これだけは言っておきたかったんだ姉さん。
姉さんが軍人になった事を怒っていた訳じゃない。
人を殺めて魂が穢されないかと心配していたんだ。
地獄に堕ちはしないかと心配していたんだ。]
ルメルが微笑んだ。
[ルメル・・・私は・・・。]
マリーが握り返し、
[救われたのだろうか?]
弟に訊く。
その答えはマリーの周りから、全ての魂が応えた。
[おめでとうマリー。]
微笑む全ての魂。
[おめでとう、マリーベル!]
そして、その優しい魂にマリーが答えた。
[ ありがとう ]
赤き魔法石と同化したマリーの魂は粛罪の時を終え、
剣士マリーが姿を現した。
[マリーベル・・・私の継承者よ。よくぞ闇に打勝った。]
剣士マリーに褒められたマリーベルが首を振る。
[いいや違う。私だけの力で闇に勝った訳ではない。
私を取り戻せたのは、其処に居る聖巫女と・・・。]
マリーはマモルを守っているミコトを指し、そして・・・
[聖巫女の継承者・・・あの砲手の・・・おかげだ。]
自分を撃った砲手に顔を向けた。
魂は粛罪の時を迎えた。
優しい光の中、剣士マリーの魂とロナウトの願いは宿命に抗う事を決める。
「おめでとう、マリー。」
「おめでとう、ロナ。」
君達の魂は祝福された。良かったね!
次回 陰我の果て
君は自らの運命に抗おうというのか?自らの願いを貫くというのか?





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