魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act26収拾
マクドナードの行方を捜し求める3人の結論は?
あの恍けた班長はきっとあそこに居るとミハルは結論付けた。
「え?班長ですか?
私はリーン皇女と班長が指揮官室へ行かれた時に見たっきりですが。
班長が行方不明になられているとは知りませんでした?!」
アンネが知らないと事を言うとリーンがポンと手を打って、
「あ、あはは。忘れてた。
怪しいのがザルバ君の方だと気付いてマクドナードを呼んだんだった。
で、ザルバ君を付けて行ったと思うんだけど。二人は知らないんだ?」
「ええ、知りません」
アンネが答えると、ミハルも頷く。
「うーん、おかしいな。そうなると一体何処に行ったんだろう?」
考え込むリーンに、ミハルが閃く。
「リーン、これはきっとチャンスだよ。
行方不明のマクドナード曹長はザルバ君を見張っていたと思う。
その時何かの拍子に歪んだ空間に紛れ込んじゃったんじゃないかな?」
ミハルの言葉にアンネが否定する。
「そんな事は・・・」
「無いと言い切れるのかしら。
あなたが気付いていないだけで、マクドナードが紛れ込む可能性がゼロと思う?」
リーンがアンネに問い質すと、
「で、でも。あの術は術者だけにしか作用しない筈ですし・・・」
困った様にアンネが首を傾げる。
「そう、じゃあザルバ君を撃った時にキャミーの意識を奪ったわよね。
キャミーが一瞬気を失ったって言っていたわよ?」
リーンが指揮官室での一幕を教える。
「えっ、キャミー無線手が?
確かにドアの外に居られましたけど。マクドナード曹長は居られませんでしたよ?」
「空間の歪み具合でキャミーは気を失った。
アンネはその事に気付かなかった。
それ程ザルバ君を撃つ、魂の解放を願って集中していたって事よね」
リーンがアンネに問う。
「え・・・まあ。邪な者だとしてもリーン皇女に危害を加える者だとしても、人は人ですから。
私もそこまで非情には成りきれてませんから・・・」
自分が術師に失格だと言わんばかりにうな垂れる。
「そう、だからこそ必死になって狙った。それを止め様と近付いた者が居る事にも気付かずに」
ミハルがアンネの肩をそっと掴んで、
「多分マクドナード班長はあそこに居る。あのドアの前で歪んだ空間に閉じ込められて!」
助けに行こうと目で合図する。
「さて、ミハルの考えた通りならアンネが救うのよ。
ザルバの魂を救ったように。マクドナードの事も・・・ね」
リーンがミハルと共にアンネの肩に手を添える。
「本当に空間に閉じ込めてしまったのなら・・・」
2人の手に力を与えられたアンネが頷いた。
「むはー。何か訳が解らない所へ閉じ込められていた様な気がする・・・夢を観たぞ」
気付の酒を呑んだマクドナードが、ほろ酔い気分で5人に言った。
「曹長、ハンネさんにお礼を言うのね。彼女が見つけてくれたんだから」
「そうですよ班長。隠れて見張っている者が気絶しちゃったら意味ありませんよ?」
リーンとミハルが口々に文句を言う。
「うむむ。それを言われると面目が立たん」
結局ミハルの思った通り、空間の歪みでマクドナードは発見された。
アンネには都合がいい事にマクドナードの記憶は途切れ、覚えてはいなかった。
「うーん、ザルバを見張っていたら突然姿が見えなくなって、
それを知らせに中尉の元へ来たらドアの外でキャミーの姿が見えて
・・・記憶が無いんだな・・これが」
思い出すのを諦めた様に肩を竦めるマクドナードに、
「まあ、みんな無事だったから良しとしましょう。
ザルバ君は残念だったけど、彼の魂が救われる事を祈ってあげて・・・ね」
リーンが一人の犠牲者を悼む。
「全く、あんな少年を闇に堕とすなんて。邪な者達の主って本当に悪魔に違いないな」
キャミーが拳を握り締めて、怒りを露わにする。
「そう、自らが生きる事を望んで縋りつくのを悪用する。正に悪魔の仕業だな」
ラミルも怒りの矛先を新総統に向けた。
「ザルバ君可哀想に。
でも、これで悪い事しなくて済むんですよね。きっと罪は消えるんですよね?」
涙目のミリアがミハルに訊く。
「そうだよミリア。きっと彼の魂は天国へ行けるよ。リーンが綺麗にしてくれたんだから」
涙目のミリアに微笑んで答えた。
「そう願いたいです、皆さん」
俯き加減のアンネがポツリと呟く。
「で、ハンネは他部隊が引っ張ったって事ですね?」
マクドナードがリーンに転属命令が届いたと教えられて確かめる。
「そう、僅かの間だったけど・・・私達の仲間になってくれて良かった。
例え離れてしまっても、これからもずっと仲間だからねハンネ」
リーンがアンネに握手を求める。
その手をしっかりと握り返したアンネが礼を言う。
「中尉、お元気で。
必ずこの戦争を終わらせて、この国を守り抜きましょう。
その時にまたお会いできる事を祈っています」
交わした握手を放しアンネがミハルに向くと。
「ミハル軍曹、リーン皇女を護り抜いて下さい、お願いします!」
手を指し伸ばす。
その手を堅く握り誓うミハル。
「ええ必ず。必ずリーンを護り抜くから。約束するから!」
微笑んだミハルを見て頷くアンネが、
「まあ心配要らないと思ってますよ、巫女様」
右手の宝珠に苦笑いを浮かべて言った。
「むう。私じゃなくてミコトさんを頼っているな?」
口を尖らし、伝説の巫女に言ったアンネに拗ねる。
「あははっ、まあどちらにせよ心強いのは変りませんからね」
アンネが本当の笑顔を見せた。
「うん、ミハルは必ず私達を護ってくれると信じているわ。ねぇ、みんな!」
リーンが其処に居る全員に言うと、
「はいっ!」
皆が大きく頷いた。
「・・・いい隊なんですね、この97小隊って」
心が一つに繋がった隊員を見てアンネが呟き、挙手の礼を皆に贈る。
「では皆さん、武運長久を!」
別れの敬礼で離隊を告げる。
「うん、ハンネさんも・・・ね」
ミハルが答礼を返した。
「うん。では送り出そうか。搭乗員、整備員城門前へ集合っ!」
リーンの命令で皆が城門前に居並ぶ。
「ハンネ・パルミーア二等兵を送別します。全員、帽振れっ!」
リーンがアンネに手を振り命じる。
「ぼーふぅれぇーっ!」
マクドナード曹長が復唱し、
整備員達も手に手に被っていた帽子を振ったり手を振って別れを惜しむ。
「あ、ありがとう。みんな!」
面喰った様に眼を見開いたアンネが喜んだ。
立ち去り行くアンネを見ていたミハルが叫ぶ。
「アンネさん、リーンは必ず私が護って見せるからね!」
ミハルの声に微笑み手を振るアンネの姿がだんだんと小さく消えていった。
手を振り続けているミハルにミリアが、
「アンネ?ハンネさんの間違いじゃあ?」
指をツンツン突いて聞き咎めると、
「は?あ~あ~あ~。はーあーんーねー」
恍けてみせた。
事件の一応の結末を見た97小隊。
漸く次期作戦の準備に掛かる中、ユーリ皇女から電報が届いた・・・
次回 進出命令
いよいよ君はまた出掛ける事になる吹き荒れる闘いの中へと・・・