魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act25兵器の影
ミコトの力の前では太刀打ち出来なかったアンネに、2人が質問する。
その秘密兵器の全貌を知る為に。
<双璧の魔女>が娘に訊ねる。
「で。ミハルを部品にするとはどう言う意味なの?」
二人の前で漸く立ち直ったアンネにリーンが訊く。
「は、はい。それはつまり、秘密兵器の中に必要とされる力。
魔鋼力の供給源として封じ込められる・・・と、言う意味です」
アンネがミハルをチラチラと見ながら話す。
<まだ怯えているのかな、アンネさんは?>
自分にオドオドとした態度を見せるアンネに少々呆れてそう思うミハルが、
「力の供給源?魔鋼力を使うのねその秘密兵器って?」
そう訊くとアンネが、
「ひいっ、そ、そうです巫女様ぁ」
卑屈な態度で答える。
<あーあ、完全に怯えているよ。この娘>
ミハルはしょうがないなといった顔でリーンに、
「でも、魔鋼力が必要だからって何で私なんだろう?他にも魔鋼力を持つ人は居るのに・・・」
そう訊いて首を傾げる。
「そうだね。どうしてミハルなの?」
リーンがアンネに訊ね返した。
「そ、それは・・・。中央軍参謀長が求めているみたいなのですが。
この秘密兵器を使うに当って、より強力な威力を発揮させる為に・・・だとか」
アンネがリーンの問いに答える。
「その秘密兵器って魔鋼力の強弱で威力が変るって事?
それなら蓄積させればいいじゃないの。魔鋼力を溜められたら威力も安定するじゃない?」
リーンが兵器について詳しく解らない為に簡単に思い付きを言う。
「ええ、私もそう思ったので調べてみましたが・・・その兵器の欠点がそれでした」
「欠点?」
ミハルが訊き返すと頷いたアンネが、
「はい。魔鋼力は蓄積が不能なのです。
開発元のデータでは・・・
レベル1の者が数十名集まって力を合わせても威力はレベル1の力しか発揮出来ませんし、
レベル3の者が力を合わせても同じ結果でした。
況してやそれを溜めたとしても同じ事でしょう。
強力な威力を求めるのなら、より強い・・・高い魔鋼力を持つ者が必要と言う訳です」
ちらちらミハルを見て答えた。
「それでレベル4のミハルが必要なのね」
リーンが結論を述べる。
「だと・・・思います」
歯切れの悪い返答をするアンネに。
「まだ他に理由が?意味があると言うの?」
リーンが再び訊くと。
「はい。どうやらミハル軍曹を・・・と言うか、
<双璧の魔女>を邪魔者扱いしている節が参謀長にあると。そう思えて仕方が無いのです」
アンネは顔を上げてリーンに答えた。
「今度は私じゃなくミハルを・・・ヘスラーの奴、今度は何を企んでいるのかしら?」
リーンが思わず呟いてからミハルを見て、
「大丈夫よミハル。そんな兵器の部品になんてさせないから!」
断言する。
「うん、私もそんな訳解らない物の一部になんて成りたくないもの」
リーンの誓いに頷いたミハルが再びアンネに訊く。
「アンネさん、その兵器はもう実験を終えているの?どんな威力があるというの?」
問い掛けたミハルがアンネの顔色が変った事に気付く。
「ミハル軍曹。
実際にその兵器が使われれば・・・多分街一つがたった一発の弾で消え失せてしまうでしょう。
レベル4のあなたが部品と化せばですけど」
暗い顔で答えたアンネは最後に付け加えた。
「あなたの魔鋼力・・・いえ、命を代償とすれば。
あの兵器の一部と化す本当の意味は、あの中へ閉じ込められて魔鋼力を吸い尽くされる。
・・・砲弾の火薬と同じ様に爆発源となる。
だからレベルが高ければ高い程威力は増すのです」
街一つをたった一発の兵器が消す。
その威力は部品と化した者の能力と命を奪う。
教えたアンネがミハルを見て、
「軍曹の力、つまり<双璧の魔女>の能力を使えば、
街一つと言わずこの戦争の決定打ともなり得ます。
それが中央軍司令部、いえ参謀長が求めた答えだと判りました」
ミコトの力を思い知ったアンネの瞳が、ミハルの中に居る者に告げる。
「私・・・いえミコトさんの力を兵器に転用する訳ね」
ミハルはその兵器に恐怖さえ覚えた。
「絶対・・・そんな事絶対させるものですか。
誰が命じたって拒否する。
いいわねミハル、誰が命じても拒否するのよ。
譬え戦争に負けてもそんな悪魔の兵器になんてなってはいけないのよ!」
リーンがミハルの手を握って誓わせる。
「うん、リーン。誓うから、絶対悪魔に魂を渡したりしない。そんな兵器になったりしないから」
リーンの求めに答えたミハルが微笑んだ。
「そう願います。
ミハル軍曹がリーン皇女を護って下さるのなら、私は安心して退き下れます。
聖教会にもそう報告出来ますから」
アンネが小隊から聖教会組織に帰り、手出ししない事を約束する。
「リーン皇女、ミハル軍曹。
私は組織に戻り2度とお2人に<双璧の魔女>に手を出さない様に求めたいと思います。
いえ、逆にお2人の邪魔にならない様にお守りする事を進言するつもりです」
アンネの約束に頷いたミハルが。
「そうですね。そうして頂いたら助かります」
アンネの心使いに感謝の意を表す。
「ちょっと待ってよミハル。それじゃあザルバ君を殺した罪はどうなるの?」
リーンが事件の収拾をどう図るか問う。
「うん、それはね。
元々リインさんとリーンがザルバ君の魂を救うのを手助けしたんだし、
ザルバ君もアンネさんを恨んだりしていないと思うんだ。
だからアンネさんの罪を許してあげようよ?」
ミハルがそう言うと、アンネが驚いた様に見詰める。
「そっか。ミハルもそう思っていたんだ。
私もリインさんも同じ意見だよ。でもね、皆にはどう言えば解ってもらえるかな?」
リーンが搭乗員仲間だけが知っている事件の結末を考える。
「リーン、それはね。本当の事を話せばいいんだよ。
闇に捕われていたザルバ君をアンネさんが救ったって言えばあの3人は判ってくれるよ。
後はアンネさんがこの小隊から組織へ帰れる様に取り計らえばいいんだよ」
指を立ててリーンに教えるミハルを見てアンネが首を傾げる。
「それで納得して頂けるのでしょうか?」
2人を交互に見る。
「ふふふっアンネ。ミハルの言う通りにしましょう。
だってあの3人は仲間なんだもの。大切な友なんだから。きっと解ってくれるわ、きっとね」
リーンが自身有り気に答える。
「でも整備班の方は?班長は納得して私を還してくれるでしょうか?」
マクドナード曹長が自分をつけていたのを思い出してアンネが訊ねて来た。
「あっ!そうだアンネさんっ。
マクドナード曹長を知らない?何処へ行ったか解らないんだけど?」
ミハルが大切な事を思い出した様に訊ね返した。