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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士Ep3Act15訓練!あの戦車を撃て!

ミハルは両親の話から、過去を思い出して話し出した。

車庫で3人が新たな塗装を施された車両を見詰めていた。


「軍曹、東洋の魔女団ってあの?

 <<東洋のジブラルタル>>を一晩で陥落させたと言う最強の魔鋼騎兵団ですか?

 ・・・その副隊長がミハル先輩の母上様?」


「そうらしいな。

 曹長が訊いたと言っていた。

 その旦那が技術士官のシマダ教授、ミハルの父らしい。

 我国に魔鋼機システムを技術支援してくれた救国の士だそうだ」


「うわあ、そんな偉い人の子女だったんですか。ミハル先輩って」


ミリアが瞳をキラキラさせてミハルを見ると、


「?先輩、どうしたんです?」


ミハルは暗い顔をして俯く。


「偉くなんて無い。

 父も母さんも、もう居ないから。

 もう何処か遠くへ行ってしまったから。私と弟の二人を残して・・・」


ミハルは涙を瞳に湛えて、歯を食い縛る。


「え?先輩のお父様やお母様は、どうされたのです?居ないって?」


「ミリア。

 私の両親は戦争が始まったあの日、研究所諸共消えてしまったの。

 あの爆発と共に・・・

 私とマモルを残して。

 この国でたった一人の肉親の弟だけを残して・・・」


ミハルは涙を流して辛い過去を話す。


「センパイ・・・」


ミリアはなんと言って声を掛けたらいいのか、判らず黙ってしまう。


「私達姉弟は、大使館に行ったけど帰国は許されなかった。

 戦争が始まった為に書類が失われていて本人確認さえしてもらえず、

 私達姉弟はこの国で生きていくには学校を頼るしかなかった。


 私達は全寮制の幼年学校に入っていたから戦争が終わるまでの間、

 大使館が認めてくれるのを待つ間だけでも、学校に居る事にしたの。

 だけど、僅か3ヶ月で話が変わったの。


 ミリアも知っている通り、

 男女を問わず15歳になった生徒は全員適性検査を受けさせられて、

 短期養成の後、戦争の中へ放り込まれた。


 私は戦車兵を命じられて、戦車学校へ入れられて1ヵ月後にはあの連隊へ配属させられた。

 ・・・そして、知っている通り連隊は全滅し私一人だけが生き残った・・・」


「ミハル先輩はどうして断らなかったのですか?

 先輩は外国人です。移住したと言っても拒否できた筈なのに、どうして?」


「ミリア、私には弟が居るの。2つ年下のマモルが学校に居るの。

 私がもし断ったら、マモルが生きていけなくなる。

 学校から追い出されてしまうの。

 姉弟の内どちらかが軍へ入らなければいけなかったの・・・


 だから私が軍へ行く事に決めたの。


 それが弟を守る事に為るのなら、私は進んで軍人に為る事を承諾したの。

 弟と別れる時、言ったわ。マモルを守るからって、

 マモルさえ生きててくれれば私はどうなってもいいって」


ミハルは泣き崩れて膝をつく。


「ミハル・・・先輩・・・」


ミリアはそんなミハルに近付く事さえ出来ず名を呼び掛ける。


「そうしたら弟が言うの。

 姉さん死なないで・・・生きて帰って来いって、約束しろって言うんだよ。


 私、約束しちゃったんだマモルと。


 どんな目にあっても生きて還ると、必ずマモルとヤポンに帰るって。


 ・・・馬鹿だよね。軍人がそんな約束しちゃあ駄目なのに・・・

 弟を一人ぼっちにしちゃあ駄目だったのに。


 私・・私は・・・その約束の為に一人、生き残ってしまった。

 隊長以下友達や先輩、上官が私の約束を知っていて私の身代わりになって死んでいった。


 ・・・私は彼らに何と詫びたら言いの。

 どうしたら許してもらえるのかな。


 夢の中で彼らに会うと何時も哀しそうに私を見ているの。

 私を見て何かを話そうとしているのに、聞こえないんだ。

 私が手を伸ばして求めるのに、皆消えてしまう・・・


 夢なんだって思っていても苦しいんだ、辛いんだ、悲しいんだ。

 助けて欲しくても誰にも判って貰えない。

 ・・・そう、この小隊へ来るまでは・・・ね」


ミハルは泣きながら二人に話す。



「ミハルには守らねばならない事が多すぎるんだな。

 一つでいいんじゃないか、守ることって」


マクドナード軍曹が、ため息をついてミハルに語りかける。


「えっ?ひとつって?」


「ああ。たった一つだけでいいんだよ。

 それはな、自分自身を守るって事さ」


ミハルはマクドナード軍曹を見て訊く。


「自分自身を守る?どう言う事なんですか?」


マクドナード軍曹が、腰に手を当てて、


「解らないのかい?

 それは皆が願ったことさ。

 弟君も死んでいった友も、そしてオレ達もそう願っている。

 お前さんが生き続ける事を。

 死なない事を。

 お前さんが守るべきは自分自身。

 他の誰でもない、ミハルがミハルを護るんだよ」


「私が私を守る?」


「そう、お前さんが自分を守るって事は同時に他の人を守る事にもなるのだよ。

 特に陸戦騎乗りとしてはな」


マクドナード軍曹は、ミハルの肩に手を置いて、


「護ってやれ、己の事を。

 強くなれ、自分自身の為に・・・な!」


「・・・はい、軍曹。私、強くなりたいです。

 強くならなきゃ駄目なんです。私自身の為に、皆の為にも」


マクドナード軍曹は、笑い掛けて、


「そうだ、強く生きる事だけ考えていればいい。

 それこそオレ達の約束だ。もう苦しまなくていいんだぞ?!」


優しく諭す様にマクドナード軍曹はミハルに言った。


「ミハル先輩、私も強くなりたいです。先輩と一緒に、強くなりますから!」


ミリアの瞳に感動の涙が光っていた。



「さーてっ、話を戻すが、こいつで良いよな。ミハル?」


指で紋章を指して、マクドナードが訊く。


「は、はあ・・まあ」


ミハルはまだ気後れして、口を濁すが、


「<双璧の魔女>は、リーン少尉とミハルを指している訳ではないのさ。

 その遺志を継ぐものという意味を表しているんだ。

 国を守り、民を導くという本当の意味を・・・さ」


マクドナードが、秘めた想いを語る。


「そんな大きな意味があったのですか。この紋章には!」


ミハルが見詰る。


青色で描かれた逆円錐形の枠の中に2人の魔女が双方向に向き、剣と槍を手にしたこの紋章。


<双璧の魔女>が意味する救国がどんな物なのか。


それを知る事になるのは、まだ先の事であった。


リーン少尉は意を決して、皆に命令を伝達する。

出撃命令が下った事を・・・。

次回Act16

君は黙って命令を訊く事が出来るか?

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