魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act23決闘の刻
リインを護ると言い張るアンネ。
ミコトとの仲を邪魔されたくないリインは2人に闘う事を提案する。
アンネは過信する自分の能力で勝てると思い上っていた。
突然決闘を勧められたミコトはリインの心を解っていた。
それは・・・
二人の間には蟠りが存在しているようだった。
「しかし、私は聖教会の命を受けてリーン皇女をお護りせねばなりません。
そこの聖巫女などより遥かに強い力を授かったのですから!」
アンネはミコトを見上げて自分こそが守護者に相応しいと告げる。
アンネの思いあがった一言にリインがため息を吐き、
「言ったな下郎。確かにミコトは完全に力を取り戻してはいない。
だが、その思い上った者よりは何倍も強い力を有している。
解らせてやろう、お前には程遠いその力をな!」
リインはそう言うとミコトに向って、
「と、言う訳でミコト。この娘と勝負してやってくれない?手加減抜きで・・・」
勝手に闘いを決めてしまった。
「おいおいリイン。勝手に決めるなよ」
ミコトが呆れて止めらが。
「いいじゃないの、あんな事言われたら<双璧の魔女>の名折れよ。
ちょっと痛い目に遇わせてお灸を据えてやってよ」
ポンと肩に手を置いてリインが笑った。
「あのなー。例え術師と言っても相手は普通の人間なんだぞ。邪な者ならイザ知らず・・・」
頭を掻いてミコトが困ってしまう。
「そんなに私が手強いと思うのなら辞めておいたらいいでしょう。
そしてリーン皇女の身はこれから私が一人でお守りしますから。
シマダ軍曹は秘密兵器の部品にでもなればいいんじゃないですか?」
アンネがミコトを罵る。
((ピクッ))
ミコトの眉が跳ね上がる。
「今、何と言った?」
ミコトが訊く。
「は。辞めておけって・・・」
アンネが答えると、
「違う。秘密兵器がなんたらと?」
ミコトが訊き返す。
「確かに言ったわね。ミコトの継承者を部品にでもなってしまえばって!」
リインも耳ざとくアンネに問い詰める。
「ええ言いましたとも。私が探索していた件ですからね。
軍が手に入れた強力な兵器に必要な部品。それが・・・」
アンネが言い澱んで口を歪める。
「それが私の継承者ミハルだと言うのか?知っている事を全て話せ!」
ミコトがアンネを睨みつける。
「ふん。話して欲しければ私に勝ってから言いなさい、不完全な巫女。
今のあなたの力では私に勝つ事は出来ないわ!」
そのミコトの瞳を睨み返して、アンネが立ち上がる。
「ならば言わせてみせる。リイン、勝負の方法は?」
ミコトが闘う事を決めてリインに告げる。
「そうね。殺し合いは駄目よ。
それじゃあこうしよう。
アンネはミコトの額にある紋章に触れれば勝ち、ミコトはアンネの減らず口に触れれば勝ち。
双方飛び道具は無し。どう?これで良いかしら」
リインが2人に向って決着のつけ方を教える。
「解った。それで良い。ここでするか?」
周りに障害物が無い事を見回してミコトがアンネに訊く。
「私はどこでもいいですよ。さあ、始めましょうか」
アンネが余裕を見せて笑う。
「その笑いが続けられると良いわねアンネ。
<双璧の魔女>と対峙出来るだけでも光栄だったと思わせて貰いなさい」
リインが2人から離れつつ聖剣を天に翳して、
「では、2人供。始めっ!」
外界へ力が流れ出るのを封じた。
「くっくっくっ。巫女っ行くぞっ!」
アンネが自らの姿を消すと同時に気配までも消失せせる。
「ほう、空間を歪めたか。少しは出来るようだな」
姿を消したアンネを見てミコトが呟く。
<ミコトさん。大丈夫なんですか?
