魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act13直撃
フェアリアの魔鋼騎との一騎討ちに立ち向かうマリー。
青く輝く紋章を浮かび上がらせたその姿に古からの宿命を感じ取る。
その時マリーの瞳に写ったのは・・・
フェアリアの魔鋼騎が砲塔を此方に向け、間合いを詰める為に突撃して来る姿だった。
ー 奴も気付いたのか?
私が古の紋章を受け継ぐ者だと・・・
突撃して来る敵魔鋼騎に照準を合わせつつ、マリーが考えを巡らせる。
だが、次の瞬間には只闘う者の本能が先走る。
「奴を近付けさせるな!奴の砲は危険だ!」
ダリマに命じる。
「奴との距離を保て!走行射撃を掛けるっ!」
敵魔鋼騎の接近に併せて距離を保つ為に進行方向を変えるマリー。
近寄らせまいとしての行動は、敵にチャンスを与える事になる。
それを解っていてもマリーは射撃をやめない。
ー 近寄られる前に、足を止めなければ・・・
照準を合わせて攻撃続行を決め、射撃杷弊を握る。
((ボムッ))
マリーの狙いは敵のキャタピラ。
だが敵も全速で走っている為か、思う様に射弾が的を捉えられない。
「くそっ、以外に素早いな。それに巧い事かわしやがるっ!」
次々に射撃を繰り返すが、後少しの処でかわされてしまう。
((ボッムッ))
近寄られて機動戦を挑まれる前に、
その足だけでも止めようと車体下部を狙う。
その中の一発が至近弾となる。
ー くそっ!後少し。もう少しなのに・・・
漸く当った弾も、斜めに傾斜した装甲に弾かれてしまった。
ー くそっ、こうなれば停車して直接照準で狙わなければ。
奴の弱点に直撃を喰らわす事が出来ない!
マリーは埒のあかない戦闘に見切りを付けた。
「いいかダリマ、私が停車を命じたら急停止をかけろ。一発でケリを付けてやる!」
マリーの命令にダリマが頷く。
「了解!」
ダリマはマリーの射撃に絶対の信頼を持っていた。
躊躇いも無く復唱する。
「マリー少尉!?」
只、ロナだけが停車する事に危機感を募らせて、マリーを見ただけだった。
照準鏡の中でフェアリアの魔鋼騎が徐々に接近してくるのが写る。
ー 奴の装甲は厚い。
ならば車体側面後部エンジン部分を撃ち抜いてやる。
そこをやられたら、さしもの魔鋼騎だとてただでは済むまい!
マリーは照準鏡の中で敵が側面を見せるタイミングを計った。
そして、その時は来た。
敵の魔鋼騎が一瞬左に舵を切ったのが見えた。
ー 今だ!
マリーが勝負をかける。
「ダリマ、敵に正面を向けて急停止しろっ!」
マリーの命令に従い、ダリマが急ターンをかけて停車させる。
マリーが照準鏡の中で敵に狙いを絞る。
その照準鏡の中で、マリーの思惑を覆す事が・・・
ー 何!?
十字線に捉えていた敵魔鋼騎も、急ターンをかけ停車する。
その為軸線が狂い、十字線から車体が外れてしまった。
ー しまった!?よまれていたか!!
慌てて今一度狙いをつけ直すマリーには、
その一瞬が何時間にも感じられた。
マリーは発射杷弊を握る瞬間、思わず手に力が入ってしまった事に気づかない程焦りを感じた。
ー チィッ!間に合うのかっ!?
敵より早く射撃しようと焦るマリーは修正を掛ける前に撃った。
((グオオンッ))
硬芯徹甲弾が、砲身を飛び出し敵へと向う。
マリーの目に敵もほぼ同時に発砲したのが解り、
ー いかん!捉えられたっ!
考えと同時に口から出た言葉は。
「さけれんっ!直撃だ!」
後悔と絶望の声が、絞り出された。
((ガッ))
猛烈な衝撃と破壊音。
何が起きたのかも、自分がどうなったのかも解らない。
ただ、その赤黒い澱んだ瞳を見開くだけがマリーの取れる行動だった。
見開いた瞳に写る絶望的光景。
前面装甲を突き破ってきた弾が、炎と破片を撒き散らす。
断末魔の叫びすらあげる事も叶わず、
車体前方から破壊波が車内を駆け巡る。
炎と煙。
破片と肉片が車内を充満する。
マリーの瞳にはダリマとカラムが一瞬の内に姿を変え、
消し去られてしまうのが映った。
ー ああっ、ダリマ!カラム!
考える間こそあれ・・・・
自分も同じ運命を辿ると思っていた。
絶望に霞む瞳の隅に青く輝く何かが見え、ロナの呼ぶ声が聴こえた様な気がした。
((バッガーーンッ))
火災に焼かれ、衝撃を受けた予備砲弾が誘爆し、KG-1の砲塔が噴き跳んだ。
完全に破壊されたKG-1は、黒煙を噴き上げ燃え続ける。
一発の魔鋼弾が車体を貫き、破壊と死が捲起こる。
マリーの瞳に写るのは絶望の闇。
その闇の中から一人の声が聴こえた。
次回 亡失
君は仲間と共に消え去る運命なのか・・・





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