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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記 フェアリア第1章魔鋼騎士Ep3訓練!あの戦車を撃て!Act16

リーン少尉が小隊員に出撃を命じる。

いよいよ、その時が近付いた。

「へー。<双璧の魔女>・・・かあ。いいね、カッコ好くて」


キャミーとラミルが紋章を見上げて納得する。


「そうだな、この紋章に恥じない活躍をしなくっちゃな!」


頷きあって、車上のミハルとミリアに言った。


「そうですね。頑張りますので宜しくお願いします!」


最下級者であり、つい先日装填手となったばかりのミリアが先任のラミルに向って言う。


「私達は皆一心同体。一蓮托生なんだからな、皆で勝ち残れる様に頑張ろうぜ!」


ラミルは初めて先任搭乗員として、皆に言い渡した。


「はいっ!」


キャミー、ミリア、ミハルが口を揃えて、それに応えた。


「ふふふっ、ラミルさん。先任らしくなって来たじゃない」


ラミルが振り向くと、リーン少尉が微笑みながら立っていた。


「あっ!小隊長。このエンブレムどうです?」


ラミルがリーン少尉に側面に描かれた紋章を指し示す。


「ふーん。<双璧の魔女>・・・ね。

 いいんじゃない。でも、私は魔女なんかじゃないからね」


リーン少尉が、おどけてそう皆に言って、


「それじゃあ、先任。

 皆に言わなければいけない事が有るから、集合させて。ここでいいから」


急に真剣な顔になって、ラミルに命じた。


「はい、判りました。整備班も・・・ですね」


ラミルが訊き返すと、


「ええ、ラミル。本小隊総員集合です」


ラミルは敬礼し、


「総員集合!ガレージ!!」


目一杯大きな声で、命令を復唱する。


陸戦騎搭乗員と整備班員が、それぞれの順で少尉の前に集合する。


少尉の前には、ラミル以下キャミー、ミハル、ミリアが並び、

その横にマクドナード軍曹以下11名の整備班員が整列した。


その誰もが少尉の言葉を待って晴れやかな顔をしている。


ー  どうして皆、そんな晴れやかな顔をしているの。

   これから私がどんな言葉を発するのか解らないのに・・・


リーン少尉の方が困惑してしまう。


何度か言い出そうとしては口篭もり、なかなか最初の言葉が口から出せずにいた。


「少尉。総員待っております。

 命令を・・・出撃の訓示を下さい」


ラミルに求められ、はっとなるリーン少尉が視線を皆に向ける。

皆は少尉が言わんとしている事を感じ取っていた。

すでに出撃準備は完了し、後は命令が下されるのを待つだけだからだ。


皆に視線を向けて、リーン少尉は思った。


ー  私は良い部下を持った。

   私が皆を信じているように、皆も私を信じてくれている。

   ・・・ありがとう皆。勇気を貰ったわ!


リーン少尉は頷き、訓示を始めた。


「総員聞いてください。

 本小隊に出撃命令が下されました。

 移動先は近衛軍団、第3戦車師団。

 エンカウンター30キロ西方の師団司令部。

 出撃は明朝0900。

 総員で移動配属となります。

 この城には戻らないものと考えて下さい。

 明日の出撃に備えて、本日の訓練は休止。

 総員で明日の準備に懸かって下さい。以上です・・・」


リーン少尉は口を噤むと、皆を見渡した。


隊員達の顔には何の暗さも見出せなかった。


「小隊長、解散しますか?」


ラミルがリーン少尉に訊くと、


「はい。伝えたい事は全て言いました」


「では、解散させます。総員敬礼!」


ラミルがリーン少尉に敬礼しリーンが答礼を終えると。


「総員解散、持ち場に戻れ!」


敬礼を終えて解散を命じた。


ー  何も言わなくてもラミルも皆も自分の役割を解っているんだね。

   私も小隊長として頑張らないと・・・


リーン少尉は部下たちが急に頼もしく思えて嬉しかった。


微笑んだリーンが指揮官室へ戻ろうと歩き出すと、


「小隊長。お話が有ります。宜しいでしょうか?」



挿絵(By みてみん)


ミハルが駆け寄り訊いてくる。


「何かしら?」


気軽く聞き返すリーンに、


「少尉は、どんな能力<チカラ>が有るのですか?

 私は見たことが無いので・・・教えて頂けないでしょうか?」


真面目な顔で、ミハルが訊くと、


「ミハルは見ていなかったかな。そうね、そうだったわね。

  ・・・私の能力を知っておいて貰わないとね」


リーン少尉も真剣な瞳で、ミハルを見返す。


「はい、知っておいて無駄ではないと思うんです」


ー  そう。

   私もミハルの能力を知っておくべきなんだわ。これからの為に・・・



「よし、ミハル!

