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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act11マリーの宿命(さだめ)

挿絵(By みてみん)


初陣を闘ったマリー達に次なる戦場が待っていた。

その戦いの中、自らの宿命を告げた。

過去の悲惨な体験が脳裏を掠め去った。


ー  私の初陣はあまりにも悲惨だった。

   私の重戦車KG-1は、その時は無敵を誇った。

   だが、車体に疵は付けられなくても身体は・・・

   心は無惨にも傷付けられ、壊れかけていた・・・


軽戦車の一部となったマリーが思い出していた。


ー  その壊れかけた心を闇から救ってくれたのが、

   私の装填手ロナ。

   あの娘がいなければ私は当の昔に壊れていただろう。

   そんなロナを奴は奪い去った・・・殺したのだ!


再び闇の力で瞳を赤黒く染めたマリーが自分を堕とすきっかけになったあの戦いを思い出す。


ー  そう、あの日まで・・・あの時までは私は人の心を持って闘っていた。

   あの戦車と撃ち合うまでは・・・




__________________________________




((グオオオッムッ))


フェアリアの小うるさい軽戦車に発砲する。

仲間の2両を斯座させたその軽戦車は、青く輝く紋章と共に破壊された。


「ふうっ、邪魔をしおって。さすがに魔鋼騎と言ったところか」


マリーが一息吐いて射撃を中断する。


「マリー少尉!中隊長から連絡です。斯座車両と共に一時進撃を中断する・・・とのことです」


カラム無線手が、マリーに報告する。


その報告にマリーは逃げ去るフェアリアの中戦車を目で追いながら、


「ふむ。では、私達も小休止といくか」


射撃杷弊から手を離してマリーが肩を回して一息吐いていると、


「少尉、お疲れ様です」


いつの間にかロナがマリーの後ろに来て、


「ん?おっ おおっ。 ロナ、すまんな?」


マリーの肩を揉み出した。


「ふふふっ、マリー少尉は私の肩揉み、お好きですから」


ロナが微笑んでマリーの顔を覗きこむ。


「フ、ふん。別にロナの肩揉みが好きな訳ではない。

 ロナの肩揉みが巧いからだ」


ロナに微笑み掛けられてマリーが苦笑いを浮かべた。


「はい!」


屈託のない笑顔を向けてくるロナに、テレてそっぽを向くマリー。



「車長。中央を進撃する第7師団から連絡です。

 <進撃し、敵を撃破セヨ>・・・との事ですが?」


カラム無線手が命令を伝達する。


「むう、人使いの荒い連中だな。カラム、中隊長から何か言ってきたか?」


「いえ、今の処は何も・・・」


マリーの問いにカラムは首を振る。


「まあな、2両のキャタピラが直るまで動きたくとも動けんだろう」


ロナに肩を揉まれて心が幾分軽くなったマリーも、

これ以上の闘いは気が進まなかった。


「先程の闘いで合計6両。

 今迄の戦果とあわせて17両も撃破したんですからね。

 もう還らせてくれてもいいと思うんですがねぇ?」


ダリマが操縦席で愚痴る。


「まあ、そう言うなダリマ。作戦も終っていないのに勝手に帰る訳にもいかんだろう」


「はあ、それもそうですね」


諦め顔のカラムも頷く。


「マリー少尉。17両の撃破なら、後一両で皇帝陛下の勲章が頂けるのじゃないですか?

 確か18両撃破すると、破壊王章を授けられるって話だったと思うのですが?」


ダリマが気が付いた様にマリーに言った。


「それがどうした?私はそんな勲章の為に闘っている訳ではないぞ」


マリーが答えると、


「それでは車長はどんな訳があって闘っておられるのですか?」


反対にダリマが訊き返す。


「私か?私が魔鋼騎乗りとなって闘う理由は只一つ。

 私の弟を殺した奴等に復讐する為だ。

 その為に私は戦車兵の道に入った。

 偶然の巡り合わせでな」


「車長・・・。マリー少尉の弟さんは?」


ロナが手を止めて訊く。


「ああ、フェアリアとの紛争でな・・・戦死したんだ。

 フェアリアの戦車に踏みにじられたんだ、私の弟は」・・・


マリーの言葉にロナは顔を曇らせる。


「そうだったのですか。それで少尉は戦車兵に・・・」


カラムがマリーの心情を想い声を詰まらせる。


「まあ、それも一つの理由だがな。

 魔鋼騎乗りになったのは、これが理由さ」


マリーはポケットの中から一つの石を取り出した。

赤く妖しく輝く石を手の平に載せたマリーにロナが訊く。


「綺麗な石ですね、見ているとなんだか心を奪われてしまいそう・・・」


ロナが見入っているとマリーがポケットに戻し、


「これが・・・この石が弟の形見なんだ。

 この石が私の運命を教えてくれたんだ。

 私が魔法使いだと言う事を。

 そしてあの日、私は試作魔鋼騎に触れてしまった。

 そして軍に拘束されたんだ・・・」


ロナはマリーが遠い目をして話すのをじっと聴いていた。


「あの日、私は弟の仇を討ちたいと願い、軍の試験場へ行った。

 どんな兵器が造られているかも知らずに。

 そして一人の黒髪の男と出会ったんだ。

 その男はロッソア語は喋らず、

 何処か遠い所から連れて来られたみたいで、辺りに監視する者達が付いていた。

 私を見るや否やその男が変な機械を私に突きつけたんだ。

 すると先端に付いた青い石が光を放った。

 辺りの人間も私も驚いたが、それが魔法力検査機だと気付いたのは、

 私が戦車兵に強制的にされた時だったんだ」


遠い昔話をする様にマリーは語った。


「マリー少尉・・・それで魔鋼騎乗りになられたのですか?」


ダリマがマリーに振り返り、その顔を見上げた。


「まあ、私も願っていたのが半分位あるからな。

 それに私の宿命さだめも解ったから・・・」


マリーが顔を俯かせて声を詰まらせる。


「マリー少尉の宿命って、何なのです?」


ロナがそっと訊くと、


「私達の車両に描かれた紋章。それが何を意味しているか知っているよな」


マリーが皆に訊く。


「ええ、ロッソアの伝承に出てくる魔女。

 フェアリアの魔女と闘い続けた伝説の魔女。

 <大蛇の紋章>を掲げる闘剣士を現しているんですよね」


カラムが当然と言わんばかりに答える。


「ああ、そうだ。その紋章が何故この車両に描かれてあるのか知っているか?」


マリーの突然の質問に3人は返事に戸惑う。


「それはな・・・私がその魔女の継承者だからだ」


マリーの言葉に3人は言葉を失う。


「マリー少尉・・・言っておられる事が解らないのですが?」


ダリマが首を捻って聞き返す。


「マリー少尉が伝承の魔女?はははっ悪い冗談を?」


カラムも苦笑いをして訊ねる。


「マリー、マリーベルがあの伝説の紋章を受け継ぐ者なのですか?

 あの大魔法使いの継承者?」


ロナだけがその真意を悟り、真実を求める。


「そうらしいな。昔から時々何者かの声が頭の中でしていたのだが。

 この魔鋼機械に触れてからは、よりはっきりと聴こえる様になったんだ。

 そいつ、<大蛇の紋章>を掲げて闘った者の声が・・・」


ダリマもカラムも声を失って呆然とマリーを見た。


ただ、ロナだけが瞳を潤ませてマリーを見詰めていた。


運命に導かれる様に命令に従い味方の援護へと向うマリー達。

その前に現れたのは・・・

次回 最初の邂逅

君は生き残る事が出来るか!?

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