表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
195/632

魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act44撃破

挿絵(By みてみん)


MMT-6の後部装甲を狙う暗黒魔鋼騎。

砲塔の旋回を続けるミハルがその狙いに気付いた時には・・・

引き攣る目に映ったのは?!


「えっ!?側面じゃないっ?後ろを取る気なの!?」


すり抜けつつある暗黒魔鋼騎を見て、ミハルが叫んだ。


ー  そんな・・・旋回が間に合わない?!


ミハルの瞳が絶望の色に染まる。


ー  ああ・・・そうか。全く逆なんだ・・・あの時と。

   あのエレニアでの闘いの時と全く逆なんだ。

   <大蛇の紋章>を浮かべた駆逐戦車と同じ運命を辿るんだ。

   ・・・私の・・・負けなんだ・・・


歯を食い縛り、一瞬の中に想いが駆け巡る。


ー  そうだね。あなたもこんな想いをしたんだね。

   精一杯闘ったのに、頑張ったのに撃ち負けてしまう絶望感。

   撃たれる前に味わってしまうんだもんね・・・悲しいよね?


ハンドルを倒し続けて照準器を睨む。

十字線は、そのすり抜ける車体を追い続けているが捉えられない。


ー  ごめん・・・みんな。私・・・私は・・・


最期の一言が想いを停める。

側面を廻りきった暗黒魔鋼騎が、右に急ターンして此方に向き直る。


その車体に砲が向く直前。


ー・・・負けたの・・・


挿絵(By みてみん)


((グワンッ))

((グオオオォムッ))


両者の砲が火を噴いた。


((バッガガーンッ))


眼も眩む衝撃が車体を震わせる。


戦果も確認出来ず、砲手席から投げ出され床へ突き落とされる。


((ブワッ))


煙が車内に流れ込む。

一瞬の内に電源が切れ、車内が真っ暗になる。


それはMMT-6が。

<双璧の魔女>の紋章を浮かべた戦車の<死>を意味した。


ー  負けた・・・

   エンジンが殺られ電源バッテリーも切断されたから、もう闘う事は出来ない。

   私は完全に負けてしまった・・・


床に手を着いて起き上がりながら真っ暗の車内に眼を向ける。


ー  私は負けたけど・・・まだ生きている。

   死んではいない・・・そうだ!リーンは?皆は無事なのかな? 


やや正気を取り戻してミハルが声を掛ける。


「リーン?みんな?大丈夫?大丈夫なら早く脱出してっ!」


煙でむせ返りながら叫ぶ。


「うっううっ。ミハル・・・あなたは大丈夫なの?」


リーンの声が聴こえた。


「うん、私は大丈夫。リーンは?」


慌てて後ろを振り返りリーンが居ると思われるキューポラを見上げた。


「うっ、解らない・・・けど、身体は動かせられるから・・・ハッチを開くわね」


((カシュッ))


リーンがキューポラの天蓋を開けると、新鮮な空気と入れ替わりに煙が噴き上がる。

そしてそこから外光が車内に降り注ぐ。


ーあっ・・・ああ。-


光に照らされたリーンの姿、そして自分の姿。

あちらこちら服が破れ、血が滲み出している。


「リーン!早く脱出して、味方陣地で手当てして貰って!」


リーンを気遣って叫ぶミハルを見ず、リーンが車内の一点を見て顔を強張らせている。


ー  えっ?


その視線の先を見たミハルが、瞳を大きく見開いた。


「ミ・・・リ・・・ア・・・?」


小さく呟き煙の中を近寄る。

ミリアは床に倒れたまま動かない。

その背中を血で染めたまま。


「うそ・・・どうして・・・」


挿絵(By みてみん)


倒れたミリアの傍にしゃがみ込んでそっと手を伸ばす。

何か触ってはいけない物に触れる様な震える手で。


「ミ・・・リ・・・ア。ミリア?ミリアっ!」


最初は震える小さな声で、それが次第に大きくなり、最期は叫んでいた。


((ブスブス・・・ゴウゴウボワアァッ))


燻って煙を出していた穴からやがて炎が噴出してきて、車内を鬼火の様に照らし出した。

ミハルの手で揺り動かされているミリアはピクリともしない。


「嘘・・・うそよ。こんなの嘘よっ!」


瞳から涙が溢れ、頬を伝う。

ミハルはミリアを抱き起こし、力一杯抱締める。


「死なないでミリアっ!私の・・私の妹っ」


力の限り抱締めて救いを求める。


<大丈夫。まだ死んではいない>


心に宝珠の、ミコトの声が呟いてきた。


「えっ!?」


その声に我に返ったミハルが抱締めているミリアの心臓の音が伝わって来たのに気付いた。


「ミリアっ!ミリアっ!」


死んでいない事に気付いたミハルがもう一度抱締めて喜んだ。

だが、気絶しているミリアは目を開きはしない。

鬼火の様に燃えていた炎が次第に強くなってくる。


「ミハルっ!ミリアと共に脱出しましょう、さあ!」


いつの間にかリーンが傍に立っていた。


「あ、うん。一緒に外に連れ出そう!」


リーンに急かされて脱出を決意したミハルが、


「そうだ!キャミーは?ラミルさんは?」


車内前方を向いて二人の様子をリーンに訊く。


「ラミル!キャミー!どうなの?大丈夫?」


リーンもそれに気付いて声を掛ける。


「な、なんとか・・・おいっキャミー。大丈夫か?」


ラミルが苦しそうな声で横に居るキャミーに声を掛けた。


「少しだけ待って下さい。補助電源で今、打電中です。

 脱出してもこの雪では凍死していまいますから。

 せめてパーツ軍曹にでも救助を要請しておかないと・・・」


電信キィーを叩こうとしているキャミーとラミルに、


「判ったわ。ありがとうキャミー、お願いね。

 それじゃあラミル、前方ハッチから脱出してね。私とミハルでミリアを連れて脱出するからっ!」


そう伝えてからリーンはミリアを抱かかえているミハルと共に装填手ハッチからミリアを連れ出した。


煙を吐き出しているハッチから車外へと出たミハルが見た物とは?!



遂に撃破されたミハル達、第97小隊MMT-6。

脱出を遂げたミハルの前に現れたのは弟。

その弟にミハルが叫ぶ!

次回EP1最終話 血塗られた瞳

君は想いを遂げられるのか?君は生き残り続けて来た事に報われるのか?

それとも・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