魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act22姿を見せぬ者
2人が連れ立って見張台に向うと何者かの気配が・・・
見張り台へと昇った二人が・・・
「どう思うミハル。犯人はやはりあの娘なのかしら?」
リーンに訊かれたミハルが、
「それ以外の者がザルバ君を撃つなんて、考えにくいですね。
もし、撃った者が居たとしても。
それはリーンを護ろうとしたからで逃げる必要なんてないからね」
そう答えてから。
「それでリーン。
キャミーさんは何故目眩を感じて意識を失ったのかな。
どうしてそのタイミングで起こったと思う?」
リーンに聞いた話に注目する。
「キャミーの意識を何者かが奪ったとでも言うのミハル?」
「うん、そうだとしか思えない。そんな術を使えるのかもしれない。
想像以上に手強いのかも・・・」
ミハルはそう言うと、右手の宝珠に訊く。
「どう思いますか、ミコトさん?」
宝珠の魔女に訊ねてみると。
<それは考えられる事だ。
あの娘はミハルの前から忽然と姿を消す様な真似をしてのけた。
あながち在り得るかもしれんからな>
ミコトが注意を呼びかける。
「リインさんはどうです?何か感じませんか」
リーンがネックレスの聖王女に意見を求める。
<私の感が正しければあの娘も何らかの能力を有している。
その能力が如何なる物なのかは解らないけど・・・な>
リインがミコトの言葉を認めた。
「そうですか、やはりあのハンネも能力を授かった者だと思うのですね?」
ミハルが邪な者の一員だと思って訊く。
<そうだとばかりは言えんぞミハル。
元々の魔法使いと言う事も有り得るからな、だが油断は禁物だぞ?>
ミコトが邪な者と断定するミハルに注意を促した。
「そうなんだ。判りました、心に留めておきます」
ミハルは右手の宝珠に頷いてから。
「リーン、この後どうするの?」
リーンにハンネの処遇を訊く。
「とにかく二人を探そう!」
リーンが違った答えを返す。
「見つけた後、ハンネさんをどうするの?」
もう一度聞き直す。
「もし、ハンネが犯人なら殺人の罪で捕えなくてはならない。
どんな理由があろうとも・・・それが例え私に銃を向けた者に対しての行為だとしても」
リーンはザルバの最期を思い出して言った。
リーンの瞳を伺っていたミハルは、その強い瞳の色に迷いがない事を感じ取り。
「うん、判った。リーンがそう思うなら、そう考えるのなら私は反対しない」
頷いたミハルにリーンから訊ね返して来る。
「ミハル。ハンネが仮に犯人だとして、どうしてザルバ君を殺したと思う?
何故私じゃなくザルバ君を狙ったと思う?」
リーンがミハルに問い掛ける。
「うーん。リーンを狙っていないのなら隠れて撃つ必要なんてないのに。
一体何の為にこの小隊へ来たんだろう。誰の命令を受けて来たんだろう?」
ミハルもハンネの狙いが全く判らず首を傾げて考える。
「あのねミハル。ザルバ君が撃たれた時、私に銃を向けたんだ。
指をトリガーに掛けた瞬間に撃たれたんだ。
彼は撃つ気なんて無かったと思う。
何故なら撃とうと思えばあんなに構えなくても撃てた筈だから。
目の前に居るのに構える必要なんてないんだから・・・」
リーンが思い出しながら、あの状況を教える。
<ふむふむ。リインを撃つ気が無い者を殺した。
それは何故か・・・そのザルバとか言う少年は邪な呪いを受けていたのかい?>
宝珠の中でミコトが訊ねてくる。
「あっ、ミコトさん。また突然乗っ取る気なんですか?」
ミハルが右手の宝珠に文句を言うと。
<ちょっと換われ、継承者>
否応無しにミコトがミハルの身体を使う。
ー ひいぃん。まただあ・・・Orz
身体を乗っ取られたミハルが涙目で文句を叫ぶ。
「リイン。その少年は邪な者に操られていたんだな。銃を向けて来た時も操られていたのかい?」
ミコトがリインに説明を求める。
「ううん、あの時は私の聖剣の力で浄化が済んでいたわ。
彼は死を選んで私に求めていたの。死ぬ事で魂の救済を求めていたの」
リーンもリインに身体を乗っ取られてしまった様だ。
ー ・・・ミハルぅ、私達ってホント、魔女達の人形だねえ。しくしくOrz
リーンが、ミハルと同じく気持ちで嘆く。
「こらこら、2人供。それが継承者の務めなんだから嘆かないの」
乗っ取った体の中に居る2人にリインが嗜める。
「ミコト、私さっきから何かの力を感じるんだけど・・・どう?解らない?」
リインが周りを見回して聖巫女に訊く。
「ふむ。ちょっと待ってて」
ミコトが額に手を当てて力を込める。
((パアアッ))
ミコトの手を当てた額から碧き光が溢れ出し、聖巫女の紋章が現れる。
「うーん。
どうやらリインの感じた力って言うのは、私達と同様な古来からの魔法力を指しているようだな」
ミコトは額から手を離して紋章を消すと。
「リイン。私の知らない者がリインを護っているみたいだが・・・あれは何者なんだ?」
ミハルの姿のミコトが振り返って通路の奥を見る。
ミコトが見るその通路には誰の姿も無い。
「え?ミコト・・・誰か居るの?」
聖王女リインの瞳にもその者の姿は写らないみたいで訊いてくる。
「そうか、リインにも見えないのか。ならば継承者達にも見えない訳だ」
ミコトが見詰める通路奥に潜む者に対して、
「出てきなさい、隠れていないで!」
リインが声を掛ける。
ー そう、見張台で会った時も急に姿が見えなくなった。
ハンネさんはきっと特殊な能力を持っているに違いない!
以前ミハルに警告して来たハンネを思い出しミコトに訊く。
ー ミコトさんにはハンネさんの姿が見えるのですか?
「いや、姿は見せていないがその力の在処は解る。その力が強ければ強い程な」
右手の宝珠を翳したミコトが声に出す。
リインに呼ばれた姿を見せない者が語り掛けた。
「あなたは今、聖王女の力を授かっているのですね、リーン皇女」
姿を見せない声の主はハンネに間違いなかった。
「ハンネ・パルミール。あなたなのね、姿を見せなさい!」
質問に答えずリインが呼ぶ。
「もう一度訊きます、リーン皇女。あなたは今、伝説の聖王女の力を授かったのですか?」
ハンネの声が問い質す。
リインがその問い掛けに笑う。
「ふっ、ふふふっ」
リインが笑った事でハンネの声が苛立ち、
「どうなのですか、リーン皇女!」
ハンネの声がやや大きくなった。
「私・・・か。私の事を訊くのならば先に姿を現したらどうだ、ハンネとやら」
リインが聖剣を持ち直して突き出す。
「我が聖剣の前に姿を現さぬと言うなら、この聖王女リインの名において貴様を引きずり出すまで!」
リインの手にした聖剣が碧き光を放つ。
「その輝き、正しく聖剣。疑いなき聖なる光!」
ハンネの声が震える。
「出て来た様だな・・・」
ミコトが視線を定めて頷いた。
そこに現れた者は・・・
姿を現した者。
能力に絶対の自信を持つその者は、今回の事件の真相を告げた・・・
次回 術師 アンネ
君は能力を過信する事なかれ、自らの力に溺れる事なかれ・・・