魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act4碧き色に
ミハルは身体を休める為にリーンと食事を摂っていた。
疲れ切っているミハルは食事中に知らず知らず居眠りをしてしまっていた・・・
「ミハル・・・ミハル?」
リーンが目を丸くして、声を掛ける。
「ん?なに?・・・リーン」
呆けっとした顔でリーンを見るミハルに、
「食べながら寝るのって・・・赤ちゃんじゃないんだから。
疲れているのは解るけど・・・」
リーンが呆れた様にナプキンでミハルの口元を拭ってやる。
「あ、ありがと」
うつらうつらしているミハルがリーンに礼を言って、
「あれ?私・・・何しているのかな?」
半ば呆けているミハルに、呆れたリーンが、
「ミハル・・・大丈夫じゃないみたいね。
今は食事を摂っているんでしょ。しっかりしなさいよ?」
「えへへ。ちょっと眠っていたみたい・・・ごめん」
ナイフとフォークを置いて謝るミハルに、
「ねえミハル、キャミーの事は私にも責任があるの。
辛いのは私も同じなのよ、判って?!」
「う、うん。リーンも隊長としての責任が・・・」
「そうじゃないっ!!」
いきなりミハルの言葉を遮ってリーンが叫ぶ。
周りに居た人が2人を見る。
「えっ?リーン・・・どうしたの?そんな大きな声だしたら他の人に迷惑だよ?」
ミハルが戸惑う様にリーンに言っても、
「ミハルが撃たれ様としていた時、私は間に合わなかった。
もし、間に合っていたなら私がきっとキャミーと同じ目に遇っていた筈。
キャミーは私の身替りになったのよ!
ミハルと私の身替りになって撃たれたのよ!
この私とミハルの身を護る為に撃たれたのっ!」
叫ぶリーンにミハルが気付く。
あの時、自分を呼んだ声が重なり合っていた事を。
「リーン?」
ミハルが見詰めるリーンの瞳から大粒の涙が零れ落ちていた。
「辛いのはミハルだけじゃないの。私だって、リインさんだって同じ。
そしてあなたを護ってくれている人達にとっても同じ想いだから・・・」
真剣な瞳で言うリーンの姿に、大切な何かを気付かされる。
真剣で優しいその顔に、自分を守って亡くなった2人の顔が重なる。
ー ターム、アルミーア・・・あなた達もそう思ってくれているの・・ね?
ミハルの想いに二人が頷く。
ー そうか・・・そうだよね。・・・・ありがとう
ミハルも頷き返して、リーンに言った。
「そうだねリーン。ごめんなさい、そしてありがとう!」
微笑んで応えたミハルに、
「うん、解ってくれたらそれでいいの。
それにあの人がきっとキャミーを治してくれる筈だから」
そう言ってリーンが病室の方へ顔を向けた。
「さっきの看護婦さんの事?彼女は一体?」
ミハルがキュリアの事を訊く。
「そっか、今ミハルの宝珠には、ミコトさんが居ないんだったわね。
それじゃあ教えてあげる。
あのキュリアさんはね、リインさんの時代からの医療師。
私達と同じ継承者なの、伝説の魔法使い仲間なんだって。
そうリインさんが教えてくれたの」
「えっ?<双璧の魔女>と同じ伝説の魔法使い?その継承者?」
リーンに教えられて驚くミハルに、
「そうなんだって。何でもリインさんが手傷を負ったのを、一晩で治したらしいんだよ。
善くユーリ姉様が見つけられたなって。
私達の元へ送ってくれたなって・・・感謝しているとこなの」
ちょっと遠い目になってリーンが話す。
「そうなんだ。ありがたいねリーン。ユーリ皇女様に本当に感謝してますって伝えてね」
「うん、キャミーが治ったらね。
それより今、私が気になってるのは・・・」
リーンが話を変え、ミハルを見詰め直す。
「えっ!?なっ、何? リーン。」
ジトっと自分の顔を見るリーンにドキリとしたミハルが、ちょっと身体を引く。
「何・・・じゃないわよ。
どうして髪を切っちゃったの?
どうして瞳も髪の色も碧くなっちゃったのよ?」
リーンがミハルを見詰めて訊いて来る。
「えっ、あっと。それは・・・」
「それは?」
口篭もるミハルに追い討ちを掛けるリーン。
「髪を切ったのは神様に願掛けするつもりで切ったんだ。
キャミーを救って下さいと願う為に。
でも、髪も瞳の色も碧くなったのは私にもどうしてなのか解らないんだ、ホントだよ?」
ミハルが困った様に髪を摘んで答えた。
「ふむふむ。ミコトが居なくなっても魔法力が落ちていないみたいだから。
きっとその姿が魔法使いとして目覚めたミハルの本当の姿なのでしょうね」
突然、リーンの身体をリインが乗っ取り話し出した。
「わっ!?リインさんですか?また突然・・・」
ミハルが驚き、注意しようと声を出すのを遮って、
「ミハル。あなたは私と違い真性の魔法使いだったみたいね。
あなたは今、ミコトの魂から離れているのに魔法力がある。
・・・能力が落ちていない。
それはミコトと同じ、真性の魔法使い。
誰かに力を授かったのではなく、神に与えられし能力者。
この世界の中でも数少ない本当の魔法使いなのかもしれない。
あの機械に頼らなくとも、私達の継承者として力を求めなくとも、
自らの意思で力を発揮する事の出来る・・・・。
神に授けられた力を持つ者。
神託の使徒・・・なのかもしれないわね」
リインがミハルの瞳を見て教える。
「は・・・い?私が神の使徒?」
戸惑うミハルが小首を傾げる。
「そう、ミハルが魔法使いだとしても魔力の行使には、それ相応の知識が必要だわ」
「は?・・はあ・・・」
ミハルは訳が解らず、リインを見詰める。
「あ、あの?それってどう言う事なのでしょうか?」
全く訳が解らないミハルがリインに訊ねる。
「それはミコトに教えて貰ってくれないかな。
私も善くは解らないから・・・その・・魔法の呪文はね?」
リインが頬を掻いて困った顔で答えた。
「はあ?」
益々訳が解らなくなるミハルが承諾だけして。
「でも、私の瞳と髪の色って元に戻らないのでしょうか。
とても普通じゃない色なので・・・」
髪を摘んで、その碧い色に戸惑うミハルが訊くが、
「うん。それもミコトに訊くといいと思う。ごめんなさいね、力になれなくて」
リインが困った様に謝った。
「そうですよね。ミコトさんなら何か知っているかもしれませんよね。
では病室へ戻って髪の中に居るミコトさんに聞いてみます」
「そうしてくれる?じゃあ、リーンに戻すわね?」
リインが宝玉に戻り、リーンが身体を取り戻し、
「ミハル、今はキュリアさんがキャミーの治療中だから、もう少し待ってあげてよ?」
「あ・・・そうだったね。
でもこの瞳に髪の色って、変じゃないかな?」
ミハルが自分の変化に自信が無くてリーンに訊く。
「ミハルぅ、気にしちゃ駄目。
だって・・・以外と似合っているわよ、その色!」
リーンがくすっと笑って言うと、
「あ、リーン。今、笑って言ったでしょ!」
ぷうっと頬を膨らませて、ミハルが拗ねた。
キャミーの治療を任されていたキュリアがミハル達の前に現れた。
それはキュリアの役目が果された証。
次回 その瞳は
君は開かれた瞳に歓喜する





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