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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第1章Ep3訓練!あの戦車を撃て!Act13

挿絵(By みてみん)

※2018年1月13日追加しました。


バスクッチの送別会が開かれる。

マクドナード軍曹にコスプレさせられて、凹むミハル達。

さあ!宴会だ!!


【本文】

「では、リーン少尉。宜しく・・・」


「うう。いくら約束したからって・・・何処で仕入れたのよっ、こんな服装を!」


「マクドナード軍曹って、こんな趣味なんですか?知りませんでした・・・Orz」


リーン少尉とミリアが口々に抗議するが、


「ちっちっちっ!こんな事もあろうかと・・・

 昔の馴染の飲み屋で用意させたのさ。

 似合ってるじゃないか、皆さん!」


悪たれ顔のマクドナード軍曹が胸を張って搭乗員を見た。


「くっそーっ、覚えてろよ。次があったら仕返してやる!」


ラミルが本気で怒る。


「ね、ねえ。ミハル。曹長のお相手は・・・(紅)」


「う、うん。キャミーさんに、お願いするよ(真っ赤)」


キャミーとミハルはお互いに真っ赤な顔をして俯いた。


「さあ、今夜は送別会を兼ねて、パーッといこうぜ!」


マクドナード軍曹が音頭を取って、バスクッチ曹長の送別会を催した。


ー  ・・・だけど・・・まさか・・・まさか、こんな格好にされるとは・・・

   それもこれも勝負に負けたのが原因なんだけど・・・とほほ・・・。-


リーン少尉は落ち込んだ。


ー  そう、何発命中させたかでなら・・・

   私たちの方が10対9発で勝利を物に出来たのだけれど、

   何回撃破したのかと言う事だから、3対1で私達の負けの判定が下った。


   最初の待ち伏せ攻撃と、射角を甘く見た失敗。

   それが決めてだった。

   まあ、確かに最初に2回も当てられちゃったんだから、負けも納得いくけど。

   メイド役も納得するけど。

   ・・・マクドナード軍曹って訳が判らない人なんだ。


   どうしたらこんな服を持ってこられるんだろ・・・趣味を疑っちゃうなぁ


ミハルは自分の姿に赤面する。


網タイツとウサギ耳のカチューシャ。

・・・そして殆ど裸に近いアブナイ水着ときた。


「うう。恥ずかしくって泣けてくるぅー」


「ミハル先輩は良いですよ。

 出てる所出てるんですから。

 私なんてツルペタだから、もっと恥ずかしいですぅ」


ミリアがミハルが恥ずかしがってるのを咎めたてた。


挿絵(By みてみん)


「そ、そんな問題じゃない。恥ずかしいのは恥ずかしいの!」


ミハルとミリアがもめていると、


「はい、ウォーリア。どうぞ!」


キャミーが曹長にしなだれ掛かって、お酒を注いでいる。


「ううっ、キャミーさん。役得してるし・・・」


ミリアが、そんなキャミーに毒づいてると、


「おーいっ、そこの2人。こっち来て酒を注いでくれよ!」


当の本人、マクドナード軍曹のお呼びが掛かる。


「ひぇっ!