 これからお互いの能力を知りましょう。

 搭乗員に配置に付いて貰って下さい!」


リーン少尉がリンとした声で命令を下す。


「はいっ!」


ミハルが敬礼し、搭乗員に復唱する。


「搭乗員、乗車っ!配置に付けっ!」


ミハルの声にラミルが操縦席にキャミーが無線席へ、

ミリアが砲塔側面ハッチから装填手の位置へ、

ミハルも砲塔側面ハッチから砲手席へ駆け込む。


そしてリーンがキューポラから車長席に付きヘッドフォンを耳に当てた。


キューポラに着いたリーンが喉頭マイクロフォンを押して、


「皆さん、これから私とミハルの魔鋼力をテストします。

 二人の力を同時に使用した場合、如何なる能力を出すのか。

 調べてみます、宜しいですね?」


「了解!」


4人が同時に返事した。


「ミハルさん、それではいきますよ」


「はい!了解です」


リーンはミハルが右手のブレスレットを砲に翳すのを確認して、胸のペンダントを手で握り締めた。


ー  初めての2人同時発動。

   この試作戦車の能力が、今解る。

   今、この為に造られたこの戦車が魔鋼騎として真の姿を現す・・・


リーンは握り締めた魔法玉に力を込めて、


「国を憂う魔女の魂よ、我に能力ちからを示したまえ!マギカ・スピリッツ!」


右手を伸ばしてネックレスの魔宝玉を掲げる。


ー  私はもう迷わない。

   私に能力があるのなら、その能力を使う事を躊躇わない。

   私は強くなりたい。

   自分の為に、そして皆を護る・・・その為なら!


ミハルの胸にこみ上げてきた言葉を口にした。


聖魔魂ホーリーマギカスピリット!」


リーンの魔宝玉が青の光を放つ。

ミハルのブレスレットの宝珠が、蒼き輝きを放つ。


二つの光が重なり合い、そして車体全体が青い光を放ち出す。


「こ、これが小隊長とミハルの能力。偉大な<双璧の魔女>の力!!」


マクドナード軍曹が目を疑う。


MMT-3が青い光を放ち、

車体の<双璧の魔女>を模った紋章が青紫色に輝きそれに伴って車体が変形しだした。


主砲が更に長くなりキャタピラ幅が太くなり、前面装甲が傾斜する。


「なんてこった!こいつはVK-20-2と同じ車体じゃないか。進化したのか?」


マクドナードは目の前にある車体が、変化した事に驚いた。


MMT-3の原型3号戦車が新式の4号どころか、

テスト車両のVK20型になった事に驚く。


「ミハル!そっちはどう?もっと能力を高められる?」


リーンがミハルにもっと能力を出せるか訊く。


「少尉?どうやればもっと力が出せるのですか?」


「えっと、そうね。

 私も良く解らないけど、もっと力を込めて願ってみて」


「はい、やってみます!」


ミハルは答えると同時に手に力を込めて祈った。


ー  もっと強く。

   皆と一緒に居たい。

   護りたい、この友を、この・・国を!!


ミハルの瞳が青く輝く。ミハルの髪が碧く染まる。


((ギュルルルルッ))


ミハルの力が更に強まり、更に驚くべき変化が起こる。


「何だと!」


マクドナード軍曹は腰を抜かさんばかりにへたり込む。


「う、嘘だろ。これは・・・」


車体が全く別次元の物と化す。


「中戦車!?まだ・・・見た事の無い・・戦車パンツァー


車体はひと回り大きく転輪も大きく、キャタピラは更に太く。

前面装甲は傾斜装甲となる。


ー  この能力・・・私一人では出せなかった。

   ミハルと合せる事で新たな変化を生んだのかしら。

   それとも私の能力よりミハルの能力が上回っているの?


リーンは己の能力以上を出す車体の変化に驚いた。

車体は外部だけではなく内部をも変えていく。


ー  凄い。

   ペリスコープも、キューポラ自体をも変えて・・・

   もうMMT-3ではなくなって未知の車体と変化していく!


リーンは車内を見渡してその変化に戸惑う。

そして、砲手席のミハルの変化に気付いた。


「ミハル?・・ミハル!」


ミハル自体が碧い光に包まれて、風も無いのに髪が舞い踊っている。


ー  いけないっ!力の暴走が始まっている!


車長席から飛び降り、ミハルの肩に手を掛ける。


((バチッ))


リーンの手がミハルに触れた時、強烈な電気がミハルの身体から発せられる。


「ミハル?しっかりして。自分を見失わないでっ!」


リーンが手を引き叫び、ミハルを正気に戻そうとする。

そのリーンを押し退けて、


「ミハル先輩!しっかりしてっ!正気に戻って下さい!」


ミリアが、電撃を放つミハルに抱き付いた。


((バチッバチッバチッ))


ミリアを電撃が襲う。

ミハルの能力が暴走するのを食い止める為、ミリアが身体を張って食い止めようとした。

次回Act17 暴走・・・娘。

君は大切な人に何を求めるのか

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