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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第1章Ep3訓練!あの戦車を撃て!Act14

「おきてくださぁーいっ!」

張り切るミリアに搭乗員は・・・・


挿絵(By みてみん)



バスクッチ曹長が転属して、小隊の元へ一通の無電が入った。

曹長が小隊から転属して、2日が経った。


「小隊長!軍司令部から暗号電です!」


無線手であるキャミーが、指揮官室へ駆け込んでくる。


「キャミー、慌ててどうしたの?そんな重要な無電なの?」


切迫感の無いリーン少尉に、


「小隊長、何を呑気に構えているのですか!

暗号電って言いましたよ。重要に決まってるじゃないですか!」


指揮官室でリーン少尉と今後の訓練の打ち合わせをしていたミハルが、


ー  リーン少尉は判っている。

   あえてとぼけて見せているだけ。

   だって、キャミーさんの顔色を見て手が震えているもの・・・


リーン少尉の顔を見詰ながらキャミーに訊く。


「どんな、内要なんですか?」


ミハルの言葉に続いて、リーン少尉が漸く報告を受ける。


「キャミー、暗号電を読んでくれるかしら」


キャミーは姿勢を正して、少尉に電文を読む。


「はい。読みますっ。

 発、近衛軍団司令部。宛陸戦騎独立第97小隊指揮官。

 本文、重要作戦開始に伴い貴小隊を第3戦車師団直属とす。

 よって明後日までにエンカウンター西方30キロの師団司令部に合流せよ。

 ・・・以上です!」


キャミーの報告にリーン少尉は少し俯いて、


「とうとう・・・来たのね。

 その時が・・・判ったわ、キャミー。御苦労様でした」


キャミーは、リーン少尉のねぎらいを無視して、


「小隊長、ついに出撃ですね。

 それにしても配属が近衛軍団だなんて。

 超エリートじゃないですか、私達も期待されてるんですね」


誇らしげに言うキャミーを見て、リーン少尉が口留めする。


「キャミー。この事は少し口外しないでくれるかしら」


「え?どうしてです。今日、明日には出発しなけりゃならないのに?」


キャミーが、訳が判らないと言った風に訊くと、


「うん、私が直接皆に話すまで、待ってくれないかしら」


リーン少尉がキャミーに答えた。


「成程。そー言う事ですか。判りました。黙っておきます」


「ありがとう、キャミー。」


キャミーに口止めして、礼を言ったリーン少尉に、


「いえ。では失礼します!」


敬礼して退出していくキャミーをミハルは見送って、


「小隊長。宜しいのですか?」


「うん。私から話すから・・・」


ミハルは別の意味で訊いたのだがリーン少尉が命令下達の事を言ったので。


「いえ。その事ではなく、戦闘に出撃しても大丈夫なのかを伺ったのですが」


ミハルは、最初に見たリーン少尉が手を震わせていたのが気になって尋ねてみる。


「あはは。ミハルにはお見通しだったみたいね。

 ・・・いざ、本当に命令を受けるとなると、恐いものなんだね。

 ミハルも初陣の時、そうだったのかしら?」


逆に今度は少尉が、ミハルに訊く。


「いいえ、小隊長。初陣の時だけでは有りません。

 今も恐いです・・・

 地獄を見てしまった者だからこそ何度受けても出撃命令は恐いんです。

 多分慣れるなんて事は無いと思います」


ミハルがリーン少尉に震える掌を見せながら答えた。


「そうね。その恐怖が消える事は無いのかもね」


リーン少尉はミハルの言葉に救われた様に、


「じゃあ、ミハル。

 これから忙しくなるわ。転進の用意に掛かりましょう。

 MMT-3の方を宜しくね」


リーン少尉が戦車の整備をミハルに頼むと、


「小隊長、その件ですが、先程の話で宜しいのですか?」


「ああ。私とミハルが一緒に乗るのだから。

 マクドナード軍曹も、ああ言って来たのだから任せましょうよ」


リーン少尉が少し元気になってミハルに言った。


「はあ、まあ。小隊長がそう仰られるのでしたら私も異存有りません。

 ・・・それでは車体の点検・整備に掛かります!」


ミハルが少尉に敬礼して退出し、ガレージに向う。


通路を歩いて近付いていくと鼻にツンと、塗装の匂いが臭って来る。


「ミハル先輩。

 どうです、新しい迷彩は。

 これ、今年から新しく開発された視認しにくい塗料だそうですよ」


ミリアがスプレーガンを持ちながら訊いて来る。


「へえぇ。塗料も換わってるんだね。で、軍曹は?」


ミハルはマクドナード軍曹の居場所を訊くと、


「あ、はい。

 何だかキルマークか何かを描くんだとか何とか?