 一番呼ばれたくない人に、お呼び出しされちゃいました。どーしましょう、先輩?」


「うん。でも罰ゲームだから。断れないし・・・」


泣く泣く2人で軍曹の所へお酒を持っていく。


「はい、軍曹。どうぞぉ」


ミハルがコップにお酒を注いで勧めると、


「おーっ、ミハル。一段と可愛いな」


「ぐっ、軍曹。恥ずかしいです・・・思いっきり」


ミハルが顔を赤く染めて、恥ずかしがるのを、


「いや、いや。たいしたもんだ。

 たった3日位であの砲を使えるなんてなあ」


軍曹は既に赤い顔をして酔っているようだ。


「あの、軍曹。話がめちゃめちゃです」


「はっはっはっ、そうだ、オレは気分がいい。

 曹長でさえあの砲を使える様になったのは最近なのに。

 よっぽど相性がいいんだな、あの47ミリが!」


「は?はあ。そうみたいですね。あははっ・・・」


ミハルはどう言って善いのか判らず、愛想笑いで誤魔化した。


「軍曹、どんどんやってください。はいっ、どうぞっ!」


ミリアは軍曹のコップにどんどん酒を注いで煽る。


「ミハル先輩、軍曹を早く潰しちゃいましょう!」


ミリアはミハルの耳に小声で呟く。


「あ、うん。そうだね」


ミハルはミリアの策に乗る事にした。


「さあさあ、軍曹。可

 愛い女子2人からのお酒ですよ。飲んで下さいよぉ!」


ミリアが軍曹にどんどん飲ませる。


「おー、飲んでるぞぉ。

 それにしても我が整備班から陸戦騎乗りが出るとは、大したものだぞミリア。

 頑張るんだぞ。オレ達が応援してるからな!」


「軍曹・・・ありがとうございます!」


ミリアが、はっとしてお礼を言った。


「さあ、ミリア。我々にもお酒を注いでくれよ」


「そーだそーだ。

 ミリアはオレ達の妹分なんだからな。兄貴分のオレ達にも注いで周れ!」


ミリアは少し嬉しそうな顔になって、


「私。

 整備班から陸戦騎乗りになれたのは先任以下、皆さんのおかげです。

 これからも妹分として接して下さい。お願いします!」


「おーっ。可愛い妹に頼まれちゃあ断れねえよなー」


ミリアは整備班の輪の中でお酒を注ぎまわって喜んでいる。


ー 良かったね、ミリア。整備班の方から仲良くしてもらえて・・・


ミハルはそっとその場から離れて見回すと、少尉と視線が合った。


リーン少尉はミハルを誘う様に目で合図してから会場から出て行った。

その後を追ってミハルも外へ出た。



「少尉、リーン少尉。何処へ行くのですか?」


ミハルが呼び止めると、


「ミハル。ちょっと付き合ってくれない?」


そう言ってすたすたと、指揮官室へ入って行った。


「あっ、待って下さい。少尉!」


ミハルも部屋へ入った。


「少尉、付き合うってどう言う事ですか?」


「ふふっ、皆仲良くて、羨ましいわ・・・」


「え?ええ。・・・良い小隊ですよね。

 私、この小隊に配属されて良かったです。皆さんいい人ばかりで」


「そうね。皆、心から打ち解けて、家族の様に心が通っている。今までは・・・」


「今までは?では、これからは変わってしまうとでも?」


「そう、これからは戦場に出る事になる。

 戦闘になればどうしても犠牲者が出てしまう。

 一人が欠けても心に傷を負う事になる。

 仲が良ければ良いほど・・・解るよね、ミハルになら・・・」


リーン少尉が悲しげにミハルに話す。


ー  そう、仲が良ければ良いほど、失った時の心の傷は深く、失う度に重くなる。

   私は嫌と言うほど知ってしまったから・・・


「そうですね。

 隊員の内、一人でも欠ければ戦闘に影響が出る程、心に傷を負ってしまうかも知れませんね」


「私は指揮官としてその時、どんな態度で隊員達に接したらいいの?

 ・・・解らないの。自信がないの。

 教官も居なくなっちゃうし、頼れる人は誰も居なくなってしまうのが怖いの。

 心が重圧に耐え切れそうに無い。

 お願い、ミハル。

 私の・・・リーン・マーガネットの傍に居て」


リーン少尉が俯いてミハルに弱い所を見せる。


「ごめんねミハル。

 こんな弱い所を見せて・・・心配になったでしょ。

 こんな指揮官の元で働いていく事が・・・」


リーン少尉の瞳から涙が溢れて頬を伝う。


ー  リーン少尉、私は貴女と初めて出会った日から、時から。

   貴女に憧れ、貴女の苦悩を知った時から守ろうって、皆とリーン少尉を守ろうって決めたんです


ミハルはリーン少尉を真剣に見詰て、


「少尉を守るのが私の務め。

 皆を守るのが砲手の務め。

 私は心配なんてしていません。

 一緒に生き残りましょう。そして強くなるんです。

 自分自身の為・・・愛すべき人達の為に」


ミハルはきっぱりと少尉に決意を告げる。


「ミハル・・・強くなる?

  私・・・なれるかしら?」


リーン少尉の弱い心を勇気付ける為、


「そうです。強くなれる?じゃなくて、なる・・・のです!」


「強くなる・・・強くなる。そして皆と共に必ず生き残る!」


リーン少尉に、何かが芽生え始める。


「そうです。

 たとえ闘いに負けたとしても、生き残れさえすれば私達の勝ちなのです。

 どんなに苦しくても生きてさえいれば、必ず道は開けていくものです。

 だから、生き残る事こそ強くなる道なんです。

 私も、そう教わったから・・・」


「そう。ミハルも誰かに教えて頂いたの?」


「ええ。リーン少尉の教官に。バスクッチ曹長に、です・・・」


「そう。彼に・・・」


リーン少尉の顔に微笑が戻る。



「良い人ですね。バスクッチ曹長は。頼りがいのあるお兄さんみたいで」


「あら。恋人じゃなくって?」


リーン少尉の言葉に、心がどきんとして、


「ちっ、違いますっ!お兄ちゃんですっ!」


慌てて誤魔化すが、


「あらあら。図星だったみたいね。

 好きになってしまったんでしょ。バスクッチの事が」


「なっ、何言ってるんですか!

