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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep2姉弟Act1暗い現状

挿絵(By みてみん)


闘いはフェアリアの国力からみても、ここが限界だった。


この現状を打破する事が出来るのは、一縷の希望に頼るしか残されていなかった。


その希望とは戦局を只の一発で変える事が可能なモノ。


それは人類が手を染めてはならない物。


そう、それは悪魔の兵器。


今、人類は初めてその罪深い兵器を形にしようとしていた・・・


時にフェアリア暦176年。

雪深い冬の事であった・・・・・


それは本当の事なのですかカスター!?」


皇太子の衣装を身に纏ったユーリが訊く。


「は、皇女様。先程ドゥルトール卿から連絡を受けました」


カスターが畏まって答える。


「そんな・・・あのリーンが・・・負けた?!」


思わず立ち上がって叫んだユーリがカスターに問う。


「リーンは!?リーンは無事なのっ?」


血相を変えてユーリが叫ぶ様に問うと、


「はい、御無事であらせられます」


カスターの返事に安堵したのか、ユーリは座り直し、


「まさか<双璧の魔女>が、ロッソアの魔女如きに負けるなんて。想ってもみなかったわ」


椅子に腰掛け、うな垂れたユーリが呟く。


「ユーリ姉姫様。

 リーン達は敗れ去りました、これでお判りになられましたでしょう。

 無敵の魔砲使いなんて存在しないと言う事が。

 伝説に頼っていては戦争には勝てないと言う事が・・・」


カスターがユーリの希望であった伝説の魔法王女を否定した。


「ですがカスター。我が国には、もう頼るべき人も物も残り少ないのですよ。

 伝説にでも何でも縋りつかなければ、この国は・・・」


ユーリがうな垂れたまま呟く。


「そうですね、唯一つの希望であったリーンまでもが・・・

 <双璧の魔女>である聖王女までもが、ロッソアに負けるとは。

 もう和平への道は、降伏の他は・・・」


そこまでカスターが言った時。


「ユーリ皇女、その男が言ったのは亡国への道。

 我が国は、まだ闘えますぞ!」


皇太子の間に突然入って来たのは、


「ヘスラー参謀長、突然なんですか?」


カスターが眼鏡を掛けた中央軍総参謀長に言った。


「ん?カスター政務官。君が皇女殿下へ申し上げたのは愚かな事だと申したまでの事だ」


「ヘスラー・・・そうまで言い切るのなら、

 何か現状を打破できるという秘策でもあるというのですか?」


ユーリが虚ろな瞳をヘスラーに向ける。


「ふふふっ、皇女殿下。判っておられるでしょう。

 あなたがお認めになられた究極の兵器。

 あれを使う時が来たと言う事ですよ」


「究極の兵器?それは?」


カスターがヘスラー参謀長に尋ねる。


「そう、ユーリ皇女殿下が使用を認められた兵器。

 友邦ヤポンから贈られて来た3発の実弾頭」


「ヤポンから?知らないぞ、そんな兵器を渡されたなんて!」


政務官のカスターが聴き咎める。


「ロッソアにも我々が手にした事は薄々知られているというのに・・・

 内務者は、これだから困る。

 その3発の使い道さえ誤らねば、この戦争を終える事は容易い。

 少なくとも降伏など、せぬ事となろう」


ヘスラーの眼鏡が妖しく光る。


「どの様に使えば善いというの?」


「ユ、ユーリ皇女!?」


カスターは虚ろな瞳をしたユーリに問う。


「その様な危険を伴う兵器の使用を?

 実験は?

 その威力はどう証明されているのですか?」


ユーリとヘスラーを交互に見て、カスターは戸惑った。


「政務官、実験などしている訳にはいかんのだよ。

 たった3発しかないのだからな。その内一発を前線で使う事となる。

 それで戦局は一変するだろう、我々によって・・・な!」


ヘスラーが眼鏡をついっと直し、


「そう、その一発が全てを変えるのだ。この戦争もこの世界も・・・な」


眼鏡を押えたままヘスラーの口元が醜く歪んだ。


「世界を・・・変えるだと?」


ヘスラーの言葉にカスターが怯んだ。


そしてユーリの虚ろな瞳を見て思った。


ー  ユーリ姉様も、この参謀長も何かを隠している。それは・・・一体?


カスターは2人を交互に見て黙ってしまう。




ー  やはり、第1皇女はおかしい。瞳が闇に囚われてしまっている


空間の歪みから様子を伺っている聖教会工作員が、その光景を覗き見している。


ー  最早、皇族の中で頼りとなるのは、あのお方しか居ないという事か?!


空間の歪みから出てきた者はアンネ。


「リーン皇女の他に、この国を守るべき皇族は居なくなったと言う事か・・・

 何か対策を練らなければいけない・・・早急に」


白い魔導服を身に纏ったアンネの姿が宮殿の中から掻き消えていった。




______________





「・・・パイ、ミハル先輩?」


ミリアの声が聴こえる。


「ん・・・何かなミリア?」


ミハルの顔を覗きこんでいるミリアに答える。


「センパイ・・・少し眠られたらどうですか?私が付き添いますから」


心配顔のミリアが勧める。


「ん?いいえ、ミリア。

 私はここに居るから。此処から離れるわけにはいかないから・・・ありがとう」


眼の下にクマを作った正気の無いミハルが答える。


「もう3日間、ろくに食事もせず眠りもせず・・・先輩の方が倒れてしまいますよ?」


そう言ったミリアが軽い食事を載せたバスケットを机に置く。


「ふうっ、解りました。それなら食事だけでも摂って下さい。

 身体を壊す前に。・・・いいですね?」


ミリアがバスケットの内を見せ、ミハルに勧める。

そこにはサンドイッチや果物。

そしてフォークにナイフが入っていた。

ミリアがキャミーを一目見てから病室を出る。


「ミリア、ありがとう・・・」


出て行くミリアに一言お礼を言ったミハルに何も言わず、ミリアは病室を後にする。




「ミリア、ミハルの様子は?」


病室から出たミリアに、声を掛けるラミル。


「ずっと変らず・・・キャミーさんの傍に着いておられます」


伏せ目がちにラミルに答えるミリアに、


「もう一週間近くになるのか・・・私達が負けてから」


ラミルが呟くと、ミリアが眉を上げて、


「ラミルさん、負けた訳では・・・」


抗議しようとすると、


「負けたのさ、私達は奴に。その結果がこの現実なんだ」


ミリアの言葉を遮ってラミルが言った。


「そ、それは・・・」


ミリアが言い澱んで後を突いて、


「私達は闘いに負けた。只それだけの事。

 こうして生きている限りは、また叩く事が出来る。

 ・・・死んだ訳じゃないんだから」


ラミルはそう言うと、ミリアの手を掴んだ。


「ミリア、キャミーの事はミハルに任せて、小隊へ戻ろう。新しい無線手も配属になる事だから」


無理やりミリアを引っ張る。


「ラミルさんっ、キャミーさんの事が気にならないのですか?」


ミリアがラミルを見て抗議する。


ー  あ・・・


ラミルの横顔に涙が見えて、全てを覚るミリア。


「キャミーの事はミハルに任せよう・・・ミリア」


ポツリと言ったラミルに頷き、


「は・・・い・・・」


一言了承して、ミリアも涙を零した。


重傷のキャミーの傍から離れようとしないミハル。

その願いは只一つ。

ミハルは一つの決意の元、ナイフを握る。


次回 願掛け

君は一つの願いの為に神に捧げる。唯一つの願いの為・・・

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