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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act24ルマの決意

ミハルの夏。


挿絵(By みてみん)


ミハルに髪飾りを渡し、マモルの事を教えるルマ。

逆恨みを言うルマの心を知るミハルは自分を責める。

「マモル・・・が?・・・私の・・・替りに?」


髪飾りを握り締めたミハルがルマに尋ね返す。


「そう、そう言ったわマモルが。

 マモルを脅す者に迫られていた。

 ミハル姉を手に入れられない時には替りにマモルを連れて行くって・・・

 そしてそれは現実となった。

 どうしてマモルがロッソアなんかに連れて行かれなきゃならなかったのよ!」


ルマは目を見開くミハルに喚く。


「ルマ、ミハルに怒鳴ってもしょうがないじゃないの」


見かねたリーンが口を挟む。


「うるさいっ!私のマモルを返して!私の大好きなマモルを・・・」


ルマは大粒の涙を溢れさせて、泣き崩れた。


「ルマ・・・ごめんなさい。

 私が魔法使いだったから・・・マモルにも迷惑ばかり掛けて・・・ごめんなさい」


目を伏せて顔を俯かせて謝るミハル。


「ミハル姉・・・ちっ、違う。

 謝らないで・・・ごめん。ごめんよぉっ!」


逆にルマが謝る。

心にもない酷い事を言ってしまった後悔と共に。


「ごめん、ミハル姉。マモルの事が大切なのはミハル姉も同じなのに・・・

 心にもない酷い事を言って・・・

 ミハル姉が悪い訳じゃないのにぃっ!」


「ルマ・・・」


ルマが俯くミハルに抱き付いて泣き謝る。


「マモルが言っていた・・・あの日、最後に会った日に。

 ミハル姉は必ず僕の元へ来るって!約束したからって!

