魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act28敵影ミユ
ミハル達第97小隊は整備班を伴って前線へと向う。
その途中での事だった・・・
「敵は軽戦車なのか、ミハル?」
アクセルペダルを踏み、操縦桿を握るラミルがマイクロフォンを押えて訊く。
「うん、そうらしいよ」
キューポラで車長代理を務めるミハルが、マイクロフォンを押えて返事する。
「魔鋼騎らしいが・・・どんな奴なんだ?」
続けて訊くラミルに、
「それなんだけど。今、リーン中尉が詳しい事を師団司令部に聞きに行ってるから」
ミハルはキューポラで車内の3人に教える。
MMT-6と整備班の力作車は命令を受けて、エンカウンター基地から出撃した。
目的地は次期作戦予定地よりフェアリア側に50キロにある山岳地帯。
その方面に展開している第2軍に所属する戦車第2師団に向っていた。
その師団へ単身リーンは先行し、目標である敵魔鋼騎の情報を集めると共に、
小隊の宿営地を設定しに赴いていた。
「ねえミハル先輩。暗黒魔鋼騎って相手、そんなに手強いんですかねえ?」
ミリアが装填手ハッチから頭を出してキューポラのミハルを見上げた。
「らしいよ。だって第2師団の魔鋼騎が何両も撃破されたって話だからね」
余り気にしていない風のミハルが周りに気を配りながら答えると、
「そーなんですか。だから私達に白羽の矢が立ったって訳なんですね」
ミハルを見上げてミリアが納得した様に頷く。
「ミリア、間も無く目的地に着くぞ。喋ってないで見張り、見張り!」
キャミーの声がヘッドフォンから流れる。
「はーい」
ミリアはキューポラで見張りを続けるミハルの横顔を見て答えた。
ミリアの眼には闘いを前にして何かを想ういつものミハルに見えた。
「後20分位で第2師団後方陣地に着く。車長代理、補給陣地へ行く。後は任せるぞ!」
ヘッドフォンから力作車で指揮を執っていたマクドナード曹長の命令が届いた。
ミハルは力作車に振り返って手を振る。
「了解。整備班を宜しく!」
マクドナードと別れてリーンの居る師団へと向う。
「ラミルさん、師団本部へ行きましょう。そのまま直進して下さい」
整備班を載せた力作車が左へ回頭して師団後方整備部隊へ向う中、
一両だけで10キロ程前方の師団本隊へと前進を続けた。
「ここら辺は敵味方が入り混じっているらしいから油断は禁物よ。各員見張りを厳にせよ!」
キューポラで双眼鏡を眼に当てたままミハルはマイクロフォンを押して命じる。
「そうだな、噂では敵味方共に偵察隊を送り込んで出方を探り合っているらしいから。
突然の会敵にも備えておかなくてはいかんな」
ラミルがペリスコープを動かして観測を続ける。
「ミリア、装填手席へ戻って!
キャミーさん、師団司令部へ訊いてくれませんか。
今偵察隊を出しているかと。ラミルさん、十一時の方向へ向けて停車!」
ミハルが双眼鏡を一点に向けて矢継ぎ早に命じる。
「ミハル?・・・そうか、了解!」
キャミーが後ろを振り返りキューポラを見上げてから、察した様に復唱し、無電のキィを叩く。
ミハルの双眼鏡に、林の中に見える砲身が数本写った。
ー どうやら敵の偵察隊みたいね。拠りによってリーンが居ない時に・・・
双眼鏡で観測を続けながらミハルは決断を迫られる。
ー このまま見過ごしてしまう方がいいのか。撃破出来ないまでも追い返した方がいいのか?
敵がどんな勢力かを掴みかねてミハルは考えが纏められなかった。
ー 今見える砲身は3本。
3両と言う事になるけど、もしかしたらもっと居るかも知れない。
こちらは只でさえ車長のリーンが居ないのだからもっと不利な闘いになってしまう。
こっちに気付かれる前に隠れよう・・・
戦闘を控えて、やり過ごす事に決めたミハルが命じた。
「キャミーさん、師団司令部に連絡。<我レ敵ト遭遇ス。戦闘ヲ控エ退避スル>以上です」
マイクロフォンを押してキャミーに命じたミハルは、敵から目を離さず次にラミルに後退を指示した。
「ラミルさんゆっくりと後退しましょう。煙を出さぬ様に注意して下さい」
そしてミリアに、
「念の為に戦闘配置。
ミリア、ゆっくりでいいから徹甲弾を装填しておいて。
敵に変な素振りが見られたら私が砲手席に着くから!」
一応の構えだけを執らせる。
「それじゃあみんな、隠れてやり過ごそう」
ミハルの命令に3人は安堵の表情を浮かべた。
ミハル達のMMT-6は、敵の戦車隊をやり過ごそうと隠れていた。
しかし敵はなかなか立ち去ってはくれなかった。
偵察が目的だと考えていたが、ある事に気付いたキャミーがミハルに言ったのは・・・
次回 戦闘用意!
君は闘い続ける運命なのか?