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魔鋼騎戦記フェアリア  作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記フェアリア第1章魔鋼騎士Ep3訓練!あの戦車を撃て!Act11紅白戦前編

挿絵(By みてみん)


バスクッチが旅立つ前に最後の訓練が始められる。

リーン少尉は紅白戦を企画していた。


曹長が転属になる日を明日に控えて。


2日間の訓練もほぼ予定通り進み、

なんとか実戦で戦えられる自信の様なものが各員に芽生え始めて、

リーン少尉以下最後の訓練を始めようとしていた。


「本日で訓練を終了し、本隊は第1戦車師団の指揮下に入ります。

 各員心残りが無い様、最後の調整をお願いします」


リーン少尉の訓示が終わり、各員が乗り込む。


最後の訓練には、リーン少尉が車長として乗り込む事となった。


曹長は全体訓練の確認の為、

訓練用の儀礼砲を荷台に据付けたトラックに乗り込んでいる。



「これより訓練試合を始める。

 オレの乗ったトラックを赤組、小隊長の乗ったMMT-3を白組とする。

 模擬戦だが、時間内に何回命中させて、より多く撃破判定を取った方が勝ちだ。

 勝った組が今晩負けた組を好きに出来る。

 罰ゲーム付だぞ?

 はははっ、やる気が起きただろ?!」


曹長が、またとんでもない事を言い出した。


「バスクッチ曹長!

 私はそんな事許してませんよ。何をふざけた事を言っているのですか!」


早速リーン少尉が注意するが、


「はははっ、勝負ですから。

 やはり負けた組には何かやってもらわないと。

 それともトラックに負けると思っておられるのですか?」


曹長が、リーン少尉を煽る。


「くっ!誰が負けるとでも?

 良いでしょう!今晩曹長には私達の給仕係をして頂きますから!」


「はははっ、私達も少尉達にメイド係になって頂く事にしましょう!」


曹長は笑いながら手を振った。 


MMT-3とトラックは、南と北に分かれて走り出す。


「絶対勝ちましょう。みんなっ!」


リーン少尉はマイクロフォンを通じて、ミハル達に命じた。


「はははっ、負ける訳無いでしょう。

 此方の方が優速だから、好きな位置で攻撃出来ますからね!」


ラミルが少尉にVサインを出して答える。


「ラミル、操縦を頼んだわよ!」


リーン少尉が先任搭乗員のラミルを信頼して言った。


ー  でも、相手は曹長だ。

   そんな都合良く動いてくれるだろうか。

   もしかすると手玉に捕られかねない・・・


ミハルは真剣に考える。


「車長、相手はあの曹長です。

 そんな簡単に勝ちを譲ってくれるとは思えませんので注意して下さい」


ミハルは心配になって注意を促した。


「そ、そうね。あのバスクッチがそうそう簡単に勝ちを譲る訳ないものね」


リーン少尉も顎に手を当てて考える。


「車長!開始時間まで後1分!」


キャミーが時間を知らせる。


「よし、皆。気を引き締めて掛かるわよ。

 ミリア、模擬弾は何発あるの?」


「はい、10発です」


即座にミリアが少尉に答える。


「うん。ミハル、模擬弾の有効射程は?」


「500メートルです。それ以上の距離では、中のペンキが抜け出して着色不能です」


「オッケ。接近戦も覚悟しなきゃね」


リーン少尉はなるべく射程ぎりぎりで、戦闘しようと考えているみたいだった。


「ミハル、模擬弾は射程も初速も遅いから注意してね」


「了ー解!」


ミハルは学校以来の模擬弾に感覚を併せようと考えて、


「より多く命中させる為には、接近戦も必要だと思われますが?」


「うん、必要になったらね」


リーン少尉はミハルの進言を軽く受け止めてしまった。



「時間です!」


キャミーが開始を告げる。


「みんな、行くわよ。戦車前パンツァーフォーへ!」


リーン車長の号令で、MMT-3が前進を開始した。


ー  さて、先に見つけられるかな?


ミハルはリーン少尉が曹長より先に発見できる事を期待していたのだが。


「左舷前方10時の方向!窪地にトラック!」


リーン少尉の悲鳴に似た叫びで慌てて砲塔をその方向へ廻すが。


((ベショッ))