 曹長にはキャミーさんが居るじゃないですか!」


「あーら、恋なんて奪って取っちゃった者が、勝者なんだから」


「・・・リーン少尉、それ位指揮の方も積極的にお願いします」


ミハルはジト目になって、少尉を見た。


「うふふ、ありがとう。ミハル!」


リーン少尉は微笑を浮べて、部下に礼を言った。


「あははっ、少尉。良かった、元気になってくださって」


2人はお互いを見詰て笑い合った。





__________________





((ポゥーッ))


列車が出発の合図で蒸気を上げる。


「小隊!バスクッチ・ウォーリア曹長に対し、敬礼!」


リーン少尉が駅まで見送りに来た、小隊員に頭右を命じた。


「ありがとう。

 みんな、元気でな。

 必ずまた会おう。

 それまで何があってもへこたれるんじゃないぞ!」


答礼を返して、曹長が激励の言葉を投げ掛ける。


「曹長もお元気で。私達も頑張ります!」


リーン少尉が曹長に別れの挨拶をする。


「では。いつか戦場でお会いしましょう。少尉も小隊の事を宜しく」!


バスクッチ曹長が少尉と握手を交わして、お互いの健闘を誓った。


そして。


「ミハル、ちょっと来い」


曹長に呼ばれて一歩前へ進むと、


「頼むぞミハル。お前の腕に掛かっているんだからな。

 小隊長を守ってあげてくれ。

 戦場に出たら迷うな。

 強くなる事だけを考えろ。

 強くなって生き残る事だけを考えるんだ。

 いいな、解ったな?!」


曹長はミハルに別れの握手を求める。


その手をしっかりと握り返して、


「はい。曹長の言葉を・・・約束を守れる様に頑張ります。

 曹長にもお願いが有ります」


「なんだ?」


「絶対もう一度・・・私達と会えるまで死なないと約束して下さい」


「・・・解った、約束する。

 お前達と共に戦える日まで、死にはしない。安心しろ!」


曹長は笑顔で、ミハルに約束した。


「はい。安心しました。約束ですからね!」


ミハルは飛びっきりの笑顔で敬礼した。


そして、


「リーン少尉、皆さん。

 少しの間、ホームの後ろを向いてあげて貰えませんか。お願いします」


そう言ってキャミーを置いて、全員に回れ右をしてもらう様、リーン少尉に目配せする。


「小隊!キャミー一等兵以外回れ右!」


全員が納得の回れ右をする。


「ありがとう、ミハル。みんな!」


キャミーが礼を言って、曹長に駆け寄る。


ー  曹長、キャミーさん。これが私達が出来るプレゼントだから


ミハルはリーン少尉と共に頷きあった。


((ポーッ))


機関車の汽笛が鳴る。


出発の時刻となったのだ。


「少尉!皆さん、ありがとうございました。

 もう大丈夫ですから此方を向いて下さい!」


キャミーが礼を言ったので振り向くと、曹長とキャミーが笑顔でこちらを見ていた。


二人の笑顔を見て、


ー  ああ。

   キャミーさんの笑顔。

   何て晴れ晴れとしているんだろう。

   2人の仲は誰にも、どんな事が有ろうとも邪魔は出来っこない。

   こんな戦争の中であったとしても・・・


ミハル達全員が同じ思いであったに違いない。


列車の窓から手を振り別れを惜しむ曹長の姿が、

遥か彼方へ消え去ってもキャミーだけはずっと手を振っていた。


その姿を見て、ミハルは思う。


ー  曹長、あなたは死んではいけない。

   きっと、私が守って見せますからリーン少尉をキャミーを。

   そしてこの独立第97小隊を。もう一度出会えるまでは・・・



やがて、ミハル達小隊員は基地へ戻る。


そのトラックの荷台で、ミハルはキャミーが指輪を大事そうに握り締めているのに気付いて、


「キャミー。私ね、曹長と約束したの。

 貴女と小隊を守るって、そしてもう一度曹長と会いますって・・・」


「そっか。ウォーリアと約束したんだ。

 あたしも約束したんだウォーリアの子供を産むまで死なないって。

 まだこのお腹に居るか解らないけどさ・・・」


「うわあ。キャミーさん。大胆発言ですね」


ミハルはキャミーに笑い掛けた。

その笑顔にキャミーが、


「頼むよ、ミハル。私を、私達を守ってくれ・・・頼む!」


頭を下げて笑った。


「はいっ!この命を賭けて!!」


ミハルも力一杯で応じた。



トラックの行く手に、基地の古城が見える。


この先に待っているのは、戦場。


一瞬のうちに何人、何十人もの人の命が奪われてしまう過酷な場所。


第97小隊にこれからどんな運命が待ち受けているのか・・・誰も知らない。


解っているのは・・・まだ戦争は終わりを告げていない事のみだった。

バスクッチ曹長が転属し、いよいよ戦機が熟す。

ミハル達の第97小隊についに出撃命令が届く。


次回Ep4魔鋼騎士Act1

君は生き残る事が出来るか

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