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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act37雪の中で待ち伏せ

ミハルとミリアは稜線が見える山腹で吹雪の中、凍えながら待ち続けていた。

雪山に新雪が積もる・・・


「ふぅーっふぅーっ。ミハル先輩、寒いっ、ですねぇ」


頭から雪を被ったミリアがブルブル震えて愚痴を言う。

ミハルも同じく雪を被って双眼鏡から目を離し、


「それは言わないって約束したでしょ。・・・もう!」


喋ると息が凍り付いた様に白くなる。


挿絵(By みてみん)




ミハルとミリアが居る低い山の頂は、辺り全てが雪に覆われ真っ白だった。

そこに寒冷地迷彩のコートを頭から被り、見張りを続けていたのだった。


「うう、早く車内へ戻って温かい珈琲を飲みたいですぅ」


半べそをかくミリアの横で双眼鏡に眼を当てて観測を続けるミハルも身体の芯から冷え切っていた。


ー  ホントに来るのかな。あんな作戦電報に引っ掛かるのかなぁ?


ミハルの頭にぎるのは敵暗黒魔鋼騎が罠に掛かるかどうかであった。


「うーん、もしかしたらずっとこのまま待ちぼうけになるかも・・・しれないな」


既にこの配置について3時間。

何も現れず、何も起こらず・・・唯、雪が降り積もるだけだった。


「センパーイ。それ・・・言っちゃ駄目ですよぉ!」


双眼鏡を覗き込んだままミリアが呟く。






ミハル達の特別編成部隊が現地に着いたのは、朝日が昇った頃だった。

その時はまだ雪は降っておらず、見張りもこんなに過酷になるとは思ってもいなかった。


それから3時間、天気は急変し雪がちらつき始め、やがてそれは積もる位の雪となった。


ー  このままじゃ、戦闘どころじゃなくなっちゃうかもしれないな。

   だって雪で見通しが利かなくなっちゃったから・・・


思わず降りしきる雪を見てミハルは思った。


((ピーッ ピーッ))


有線電話の呼び出し音が鳴り、ミリアが受話器を取った。


「はい、こちらミリアです」


「「リーンよ。どう?何か動きはあった?」」


電話の先はリーンだった。


「いいえ、何も。ただ雪ばかりです」


ミリアが愚痴混ざりの報告をする。


「「ごめんねミリア。もう少し我慢しててね。交替のキャミーとラミルが向うまで」」


「はい、待ってます」


ミリアは答えて受話器を置く。


「リーンから?何か動きがあったの?」


双眼鏡で見詰めたままのミハルが訊く。


「いーえ。交替もまだなようですねぇ」


凍えて半ベソのミリアが双眼鏡を構え直して答えた。


「しょうがないよミリア。我慢しよう・・・ね」


宥めるミハルがそう言った時。


「先輩っ!右の方で何か聴こえませんでしたか?」


ミリアが突然問い掛け、レンズを右に向けた。


「何ですって?」


ミハルも右側へ双眼鏡を向け、耳を澄ます。


((ヒョオオオオォッ))


吹雪の音以外に聴こえるものは無い。


「あれ?気のせいかな、何か物音がした気がしたんですけど・・・」


ミリアが自信をなくしてミハルに向き直ったその時だった。


((ヒョオオオッ ゴウンッ ヒョオオオッ))


吹雪の中で何かの機械音が確かに2人の耳に入った。


「ミハル先輩っ!」

「ええ、聴こえたよ。この近くに車両が来たんだ。ミリア!中尉に連絡っ急いで!」


挿絵(By みてみん)


ミハルは音が聴こえた方に双眼鏡を向け、ミリアに命じる。






「解ったわ。2人供急いで戻りなさい!」


リーンが電話で二人を呼び戻し、傍に居たラミルとキャミーに命じる。


「ラミル、エンジンを暖めて。キャミー全車に連絡、作戦開始っ!」


そう命じたリーンは少々驚きを隠せなかった。


ー  本当に来たんだ。”奴”が。暗黒魔鋼騎が・・・ドートル叔父さんの予想通りに!


顔を上げたリーンの前には作戦計画書と地形図があった。


ー  後は”奴”が罠に掛かってくれるかどうかだけど・・・巧くいけばいいけど・・・な



3方を低い山で囲まれた狭い盆地の中央付近で、

青い紋章を描かれた中戦車が4号H型の後方をゆっくり進んでいる。


4号の後方20メートル位をゆっくり進むその青い紋章を描かれた中戦車が盆地の中央位迄来た時、

それを見詰めている者達が居た。


「こちらクラメンス少尉。まだ現れませんか?」

「左側山頂のデラム軍曹です。こちらには来ていません!」

「右側のバダニム少尉。こっちにも来ていません!」


各山頂に配置された車両から連絡が入る。


「了解、各車そのまま待機。見張りを厳とせよ!」


リーンがマイクで命じた。


「どうですか、まだ現れませんか?」


キューポラからミハルが車内に戻って来て訊く。

続けて装填手ハッチからミリアも潜り込んで来た。


「うん、まだよ。2人供寒かったでしょ、御苦労様」


リーンが労うと、


「いいえ、今雪の中を走って来ましたから。ちょうど良い準備体操になりました」


ミリアが左手にグローブを填めながら笑った。


「それでリーン、相手が暗黒魔鋼騎だとしても、一両じゃなかった時はどうするの?」


ミハルが砲手席に着いて用意に掛かりながら訊いてみる。


「うん、その時は相手の数にも因るけど攻撃は掛ける・・・そして撃滅する。

 ・・・そう上手くいくかは解らないけどね」


リーンが車長席へ戻って計画書にあった通りを教え、


「この作戦は一度っきりの作戦だから。

 ここで暗黒魔鋼騎が出てこなければ、

 それはそれでどうしても私達<双璧の魔女>を、

 奴が狙っている訳じゃなかったって事になるから、いいんじゃないの?」


ヘッドフォンと、マイクロフォンを着ける。

そんなリーンを見上げたミハルが了解したと頷いてから、射撃装置のチェックに掛かる。


遂にミハル達の前に現れた敵。

それは、予想していた通り、軽戦車だった。

フェアリアの特別編成部隊に緊張が走る。


次回 敵、現る

 君は手を出さない。

      そう、まだ早いのだ。

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