「わあぁっ!」


キューポラのリーン少尉が、慌てて身体を車内に隠すが、


「ううーっ、やられたぁっ!」


その声で車長席を振り仰ぐと、帽子を赤いペンキで染められてしかめっ面の少尉が居た。


「うぷぷっ!」


思わず噴出してしまうミハルに、


「キューポラに撃ち込まれちゃった。うう、車長戦死ね」


苦笑いしてリーン少尉が、


「キューポラのレンズは、ペンキで使えなくなったわ。

 ミハル、砲側率距で撃って頂戴っ!」


「はい、照準器で撃ちます。ミリア、訓練弾装填!」


ミハルはミリアに白いペンキが入った訓練弾を装填させる。


「装填良し!」


実弾頭よりずっと軽い訓練弾を早々に装填してミリアが報告する。


「よしラミル、トラックは荷台だけを見せています。

 窪地が見渡せる位置まで弾を避けつつ、移動して下さい!」


リーン少尉がペンキで赤く染まった帽子を脱いで命令を下す。


「了解。右舷の窪地に廻り込みます」


ラミルは車体を射線にさらけ出さない様に窪地を目指す。


ー  曹長の事だ、私達が窪地に廻り込むのは解っている筈。

   きっと、また先回りして車体を隠して狙ってくるだろうな・・・


ミハルは曹長の考えをよんで、


「車長、トラックが同じ場所に居るとは限りません。

 トラックが見えるぎりぎりの所を進んだ方が良いと思いますが?」


ミハルはリーン少尉が不意を撃とうとしている事に注意して、自分の考えを具申した。


「えっ?それじゃあ曹長にも私達が回り込むことが知られてしまうじゃない」


「はい。でも機動戦に持ち込んだとしても車体の安定性では此方が上です。

 逆に待ち伏せされる方がこちらが不利ですから」


「うーん、そうかな。

 ・・・よし、今回は不意打ちをしてみるけど・・・

 結果ミハルの言う通りなら、機動戦に持ち込もう。訓練だから・・・今はね」


「はあ、車長がそう思われるなら、私はかまいません」


ミハルは車長の経験を積ませる為、強くは言えず成り行きに任せた。


窪地へ廻り込む様にラミルが操縦するMMT-3を訓練砲で狙いをつけて、


「まだまだ少尉は勉強して頂かないとな」


雑草が生い茂るもう一つ後の窪地で、曹長が小隊長であるリーンに対して思った。



距離は100メートルもない至近距離。


ー  ミハルは止めなかったのか。

   オレが移動しないとでも思っていたのだろうか?


バスクッチ曹長はMMT-3の車体に狙いを付けながら、

実戦経験の有るミハルが付いていながら、何故警戒しなかったのか考えあぐねた。


「まずは、一発当てさせて貰ってからだな」


狙いを車体後部側面に合せてトリガーを引こうとした時、

カモフラージュしてあるこちらに砲塔が旋回してくるのが見えた。


「ほう!カモフラージュしてあるから見つけにくい筈だが。気付いたか!」


曹長はかまわずトリガーを引き絞った。


「危ないっ!急停止して下さい。ラミルさん!」


ミハルは窪地にトラックが居ない事に気付いて、

窪地の後方に草が生い茂っていて見通しが利かない地点を見詰ていると、其処に黒い砲身が見えて叫ぶ。

ラミルがレバーを引きクラッチを切ると同時に草原から訓練弾が飛んできて、

そのまま進んでいたら命中したであろう2メートル程前を通過した。


ー  危ない、後1秒止まるのが遅れたら命中していた。さすが曹長、狙いは正確ね


ミハルは砲を今撃って来た所へ向けて、


「トラックらしき標的、左舷9時の方向。距離100メートル!」


リーン少尉に報告する。


ー  さすが曹長。

   それにミハル・・・もし戦場だったら命中していたかもしれない。

   教訓になったわ。

   ミハルの言う通り、もし本当なら敵を見失ってはいけない。

   それは自分達が戦闘の主導権を相手に渡すような物なのね・・・


リーン少尉は己からの失敗からまた一つ学んだ。


「少尉!リーン少尉。トラックが見えました。移動を開始したようです」


ラミルがギアを入れなおしてアクセルを踏む。


「了解。

 ミハルが言っていた通り、機動戦で挑戦します。

 ミハル、ミリア、用意は良い?」


リーン少尉は機動戦を決意した。


「はい。照準良し。いつでも撃てます!」


ミハルは照準器を睨んで返答する。


「よーし。

 ラミル、トラックは横と後は撃てるけど、前方は運転席が邪魔で撃ちにくい筈。

 一気にトラックの前方まで出て下さい」


リーン少尉の命令でラミルはギアをトップに上げて全速でトラックの前方まで出ようとする。


曹長はリーン少尉が機動戦を仕掛けてくる事は解っていた。

荒地ではトラックの方が揺れが酷い。

重量の有る戦車とまともに撃ち合って勝てる訳が無い事は重々承知していた。


「あえて走るだけでなく、チャンスを捉えて停車して狙撃する。これが命中率を上げるコツだ!」


曹長の考えがミハルには手に取るように解る。


ー  こちらに死角を向けない様に運動する筈。

   そして必ず停車して必中の弾を撃って来る。

   そのタイミングを逃さず先手を取れるかが勝敗を決めるんだ!


ミハルは砲を旋回させつつ、そのタイミングを測った。



ミハルは曹長との機動戦に挑む。

そして、その結果は・・・。

次回Act12紅白戦 後編

君は誰と共に闘える?

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