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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act32新装機械

挿絵(By みてみん)


ひっくりカエル。


車体を打った着弾音。

狙撃されたマヘトの乗員は・・・

「あっ!」


ラミルが叫ぶ。

左舷方向から飛んで来た小口径弾が、ハッチに飛び込んだラミルを襲った。


「ラっ、ラミルさんっ!」


ほぼ同時に車内へ戻ったルマが、ラミルの声に振り向き眼を見開く。


「ラっ、ラミルさん?ラミルさん!?」


座席に凭れたままの姿で、もう声も立てず動かないラミルを見て、ルマが叫ぶ。


「ミハル姉、小隊長っ!ラミルさんがっ、ラミルさんが動きませんっ!」


突然の狙撃でルマが動転して2人に助けを求める。


「ラミルさん!ルマっ、傷は?何処を撃たれたの?」


ミハルが傷の具合をルマに尋ねる。


「そ、それは・・・解らない・・・血は出ていないけど、気を失っているよ」


砲手席から操縦手席へ降りてラミルを揺さ振り、


「ラミルさんっ、ラミルさんっ!」


ヘッドフォンを外して声を掛ける。


「う・・・ううーん」


ラミルは直ぐ様気付いて、左の髪を手で探り、


「あっ、無い。アニキの髪飾りがないっ!」


正気に戻るや否や、大切な形見を探す。

座席周りを必死に探すラミルを見て、ミハルが気付く。

いつも肌身離さず着けていた銀の髪飾りが変形して落ちているのを。


「ラミルさん・・・これ・・・」


拾ったミハルが差し出す。


「あ・・・アニキ。・・・アニキが助けてくれたのか?!」


その変形してしまった髪飾りを握り締めて、ラミルが呟く。

ラミルに異常がない事に胸を撫で下ろし、マイクロフォンでリーンに報告する。


「中尉、幸いラミルさんに怪我は無いようです。

 狙撃手は左舷方向から撃って来ました。見えますか?」


キューポラの観測レンズ越しにリーンが探すが、撃ってきた者の姿は見えない。


「解らないわ。

 ルマ、マクドナードにも左舷方向に注意するように連絡。急いで!」


オープントップの力作車へ連絡をいれ、狙撃されない様に注意を促し、


「ミハル。砲塔率距儀で確認して」


大口径レンズによる観測を命じた。


砲手席に座り動力を入れ、砲塔を回すミハルが照準器の倍率を上げて、周囲を見張る。


「うーん。それらしい者は見当たらないね。どうしますか、中尉?」


照準器から振り返ってリーンを見上げる。


「このまま放置しておけば、味方に被害を及ぼす恐れもあるわね」


リーンが敵の狙撃手を野放しにしておく危険を考えて見過ごす事を躊躇う。


「一発ぶっぱなしてやったら?ミハル姉」


ルマが呑気に言う。


「馬鹿。今は徹甲弾と、魔鋼弾しか載せてないんだから。

 榴弾を積んで来れば良かったか?」


ミリアが対歩兵装備をしてこなかった事を悔やむ。


「それに、ぶっぱなすって言ってもどこに居るのか解らないのに当てずっぽう過ぎるわよ、ルマ」


ミハルが無駄弾を撃つ事を躊躇って注意する。


「ふーん、そうなんだ・・・。

 狙撃手を追っ払うだけなら当てなくてもいいと思うんだけどな。

 徹甲弾でも十分びっくりすると思うよ。

 野ウサギみたいに逃げ出すと思うんだけどなぁ」


ルマがなんとなく思った事を言ったその一言に。


「それだ!」


リーンもミハルも気付いた事があった。


「中尉、やってみましょうか?」

「そうね。脅かしてやりましょう!」


二人の意見が合致した。


「ミリア、魔鋼機械発動!」


リーンの命令が飛ぶ。


「は?・・・そうか!了解!」


命令を受けて始めは戸惑ったミリアだが、思い当たる節があり即座に復唱する。


「ミハル先輩、発動しますっ!」


赤いボタンを叩き込むミリアに、


「よしっ、いきなり全力でいくから注意して。

 特にルマ!ヘッドフォンを外しなさいっ!」


以前、ヘッドフォンを被ったまま魔鋼力を受けて、気を失ったルマに注意を促す。


「えっ?あっはい。ミハル姉」


慌ててヘッドフォンを一時的に外したルマを確認してから、


「リーン!いくよ!」


右手の宝珠を砲に翳した。


「いいわよ、ミハルっ!」


リーンもネックレスを強く握り締め応えた。


<グゥオオオーンッ>


魔鋼機械が唸りを上げる。

車体内外が碧き光に包まれ、マヘトがその姿を変えた。


「どう?ミハル?」


照準器を切り替えて狙撃手を探すミハルに、捉えられたかを訊く。


ー居た!あんな所に・・・-


薄赤く人の形をした物が木の枝上に、そして他にも2つ確認できた。


「中尉、今の所3人が確認出来ました。どうします?」


ミハルが解っているのにリーンに命令を請う。


「ふふっ、やっちゃえミハル。ミリアっ、魔鋼弾装填。ラミルの仇討ちよ」


「・・・中尉、私は死んでませんって」


ラミルがリーンに呟く。


リーンの心使いがミハルには微笑ましく感じられて、自然と笑みが零れる。


「センパイっ、装填完了!」


ベンチレーターを作動させ、発砲準備が整った事を教えたミリアが親指を立てる。


ー そっか、リーンもミリアも私が人を撃つ事を心配してくれているんだね。

  ありがとう・・・

  少し前なら嫌がって、戸惑っていたかもしれない。

  でも、今は違う。

  人を殺さずに闘う術を身に着けられたから!


2人の心使いに感謝してミハルは狙う。

敵狙撃手を。

3人を一撃で倒す事の出来る、一箇所を睨んで。


「ミハルっ、撃てっ!」


リーンの命令に身体が応える。


っ!」


ミハルの指がトリガーを引き絞る。


<グワアアアンッ>


魔鋼弾が狙った処から1ミリも狂わず着弾し、

その衝撃波で木の枝に居た男と、残りの二名をも噴き跳ばした。

狙撃手を倒したミハル達は、目的地の第2師団へ辿り着いた。

そこに待ち受けていた者とは・・・

ヤツ・・・か!

次回 第2師団長

そう・・・ヤツがまたリーンにたちはだかる・・・そう、また・・・だ

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