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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act18修復魔法

激戦続く車内で、マリーとロナは力の限り闘った。

敵弾に襲われても・・・

自分達が必ず勝つと信じて・・・

曳光弾が行き着く先は・・・


ー  なっ!なんだと?


マリーの思惑を超えた事態が発生する。


((グワアアアンッ))


命中音が轟く中、


「馬鹿なっ!奴等は身替りになったのか?<双璧の魔女>を護る為に!?」


マリーの眼には必中の弾が横合いから出て来たもう一両の重戦車によって阻まれる光景が映った。


「カバーに入った敵重戦車、斯座。

 その後方に居る重戦車は無傷です!」


言われるまでもなかった。

舌打ちをしたマリーが照準鏡を睨みつけながら叫ぶ。


「敵は気付いていやがったんだ。

 ロナ!まだ斯座した奴は闘うつもりだ。

 砲塔を此方に向けてきたぞ。APを装填!

 先に手前の重戦車にトドメを刺す!」


ロナに装填を急がせ、照準鏡で捉えている手前の重戦車を撃とうと睨む。


((グオオオムッ))


マリーがAP弾を放つのと、斯座した重戦車が撃ってくるのとが同時だった。


ー  車体前面なら多分弾き返せるだろう。大丈夫・・・


飛んでくる弾を見て、命中は覚悟の上だった。

双方がほぼ同時に放った弾は・・・


((グワアアーンッ))

((ガッ!バギャアッ))


マリーの放った弾を受けた敵は爆発炎上し、砲塔が噴き飛んだ。

撃破を確認する暇も無く、弾の命中音と衝撃が襲ってきた。


「くそっ!何処をやられたんだ?被害報告!」


マリーがトータとタランに命じる。

2人の若い兵が、慌てて被害を探る。


顔を青ざめたトータが叫ぶ。


「右側転輪が動きません!キャタピラを切られましたっ!」


「何だとっ!」


マリーが叫ぶ。

砲塔を持たない駆逐戦車が動力系を破損すれば、

それは戦闘不能を意味しているからだ。


ー  やられたっ!倒した敵は始からキャタピラを狙って撃って来たのだ。

   自分達の仇を<双璧の魔女>に討たせる為に・・・


臍を噛むマリーが、呆然と照準鏡を見て思った事は。


ー  目の前に奴が居るというのに。

   やっと闘う事が出来るというのに。

   最早、狙うことさえも出来ないというのか?!


失望で瞳を曇らせるマリーの眼に<双璧の魔女>が、

撃破した車両を追い越し此方に突撃して来る姿が写る。


「まだ闘えますマリー。私が直して見せますから!」


突如マリーの後ろでロナの叫びが聴こえた。


「ロナ?ロナがどうやって・・・」


振り返ったマリーの瞳に、両手を翳し、瞳を青く染めたロナの姿が映る。


「魔法・・・魔法で直そうというのか!?」


「はい、諦めてはいけません。私達は勝たねばなりませんから。

 譬え私がどうなろうともマリーには勝って頂かねばなりません!」


必死に魔法力を使い、車体を直そうとしているロナに、


「解ったロナ、頼む。

 トータっロナが直してくれたら直ぐに突っ込んで来る奴に正面を向け続けろっ!」


ロナの魔法力に希望を持ったマリーが再び闘う意思を漲らせる。


ー  ロナ・・・お前が居てくれる限り私は闘える。

   お前が望む限り私は闘う。決して諦めたりしないぞ!


諦めぬ力を持ったマリーの瞳が敵を睨む。


「奴を近付けさせんぞ、トータ。まだか?」


「まだです!あと少しっ!」


ロナの回復魔法でキャタピラが直るまで30秒位掛かる。


「直りましたっ!動けますっ!」


トータが操縦桿を動かすと車体の向きが変わった。


「よしっ!発砲するっ!」


マリーが軸線に捉えた重戦車の砲塔に十字線を合わせる。


「ロナ!いくぞ! 撃てぇっ!」


マリーが発射杷弊を握り締めた。


((グオオムッ))


必中の弾は敵重戦車へ放たれた。


「何!?」


マリーの瞳に敵もこちらへ向けて砲撃して来たのが解った。


ー  くそっ、奴も捉えていたか!


舌打ちするマリーに衝撃が襲う。


((ガッガガーンッ))


貫通はされなかったが、強烈な衝撃波が車内に襲い掛かり、

取り付けてあったビスが抜け、車内に弾き出される。


「くっ!」


何本かのビスがマリーに当たり、服を引き裂く。


「ロナ!大丈夫かっ?」


照準鏡から目を離さず無事を確認する。


「はい、マリー。奴もまだ生きています!今一度射撃をっ!」


次弾を装填したロナが叫ぶ。


「ああ!次こそっ!」


側面に廻り込もうとする重戦車を狙って車体が廻り続ける。


ー  このまま側面を取るつもりだな。そうはさせるか!


照準鏡の中で敵がこちらに向けて砲塔を旋回してくるのが映し出される。


「敵の揺れが収まっている。今だ!」


((グオオオムッ))


マリーが偏差射撃をかけた。

だが・・・


ー  何!?停まりやがったのか!


急停止した敵がこちらに発砲した。


((ガガンッ バリバリッ))


此方の弾は数メートル敵の前方を虚しく通り過ぎ、

逆にまたしても右側のキャタピラを切られてしまう。


「くそっ、また足回りを切られたのか!?」


「奴は私達の正面装甲を撃ち抜く事が出来ないのを悟ったのです。

 側面を取るつもりです。

 廻り込まれる前に撃破しましょう!」


ロナが回復魔法を全力でかけて叫ぶ。


「ああ!何としても奴を倒さなければ!」


回復魔法でキャタピラが直る。


「トータ!急げっ奴に側面を捉えられる前に!」


敵魔鋼騎はグングンと近寄り、その距離はもう1000メートルを切ろうとしている。


ー  早く。早く!奴を撃てる角度まで!


マリーの焦りが頂点に上る。


照準鏡の中に敵が入りつつある。


ー  もう少し、いま少し!


十字線の中に捉えられそうになった。

その時!


((ピカッ))


敵重戦車の砲口から発射光が・・・


ー  あっ!


声にも出ない無念の叫びが洩れる。


((ガッ グワンッ))


右側面下部を貫いた弾が衝撃を伴って車内を襲う。


ー  右側の動力が・・・もう直す暇も無い!


マリーの思考が停止する。


ー  ロナ・・・もう・・・無理だ・・・


ロナが必死に回復魔法で車内に被害が及ぶのを防いでいる。


挿絵(By みてみん)


ー  マリー・・・もう・・・


ロナの回復魔法でも、もう間に合いそうになかった。

2人の瞳が最期を悟り曇る。


ロナもマリーも、判っていた。


この闘いが敗北になった事を。


そして、ロナが決心していた事を行わねばならなくなった事を悟る。


最後の瞬間、闘う者は何を想い、何を願うのか・・・

マリーの前で起きた事は、これからの闘いにどう作用する事になるのか。

大切な友の、その願いは果されるのか?


次回 闇の中へ

君はその力を、友との約束を破ってまで求めてしまうというのか?

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