 一人で車体側面に取り付いてますけど」


「そっか、じゃあ見せて貰いましょうか。そのマークとやらを」


「そうですね。変なマークじゃなきゃいいですけど」


ミハルはミリアを伴って車体右側面に向う。


そこには一人で出来映えを確認している軍曹が居た。


「軍曹、出来ましたか?迷彩の方は終わりましたけど」


ミリアが軍曹に報告しても返事はせず、


「ミハル。こっちから見てくれ。このエンブレムを!」


「エンブレム・・・ですか?」


軍曹の横まで来て砲塔側面を見上げた。


「!これは!?」


ミハルは、そこに描かれた紋章エンブレムに見入ってしまった。


「凄いっ!これ軍曹が描かれたんですよね?」


一緒に見に来たミリアが、感嘆の声を上げる。


「どうだ。気に入ったか?ミハル」


「はあ。軍曹って画才があるのですね。

 凄い上手ですけど・・・何故2人の女性が?」


ミハルが気になって訊くとミリアも、


「これって北方に伝わる<双璧の魔女>がモチーフなんじゃあないのですか?軍曹」


「まあな。ちょっとアレンジしてあるが・・・どうだ我隊の車両に相応しいだろ?」


軍曹が胸を張って自慢げにミリアに言った。


「ねぇ、ミリア。(双璧の魔女)って何?」


ミハルがエンブレムの由来の意味を訊くと、


「あ、そうですね、知られないのも判ります。

 この国に伝わる古来の伝説ですから。<双璧そうへき魔女まじょ>って言うのは・・・」


ミリアがミハルに説明しようとすると、横から軍曹が話す。


「<双璧の魔女>・・・

 それは国を滅亡から救ったとされる救国の乙女。

 邪悪なる者達を打ち倒し、聖なる光をあまねく国の隅々までいきわたらせて、

 この国の礎となった2人の偉大な魔女の事を言う。

・・・どうだ、紋章としては完璧だろう?」


マクドナード軍曹が2人を見ながら言い切った。


「ええ。凄い紋章な事は解りましたけど、どうして(双璧の魔女)をモチーフとしたのですか?」


ミハルが訳を尋ねると、


「他にはないだろ。

 二人も魔鋼騎士が乗る戦車なんてのは。

 リーン少尉、それにミハルが乗り込むこの戦車以外にはな!」


「成程、双璧の魔鋼騎士って訳ですか。

 私はそんな凄い戦車に同乗出来るんですね。凄い感動です!」


またミリアが一人で感動している。


「軍曹、私はついこの間初めて力があるのが解った所なんですよ。

 騎士<ナイト>の称号なんて軍司令部も認めてないわけですし、

 ・・・おこがましいと思われませんか?」


ミハルは自分でさえ知らなかった魔法力を皆に知られる事が恐く感じ。


「私は一砲手として小隊を守りたいだけなんです。

 魔鋼の力を使う事でそれが出来るなら、それを使ってでも何が何でも・・・

 本当に只それだけなのです。

 リーン少尉が魔鋼騎士なら、私は別に騎士になんてならなくていいのです」


ミハルの言葉に、


「ミハルはそれで良くてもいずれ上の連中も気付くだろうさ。

 戦果を挙げ続ければ・・・そんな遠くない未来に騎士の称号を与えられるだろう。

 その称号の価値がお前にはあるとオレは見ているし、

 小隊長もそう思っているさ。

 何せ、お前をこの小隊に引っ張ったのはリーン少尉だからな」


突然マクドナード軍曹が、ミハルをこの小隊へ配属させたのがリーン少尉である事を知らせた。


「私を、この小隊へ配属させたのが少尉・・・

  本当ですか?何故私みたいな生き残りを?」


「バスクッチ曹長から聞いたのだが、曹長はお前の事を知っていたみたいじゃないか。

 東洋から来た偉大な研究者の子供だって言ってたぞ。

 そして連隊が壊滅して生き残った者の名を訊いた時、

 どうしても欲しいと少尉と、参謀本部のユーリ大尉に願い出たそうだ。

 少尉もお前の事が気になって姉上であるユーリ大尉にお願いしたそうだ。

 シマダ・ミハル。

 お前はシマダ・ミユキの娘なんだろ?

 あの東洋の魔女団の副隊長ミユキ少佐の娘なんだろ?」


ミハルの知らない事実をマクドナード軍曹は教える。


「私・・・知らないのです。母がどんな人だったかなんて。

 教えてもらってなかったんです。

 幼い時にこの国へ来てからは、昔のことなんて話さなかったから・・・」


ミハルの記憶に居る母は、遠く霞んで観えるだけだった・・・


ミハルの両親の話をマクドナード軍曹が語る。

そしてミハルは自分が何故兵隊に為らざるを得なかったのかを話した。

次回 Act15

君は生き残る事が出来るか

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