私リーンと離れるなんて絶対嫌ですからねっ、絶対負けないでくださいよ!>
身体の中でミハルが叫ぶ。
「継承者よ。どうしてリインが勝負させたと思う?どうしてアンネに闘わせたと思う?」
<えっ?そ・・・それは>
ミハルが答えに困って口篭もると。
「リインは・・・いやリーンはお前と一緒に居る事を望んだんだ。
アンネに邪魔されず2人で居る事を・・・な」
<リーンが?そっか、リーンがリインさんに頼んだのか。
アンネさんに護られるより私と共に居る事を!>
「どうだ解っただろ。それがリインの願いでもあり、私の願いでもある」
<はい、ミコトさん!>
ミハルが心の奥からリーンの願いに感謝する。
「継承者よ、善く見ておけ。
これが私の力、不完全だとしても聖巫女の力は悪鬼にも劣らないと言う事をな!」
ミコトが右手の宝珠を額に翳す。
宝珠が輝き、ミコトの額に紋章が現れる。
「何をしても無駄よ。私の空間湾曲は破れない。あなたの負けよ巫女!」
捻じ曲げた空間の中からアンネが勝ち誇って叫び、その手をミコトに近付ける。
「無駄かどうか、その身体で思い知るが良い。ちょっと痛いぞ!」
ミコトの額の紋章が聖巫女の力を発動する。
((ビシャッ))
碧き輝きが右手の宝珠と額の紋章から溢れ、辺りを照らす。
「なっ!?」
捻じ曲げられた空間の中へもその輝きが入り込んで、アンネの姿を照らし出す。
「アンネ!術に溺れし者よ!我が名はミコト。
聖帝の巫女にして戦巫女。闇を討つ者なり!」
ミコトの呪法が解き放たれる。
右手の宝珠を天へ指し、巨大な魔法陣を造る。
その碧き魔法陣に呼応して足元にも魔法陣が描かれ。
「アンネ!汝の力を封じる。禁術招魂!」
ミコトの右手がアンネに振り下ろされる。
天空の魔法陣がアンネに降り堕ち、身体を包み込む。
「うそっ!馬鹿なっ!?」
碧き魔法陣がアンネを包み込むと急に身動きを封じられて・・・
「ぎっ!?ぎゃあああぁっ!?」
蒼く光るスパークに強烈な電撃を受けて叫んでしまった。
「あーあ。ミコトも無慈悲だなー。盛り上がりも無く・・・一撃なんだもん」
リインが面白くなさそうに呟く。
「どう?少しは反省した?」
もがき苦しむアンネに訊く。
「がっ!あぎゃああっ!ひぎいぃっ!」
のたうち回るアンネは既に空間を曲げる力も残っていなさそうだった。
((すっ))
ミコトがアンネの口に手を当てて笑いかける。
「勝負あったな、アンネ」
そう言うと呪を解除してやった。
「ぜひー。ぜひー。ひいいぃっ!!」
あまりの力の差に、愕然とミコトを見上げるその瞳は、恐怖に涙目になっていた。
その顔を見てからミコトはリインに、
「大人げなかったかな、リイン?」
頬を掻いて笑って言った。
「あはは、悪魔にも対抗出来る戦巫女の力に、普通の人間が勝てる訳ないもの」
そう答えたリインも笑って、
「どう、アンネ。不完全な巫女の力、凄いでしょう?」
アンネに訊くと。
「はひいぃ。ごっごめんなしゃいぃっ。私が悪かったでしゅうっ!」
涙を流して身体中に走る痛みに耐えかねて謝ったアンネ。
「すまんなアンネ。大人げなかった事を謝るよ」
ミコトが手を指し伸ばしてアンネを起こそうとすると、その手に怯えて。
「ひいいっ、もう許してぇっ!」
仰け反って許しを請う。
「あ、これ。トラウマになっちゃったんじゃない?」
半ば呆れて、リインが笑う。
<ミコトさん・・・やり過ぎですよ>
ミハルもアンネが可哀想に思えて注意する。
「う、うむ。私もそう思っていた所だ・・・」
困った様にミコトは苦笑いを浮かべた。
ミコトの一撃であっと言う間に倒されたアンネは、その力の前に恐怖すら覚えていた。
そしてミハルに纏わる兵器の事を話し出した。
その真実とは?!
次回 兵器の影
君は悪魔の兵器になる事を拒む。生き続ける事を望む。