 だから僕はずっと待つって・・・

 行こう・・・ミハル姉。

 マモルの元へ・・・ねぇ!」


涙を零しミハルに願うルマの瞳は涙の中に希望が見て取れる。

その手をそっと掴み、ミハルが答える。


「ええ、ルマ。行くよ私・・・マモルの元へ。

 そしてきっと救い出して見せるから、この石に賭けても!」


ルマから手渡された髪飾りに誓った。

ミハルとルマはマモルを取り戻すべく戦う事を誓い合う。


フッと息を吐き、二人を眺めていたリーンがルマに訊いた。


「ルマ・・・最初に私が訊いた事を教えてくれないかしら。

 あなたを私の小隊へ来させたのは一体誰なの?」


訊かれたルマがハッと我に返ってリーンを見る。


「それは、小隊長も善く御存知の方です。

 内務政務官のカスター皇室補助官ですけど?」


ルマがはっきりと告げた。

リーンの幼馴染でもあり、好意を懐いている男の名を。


「カスター・・・が?」


「はい。私も軍が善く承知したと思っているのです。

 だって私は軍人では無かったのですから・・・」


リーンを見て笑うルマに、


「え?ルマ?ルマは軍人じゃないの?じゃあ何故考課表とかあるのよ?」


驚くリーンに、


「それはカスター政務官が偽造したんです。

 元々私は電信員見習いでしたから。

 トン・ツーの方は少々出来るので・・・

 無線手を求められた小隊長の電報を受けた軍より先に手を打たれた様ですね」


「カスターさんが・・・で、どうしてルマだったの?」


ミハルがカスターの面影を思い出しながら訊く。


「それはどうやら薄々マモルの事を知っておられたみたいですね。

 中央軍司令部内にロッソアと内通している人が居る事にも。

 そしてマモルを知る私に訊ねられたのです。

 大切な物を預かってはいないか・・・って」


青く輝く石を付けた髪飾りに瞳を向けて、ルマが続ける。


「私が答えたのは当然です。

 だってその髪飾りはマモルのお母さんが身に着けていた物。

 私も何度か美雪みゆきお母さんが着けていたのを覚えているから。

 きっとその髪飾りには特別な力が備わっていると思うから・・・」


ミハルの手に載っている髪飾りからリーンに顔を向けて、


「私はこの髪飾りをミハル姉に託さねばならないと思ったのです。

 その力をミハル姉に渡さなければマモルを救えないと感じたから。

 だから、カスター政務官の命令に従う事にしたのです。

 軍人でもない私が陸戦騎乗りになる事を・・・

 戦闘で身を捧げる事になったとしても・・・です!」


マモルを救いたい一心で、身を戦場へ投げ出す覚悟を語るルマに、


「ルマ・・・解ったわ。ありがとう善く決心してくれたわね」


リーンが美雪の残した髪飾りを届けてくれたルマに礼を言った。

だが、ミハルは。


「ルマ・・・髪飾りを届けてくれた事は感謝します。

 けど、今からでも遅くはないわ。カスターさんの元へ帰って。

 軍人でもないあなたが戦場へ行く必要なんてないのだから」


髪飾りからルマに視線を移し、ミハルが離隊する様に言う。


「ミハル姉、さっきも言ったじゃない。

 マモルの元へ行こうって。

 私とミハル姉で、マモルを取り戻そうって・・・そう言ったじゃない!」


「けどルマは知らない。戦場がどんな所なのかを。

 軍人でもない者が耐えられる訳もないもの。

 それにルマを染めたくないから・・・地獄の心に・・・」


自らの過去を振り返り、ミハルが止めようとする。


「ミハル姉、優しいんだね今も昔も。

 でも、私は決めたと言ったでしょ。

 マモルを助ける為なら一緒に行くって。

 私の声をマモルに聞かせる為に絶対付いて行くから。

 その為に来たんだよ、ミハル姉の元に・・・さ」


ルマの決意は固かった。

ミハルが辞める様に言っても聴かなそうだと感じたリーンが、心算こころつもりを訊く。


「ルマ・・・これだけは言っておくわ。

 一度戦場に足を入れたら、そこはもう地獄よ。

 敵も見方も死者が出る。

 どんな惨い死に方をするかも解らない。

 それを受け入れられる事があなたに出来るかしら。あなたに?」


リーンの瞳を見詰め直してルマが言った。


「はい、小隊長。もう私は人の死を何度も見てきましたから。

 悲惨な死に方の者を、この目で何度も見てきましたから。

 そう・・・それが戦場でなくとも・・・」


「ルマ?あなたは一体?」


何を見てきたのか問うリーンに、


「だから大丈夫なのです小隊長、ミハル姉。

 連れて行ってください、マモルの元へ!」


ルマをジッと見ていたミハルが髪飾りを左の髪へ結い付けた。


「ミハル姉?」


黙って自分を見詰めるリーンにミハルがこう言った。


「中尉。ルマの事は私が責任を負います。

 戦闘に支障がない様に訓練を行いますから・・・

 一緒に連れて行ってやってくださいませんか。

 ・・・お願いします!」


髪飾りを着けたミハルがリーンに頼む。


「ミハルがそう言うのなら。

 ルマを無線手として同乗させるわ」


フッとため息を吐き、リーンが了承する。


「小隊長、ミハル姉!」


ルマの表情が輝き、2人に向けられる。


「ルマ・・・これから出撃までの間、みっちり教えてあげる。

 闘いがどんな物であるかを。

 そして一人前の陸戦騎乗りになって貰うからね」


ミハルが鋭い瞳でルマに申し渡した。

その眼力に少し戸惑ったルマが、それでも気丈に答える。


「は・・・はい。宜しくです!」



こうしてルマは正式に第97小隊搭乗員として認められる事となった。


その先にある戦場へ赴く為に、ミハルの特訓を受ける日々を送るルマだった・・・

ルマの決意を信じ、互いに大切な人を取り戻す為闘う事を誓い合うのだった。

ミハルは無線手として独り立ち出来る様に訓練を繰り返す。

一日も早くあの軽戦車と闘うべく・・・


次回 教練・・・

君は闘う為に出来る事を力の限り尽くそうとするだろう。

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