魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act13揺れる心
リーンがザルバとハンネに警戒心を深める中、
ミハルはザルバに本当の事を訊こうとした。
だが、ミハルを止める者が・・・
蒼い瞳は確かに観ていた。
ー あの顔、瞳。明らかに邪な気を持つ者だ。
あの子もハンネも・・・2人供妖しい者に違いないわね・・・
眉を顰めたリーンが考える。
ー これからは2人に注意しなければいけないわね・・・
リーンはザルバとハンネを交互に見て思った。
「小隊長、整列し終わりました」
マクドナードがリーンに告げる。
「よし、良いですか。今後は各員の受け持ち以外の場所も眼を通して下さい。
二度と今回の様な不手際をしない様に務めて。いいわね!」
リーンは整備員全員に注意を促す。
「はいっ!」
整備員が返答すると。
「では、解散。整備班長は私と共に来てください」
リーンが別れを命じる。
「敬礼っ!」
ミハルがリーンに敬礼を号令する。
全員の敬礼に答礼したリーンが、マクドナードと共に指揮官室へと向った。
ミハルはザルバに本当の事を訊こうと歩み始めると。
「搭乗員班長、すみません。手加減して頂いて」
叩かれた整備員が2人、ミハルに謝りに来た。
「あ、ごめんね。痛かったでしょ?」
2人に叩いた事を謝るミハルの眼に、ザルバが一人整備場から出て行く姿が写る。
そのザルバを追う様に、ハンネが同じく整備場から離れて行った。
ー あの2人・・・もしかしたら2人は仲間なのかもしれない・・・
「あ。私、ちょっと用事があるの。ごめんね!」
2人の整備員に断りを入れてザルバとハンネを追おうとすると、ミハルの手を掴んで止める者が。
「待てよ、ミハル!」
掴まれた手の主は。
「キャミーさん、何?私、ちょっと・・・」
キャミーの手を振り解いてザルバ達を追おうとするミハルにキャミーがいきなりに。
「話しがある、来いっ!」
キャミーが強引にミハルの手を握り返して引っ張る。
「えっ?でも・・・」
ミハルが、ザルバ達二人が消えていくのを目で追って拒んでも。
「いいからっ、来るんだ!」
キャミーが、拒むミハルをMMT-6の陰に連れ込む。
「キャミーさん、何の用なの。私は2人を見張らなくてはならないの」
直ぐにでも2人を追おうと気も虚ろなミハルに対して。
「ミハル、お前あたしとの約束を破っただろ。訓練中に考えたんだろ、あの子達の事を!」
ー あっ・・・
キャミーに言われてミハルがはっとなる。
「あれ程言ったのに・・・だから中尉も怒ったんだぞ。
普段のミハルなら、もっと注意を払っていた筈なのに二度も同じ様な間違いを犯すなんて!」
キャミーはミハルに怒ってはいなかった。
只、約束を守ってくれなかったミハルに悲しげな瞳を向けて来ているだけだった。
「あ・・・その・・・」
口篭もるミハルに、心配顔になったキャミ―が言う。
「なあ、ミハル。
これ以上続けて失敗を繰り返すのならしまいには中尉の心はお前から離れてしまう。
そうなったら、お前はどうするんだ?」
キャミーが心から心配してそう言ってくれているというのに、
「そ、そんな事・・・ない。リーンは解ってくれる」
キャミーの言葉に反論するミハルに、
「それはどうかなミハル。
少なくとも一時的には遠ざけられるかも知れないぞ。
そんな事になったら嫌だろ。悪い事は言わないから、あの2人に関わるな」
ミハルの手を強く握って止めるキャミー。
「解ってないのはキャミーの方よ。
あの2人はきっと何かを隠している。
それを掴んでリーンに知らせるのが私の役目なの。放してっ!」
叫ぶ様に言って、強引に手を振り解いたミハルに、キャミーは悲しそうな顔を見せる。
「そうか。なら・・・好きにすると善い」
キャミーはミハルに顔を背けてそう言った。
ー あ・・・。言い過ぎちゃった!
キャミーの顔色が変ったのを見て、ミハルの心が痛む。
「わ、私。2人を追うから!」
居た堪れなくなったミハルがきびつを返して、ザルバとハンネの後を追う為走り出す。
整備場から出る時、一瞬だけキャミーの姿を見たミハル。
その瞳には何かを想って俯く悲しげなキャミーの横顔が、
揺れる想いと心を表している様に見えた。
キャミーの心もお構い無しに2人を追うミハル。
その2人が向合う。
お互いの力を隠したままで。
次回 2人の能力者
君は異能の者に挑もうとするのか・・・