魔鋼騎戦記フェアリア第3章双璧の魔女Ep1闇の魔鋼騎Act4次期作戦の目標は?
双璧の魔女達に身体を乗っ取られたミハルとリーンが、戸惑って困ってしまう。
悪びれもせず笑うミコトにため息を吐くしかなかった。
リーンは整備班へ増員された事に付いてミハルに意見を求める。
自分達の声が誰かに乗っ取られた事に驚いた。
「あ、あのっ、リインさんっ。行き成り乗っ取らないでください。ビックリするからっ!」
リーンが胸のネックレスに文句を言う。
「ミコトさんも!混乱してしまいますからっ!」
ミハルも右手の宝珠に文句を言う。
リーンもミハルもお互い自分達が身に着けている魔法玉に文句を付け合ってから、
「もう。まるで二重人格者みたいだよね、ミハルゥ」
リーンが困った様にミハルに零す。
「仕方ないけど・・・せめて身体を乗っ取る時は一言声を掛けてからにして欲しいよねぇ」
ハァとため息を吐いて、ミハルも苦笑いしてしまう。
<すまんな、継承者よ。注意する事にする>
宝珠の中でミコトが悪びれもせず、笑って言った。
「本当にもう・・・。頼みますよミコトさん」
右手に填めた宝珠にため息混ざりで頼んで、顔を上げた。
「それはそうと、リーン。整備班に増員してくれるなんて・・・そんな話を聞いていたの?」
ミハルがリーンに顔を向けて訊くと、
「いいえ。何も知らされてはいないわ。
技術本部からってマクドナードが言っていたけど、ユーリ姉様からも知らされてなかったから・・・」
リーンが小首を傾げて答えた。
「ふーん。どう言う風の吹き回しなんだろ。
今迄増員された事なんて無かったのに。これからもっと激しい闘いを強要されるのかな?」
ミハルが不安がって表情を曇らせた。
「それは解らないわ。
でも・・・もう継承権争いで、私を狙ってくる事は無いと思う。
純粋に戦闘に備えて増員してくれたと思いたいわよね、ミハル」
リーンも一抹の不安は有るにせよ、技本からの増員と言う事もあって納得している様だった。
「うん、そうだよね、そう思う事にする。・・・それで、私達の次なる目標は?」
次期作戦目標をリーンに訊くミハルに、茶色い封筒を開けて中の用紙を取り出すと。
「ミハル。次はね・・・ここだよ!」
用紙を拡げて手渡した。
手渡された用紙に書かれてある地名を見て、ミハルが顔色を変えた。
「タウロニンゲル・・・そんな。そんな所を攻めるの?」
タウロニンゲル・・・そこはフェアリアとロッソアとの国境に程近い街。
昔はれっきとした小国だったのが、度重なる両国の戦場となり独立を維持出来なくなってしまった。
そして今次戦争の前まではフェアリアの領土として位置していた因縁の地でもあった。
「そう、タウロニンゲル。そこを奪還出来れば戦争前の領土を回復出来る。
そこまで押し戻せれば停戦交渉を進めやすく出来ると考えたんでしょうね、軍のお偉い方は・・・」
リーンが難しい顔をしてミハルに教えた。
「でも・・・エレニアから200キロも北東にある街を攻めるなんて。
途中の街もまだロッソアの占領下だっていうのに・・・」
ミハルが地図を見て瞳を曇らせる。
「軍の参謀が考える事よ。
実際に戦場へ出た事もない人が、机の上で考えただけの作戦立案。
確かにこの作戦が成功すればロッソアとの終戦交渉に進展があるかもしれない・・・けど」
リーンが口澱んでしまう。
「解っているでしょ?
この作戦が成功する見込みがない事を。そんな戦力が今のフェアリアに無い事を」
リーンがミハルの瞳に答える。
「そう・・だね。私もそう思っていたんだ」
ミハルもリーンの言葉に同意する。
「では、何故私達でも判る無謀な作戦を軍のお偉いさん方は認めたと思う?」
リーンの瞳がもう一枚の封筒へと向けられる。
「さあ?何か秘策でもあるのかな」
ミハルが判らず、適当に答えるとリーンがその封筒をミハルに渡す。
「ユーリ姉様からの極秘情報・・・読んで」
リーンがその中身を示して読むように勧める。
封筒から出した手紙には、この作戦・・・いや、戦争の趨勢までも変える様な秘密が書かれていた。
ユーリの手紙に書かれてあった極秘情報とは?
その秘密を知らないミハルとリーンは作戦の事に集中する事にした。
次回 極大兵器の影
君は知らない。その強大な力を持つ物の影を・・・